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Posted by 桂樹 on  

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審神者への忠義

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新しい刀が来た・・・と本丸で大騒ぎになった。
その刀は粟田口の一派で、鍛刀によって生まれた際には一期一振が静かに興奮していた・・・という話を、同じ堀川派の堀川国広から聞いた。
その時俺は遠征に出ていたから、その刀とはまだ会っていないけど・・・。
しかしこの本丸の初期刀ならば、一度会わなければならないだろう。
初期刀として、その刀が本当に美和に忠義を尽くせるのか、確かめなければならないと思っているからだ。
いつもそうしてきた。そのせいで、何と無くこの本丸では俺がそういう役目をする刀なのだとみんなが思っている。
もしかしたら、敵方が送り込んで来た刺客・・・。そんな考えでさえ、頭の片隅には存在するのだ。

部屋に入ると、あらかじめ呼び出しておいた白山吉光がきちんと座していた。
傍らには、白い狐がちょこんと座っている。鳴狐のお供に似ていたが、こちらの狐は寡黙であった。
白山の前に座ると、彼が静かに頭を下げる。サイドの長い髪がスルリと流れた。

「この本丸の初期刀、山姥切国広・・・だな。この本丸での活躍ぶり、政府の方で噂は聞いている。」
「何を噂されているのやら・・・」

白山は頭を上げ、涼しい顔をして続けた。

「まぁ、色々と。あの長義の査定に受かった・・・とか。今回、政府から様々な本丸へ顕現する許しをもらい、こうしてこの本丸にも顕現した次第だ。俺が権限できたということは、ここの審神者は相当な力を持っているようだ。」
「まあ、そうだな。実際、この本丸には早くから天下五剣の刀が早い段階で来ている。」

俺たち刀剣男士の本体はもともと政府へと保管されている。その本体を審神者の力でコピーとして作り出し、魂を励起させる。結局のところ、その刀が作り出せるかどうかは、審神者の力と運次第なのだ。

美和様・・・だったか?実力を見るのが楽しみだ。」

アイスブルーの瞳が、少しだけ細められた。人として顕現した彼が、どことなくまだ人でなく冷たい無機物のような感じがして、俺は少しだけ危機感を覚えた。まだ人の形になれてないせいなのかもしれないが・・・と心の底で自分に言い聞かせる。

「ああ。美和は確かに霊力が高く、優秀な審神者だ。お前ががっかりすることもないだろう。そんな美和に、お前は忠義を尽くす覚悟があるのか?」
「・・・この本丸に顕現されたのなら、主に忠義を尽くすのが当然だろう?精一杯、主に尽くし自分の力を振るう覚悟はある。刀剣男士として。それで折れるのなら、俺の本望だ。」

そう語る、彼の瞳を知っていた。この本丸に来たばっかりの俺と同じ瞳だ。主のために戦い折れるのも、刀としての本望だ。
そう思っていた昔の自分と、今の白山が重なる。

「・・・違うぞ白山。刀剣男士なら、主のために戦い、そして生きて戻ってくる。それが美和への忠義だ。」

俺の言葉に、目の前の白山は少し困惑していた。揺るぎなかったアイスブルーの瞳が、少しゆらゆらと動いている。
来たばっかりの彼にはきっとまだ分からない、美和への忠義。いずれ分かることだろう・・・俺はそう思った。




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では主、行ってくる。

Posted by 桂樹 on   0 



修行に出る奴らを、初期刀として何度も見送った。
一体彼らは、どんな思いを抱え修行に出て、戻ってきたのだろう?怖くはないのか?自分の過去と向き合うこと・・・。
美和はそんな彼らを、静かに見送り静かに迎え入れた。
陸奥守、蜂須賀、加州、歌仙・・・。
馴染みの打刀たちが旅に出て、全員が戻ってきた瞬間、彼らの顔つきは違っていた。
過去を受け入れ、未来と今の主である美和を見つめていた目だった。
みんな、俺よりも一歩前に進んでいた。
初期刀だった俺よりも、一歩前に・・・。

強くなりたいと思った。

これまで写しだと卑屈で生きてきた。
山姥切の写しとして生まれてきたことに対して、罪悪感があった。
それをかき消すように、自分は国広の第1の傑作であると、言い聞かせてきた。まじないのように・・・。

これで、いいのか?

心の中に宿るもう一人の自分が、問いかける。
他の奴らは前に進む。強くなるために。美和を信じて。
兄弟である堀川国広だって。きっといずれは、山伏国広だって・・・。

自室の真ん中であぐらをかいて目を閉じていた俺は、静かに目を開けた。
誰にも劣らないくらい、神経が研ぎ澄まされている。今なら・・・。
夕闇が迫る時間帯、俺は美和の部屋へ向かった。

美和。あんたの初期刀として、一つ頼みたいことがある。」

俺を見つめた彼女のその目は、もうすでに俺の願いを見透かしているような目だった。



では主、行ってくる。



そう短く告げて、俺はこの本丸をあとにした。

匂い立つ、好きな香り

Posted by 桂樹 on   0 




「うわぁーん。ぐしょぬれだよ〜・・・」

カラカラカラと本丸の玄関が開き、審神者の美和が入ってくる。万屋に用事があるからということで出かけた彼女だが、帰り際、突然の雨に見舞われたらしい。
美和の帰りを待っていた近侍の国広は、脱衣所からバスタオルを持って来て美和に渡してやる。少々恨み言も付け加えて・・・。

「だから折りたたみ傘でもいいから持って行けと言ったんだ。今の天気は変わりやすい。」
「だって、ちょっとそこまでの距離だし、そんなに時間もかからない用事だったんだもん!」

国広からバスタオルを受け取った美和は、濡れた体を拭いていく。ぽたぽたと髪の毛から雫がこぼれ落ちるのを見て、国広はため息をついてタオルを奪い取った。

「まずは頭からふいていけばいい。そうすれば、余計な雫が落ちなくてすむだろう?」

少しがさつに、国広らしくガシガシと頭をふかれる美和。少し痛いくらいであったが国広の優しさも感じ取り、少しだけクスっと小さく笑った。その瞬間、ぴたっと国広の手が止まる。もしかして今の笑いを聞かれてしまい、へそを曲げてしまったのでは?・・・と美和は心配する。
おそるおそる視線を上げると、国広の顔は怒っていなかった。

「国広、どうしたの?」
「あ、いや・・・」

少しだけどもり、彼はそっぽを向いて早口で言った。なんとなく、顔も赤い。

「あんたの髪から甘い香りが漂ってきて・・・。匂い立つ・・・とは、こういうことを言うんだろうか・・・と。いや、今のは忘れてくれ。俺はもう行く。三日月宗近に呼ばれていたのを思い出した。」

ばさっとバスタオルを頭からかけられて、美和の視界は真っ白な世界に包まれた。

「けど、嫌いな香りではないな。むしろ好きな香りかもしれない。」

そういう小さいつぶやきも聞こえたような気がして、美和は慌てて頭にかけられたバスタオルを取ったが、国広の姿はすでになく、その場にはザーっと雨が屋根をたたく音だけが響いているのだった。



その目、気に入らないな

Posted by 桂樹 on   0 


初期刀である俺と、主である美和が結ばれなかったのは、きっと俺のせいだとずっと前から確信していた。
いつも「写しだから」という俺に、美和は笑って「そんなことないよ」と言ってくれていた。俺はその言葉を無視しつづけた。そのたびに美和は悲しそうな顔をした。俺に対して無条件に開かれた無償の愛を、俺はばっさり切り捨ててしまったのだ。
それに気づいたのは、レア太刀の三日月宗近が来てからだった。

うちの本丸は、そこまで刀剣の数は多くない。太刀だって三日月宗近と一期一振くらいで、あとは打刀が俺と加州、大和守安定、短刀が何振かぐらいしかいない。
そんな中で美和へ急速に接近していったのが、三日月宗近だった。彼はおそらく、人間で言うところの「恋心」とやらを美和に抱いたのだろう。なんだかんだと理由をつけては美和にくっつき、話をし、一緒に散歩へと誘った。
美和もそんな宗近を信用してか、何かと相談するようになっていった。俺への相談が全くなくなったわけじゃない。宗近への相談事のほうがはるかに多い。今度の作戦から、プライベートなことまで。
美和の俺への態度が変わったわけではないけれど、いつもどおり俺へも優しくしてくれるけれど、それは宗近とは全く違うもので・・・。
宗近のそばで笑う彼女の笑顔を見るたびに、どうして俺はあの時、美和のくれた無償の愛を素直に受け取らなかったのかと後悔した。たぶん、三日月宗近はそんな俺の後悔に気づいている。彼の目が語っている。「主はお前には渡さない」と。

ある夜、俺は三日月宗近と話を終えた美和を自室へ誘った。話があるから来て欲しい・・・と。彼女は何の疑いもなく、小さくうなずいて笑った。その顔が、ちくりと俺の胸に突き刺さる。
部屋の明かりをろうそくだけにして、2人とも向かい合って座る。今日は天気も悪く、月のない夜だった。炎に浮かぶ美和の顔が、ぼんやりと魅惑的に俺の目にうつる。

美和、尋ねたいことがある・・・・・。その・・・・三日月宗近のことは好きなのか?」

一瞬美和はとまどった表情を見せ、ゆらゆらと視線を動かす。「あの、その」と意味のない言葉を繰り返した。ため息をつき、「正直に答えてほしい」と言葉を付け足すと、美和はじっと俺の顔を見た。そのままふわりと優しいまなざしをする。

「宗近のことは・・・好きだよ。」

まるで壊れ物を扱うかのような声でその名前を口にする。やわらかな目は、俺でなく宗近を見ている。美和の中に、俺の居場所は、もう存在していなかった。それが、彼女の愛を無視してしまった俺への代償だということぐらい、すぐに分かる。それでもやはり・・・・俺は彼女が急に欲しくなった。
美和を畳に組み敷いて、彼女の腕をそこに縫いとめる。静かに彼女を見つめると、状況を理解した美和は目を細めて小さく声を震わせ、聞きたくもない名前を呼んだ。

「宗近・・・・たすけてっ」

その、怯えたような目つきが気に入らなくて、俺は美和に言い放った。





その目、気に入らないな





美和と俺が結ばれないことぐらい分かっている。そうしたのは俺のせいだ。でも・・・今からその運命を、捻じ曲げてやる。
三日月宗近とは違った優しいキスを、俺は美和に送るのだった。


すがるのなら俺にしろ

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美和の初期刀・加州清光が折れたという知らせは、遠征から帰ってすぐに聞かされた。
加州清光は、この本丸の中で一番強かった。そして、美和の心の支えにもなっていた。きっとたぶん、人間の言葉で恋仲と呼ばれる関係だったんだと思う。本丸の中では皆、それを微笑ましく思っていた。俺をのぞいて・・・。

「・・・で、あの人は?」
「部屋にこもったきり。全く出てこない。部屋の前にご飯を置いてても、手がつけられてなかった。少しは食べてくれないと、彼女・・・病気になっちゃわないか心配で・・・」

光忠の言葉に、小さくため息をつく。
美和が部屋に閉じこもってから、まる2日が経過していた。食事もとっていない。部屋の外から話しかけると返事はするし生きてはいるようだと、光忠は言っている。
あの人が顔を見せないだけで、この本丸の活気は失われた。大切な主が姿を見せず、大事な仲間を失ったこの本丸はどうなっていくのだろうか。このまま彼女が姿を見せなかったら・・・。

「見てくる。」
「あ!ちょっ・・・国広君!今の彼女は加州君を失ったんだし、そっとしといたほうが・・・」
「しかしあの人は審神者だ。いつまでも落ち込んでられたら、こっちが困る。」
「それは・・・・」

言葉を返せなくなった光忠を背に、俺は美和の部屋へと歩き出す。
美和の部屋は静まり返っていた。呼吸さえも聞こえないくらいに・・・。名前を呼ぶが、返事はなかった。少しだけ、焦りが生まれた。もしも彼女が・・・死んでしまっていたら?
震える手で障子を開けると、美和は部屋の隅で丸くなっていた。静かに呼吸はしてるようで、俺は安堵する。

美和。いつまでそうしてる気だ。」

そばに座るが、彼女は丸くなったまま折れた加州清光を抱きしめていた。言葉は返ってこない。

「加州清光はもういない。それにもともとあいつは、刀剣の付喪神。美和とは違う存在なんだ。それはお前も分かっているだろう?それを承知で、お前は加州と恋仲になった。折れればいなくなると知っていただろう・・・?」

彼女が小さく頷くのが分かった。
俺は不器用だ。だから美和の気持ちにはうまく寄り添えない。俺の性格上、厳しい言葉しか彼女には投げかけられなかった。
美和がか細い声で「かしゅう・・・」と言葉を紡いだ。俺は彼女が抱きしめていた加州清光を取り上げて脇に置く。パッと彼女が身を起こして俺を見た。やつれた表情で、涙のあとを残す彼女は痛々しかった。小さく唇が呟く。「加州を返して」と。それはできない。加州清光はもう、折れてしまったのだから。折れた刀は・・・使えない。
白くて細い腕が、俺の脇に置かれた加州へ伸ばされる。俺はその腕をひっぱり、彼女を俺の腕の中へおさめた。そのままできるだけ強く抱きしめる。

美和、すがるなら加州じゃなく俺にしろ。加州はもう、いないんだ。折れた刀はしゃべれないし、美和を慰めることもできない。だけど俺なら・・・お前を慰めることぐらいはできる・・・」

ゆっくりそう言葉をかけると、美和は小さく泣き出した。声を押し殺して・・・。
そんな彼女の背中を優しくなでてやる。この悲しみを超えられたらきっと、彼女はいつものように笑ってくれるだろう。
美和が笑ってくれるのなら、俺の腕の中でたくさん泣くといい。その分俺がお前を慰めてやるから・・・。そう思ってしまう俺は、かなり卑怯なヤツだなと自分で小さく笑うのだった。





すがるなら俺にしろ




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