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Posted by 桂樹 on  

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過去は振り返らない。

Posted by 桂樹 on   0 

新緑の季節。日差しはもうすでに、夏の日差しをしていた。強い光が照りつける中、粟田口の長兄・一期一振は縁側に座り、ぼんやりと庭を眺めていた。内番の休憩中、短刀たちはゆっくり過ごすのではなく鬼ごっこをしている。キャーキャーと声が上がるそばでは、新撰組の刀たちが洗濯物を取り込んでいた。

「一期。休憩中ですか?」

不意に頭上から柔らかな声が降ってくる。少し顔をあげれば、この本丸の審神者・美和がそばに立っていた。
彼女は目の前に広がる青空を見て、小さくため息まじりに言う。

「まだ新緑の季節になったばかりというのに、こうも暑いとこれからの夏が心配になりますね。」
「ははは。そうですな。今日は暑いのでこまめに休憩を・・・という長谷部殿のお考えのもと、こうして休憩をとっておりますが、我が弟たちは疲れ知らずで・・・」

はしゃぐ短刀たちに目を向けると、美和もそちらを見てにっこり笑った。
その眼差しがまるであの人のようで、一期は喉まで出かけた言葉を必死に飲み込む。
言ってしまいそうだった。「秀吉様」と。彼女は眼差しは、いつでも秀吉の眼差しに似ていた。怒った時も、優しく笑う時も。それは彼女が、豊臣の血を引く人間だからなのかもしれない。
直系ではないが、彼女は正真正銘、豊臣の血を引く人間。戦国から今の世に至るまでずっと、途切れることのない豊臣の血。おそらくそのことは、彼女自身知らないのだろう。
だが、豊臣の刀だった者たちは、そのことを知っている。感じるのだ。秀吉の血を。だからここには、一番最初に豊臣の刀ばかりが集まった。一期一振、鯰尾、骨喰、三日月・・・。

「ねえ一期。いい考えがあります。今度、この本丸の庭ですいか割りいたしましょう?短刀たちは喜ぶと思うんです。」
「そうして結局割れなくて、私の刀を使って切り分けるおつもりでしょう?」

にっこりそう言葉を返すと、彼女は「どうして分かったの?」と狼狽した。
だってそれは、あなたのご先祖様が同じようなことをしたから・・・という言葉を、一期はごくりと飲み込んだ。
彼女は秀吉ではない。一人の審神者として、この時代で采配をふるっている。
たとえ彼女が秀吉と同じ眼差しをしていても、彼はもう、この世にはいないのだ。全ては過去。一期は人間として、今を生きている。

「・・・美和殿。」
「一期、どうしたんですか?突然そのような神妙な顔をして・・・」

美和が一期の顔を覗き込む。彼は太ももの上でグッと拳を握り、美和に向かって言った。

「私はもう、過去は振り返らない。あなたは私のただ一人の主・・・。守ってみせます。どんな時も。」

困惑する美和と、決意を固めた一期の間を新緑の風が通り抜けていく。鯰尾は言った。「過去は振り返らない」・・・と。ならば自分も・・・。

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王子かもしれない

Posted by 桂樹 on   0 


最近、刀剣男士たちの間で噂になっていることがある。
それは、一期一振が王子ではないのか?・・・ということだった。
燭台切光忠は言う。

「あの外見で、いつも崩さない笑顔。彼はどう見たって、女の子たちが騒ぐ王子様・・・でしょ?」
「そういえば、この前鶴丸が万屋から変な衣装を借りてきてさー・・・。なんでも、いち兄に着せたいんだってよ。」

彼と話していた薬研が、光忠にそう言った。
どんな衣装なのかと問えば、白っぽい軍服だと薬研は答える。
それじゃあ今の一期の衣装が、白くなっただけじゃないか・・・と光忠は苦笑した。

「・・・と、思うだろ?けど、違うんだよ燭台切の旦那!今から鶴丸に見せてもらいに行くといいよ!」

そんなこんなで、光忠は薬研と一緒に鶴丸国永のところへ行く事になった。
本丸の一室で、鶴丸は何かのお面を作っていた。どうやら、暇ではあるらしい。
薬研が例の衣装を見せてもらえないか頼むと、鶴丸は押し入れからそれを引っぱり出した。

「これこれ!一期一振にぴったりだと思うんだよなぁ・・・。」
「うわっ。何これすごい!よくこんなの見つけてきたね、鶴丸君。」
「まぁーな。常に驚きを求める俺の驚きセンサーが、万屋で働いたわけよ!」
「で、それをどうやっていち兄に着せるつもりなんだよ。いち兄、絶対着ないと俺っちは思う。」

二人の目の前であぐらをかく薬研が、確信を持った感じで言う。
その言葉に、二人とも「うーん・・・」と頭を悩ませる。
その時だった。ちょうど一期一振が鶴丸たちの部屋を訪れたのは・・・。

「鶴丸殿、少しよろしいですか?実は今度の遠征のことなんですが・・・って、薬研に光忠殿。こんなところで3人で何をしておいでで・・・」
「「「チャーーーーーンス!!」」」

3人同時に叫んだ時、一期の運命は決まった。
スパーンと障子が閉められ、一期は薬研と光忠によって、羽交い締めにされる。

「こ、これはどういう・・・・!?鶴丸殿!見てないで助けてください!」
「すまないな、一期。それはできない相談だ・・・」

にやりと笑った鶴丸を見て、真っ青な顔をする一期一振。
そのあと本丸に、彼の悲鳴に近い絶叫が響き渡った。



「・・・やっぱり、王子かもしれない。」

むすっとする彼の目の前で、鶴丸と薬研、光忠は小さく言葉を紡いだ。
そこには王子様スタイルの一期がいた。
今は怒った顔つきだが、これで笑顔を浮かべれば、さわやかな王子様の出来上がりだ。

「何も無理矢理着替えさせなくても、事情を話してくれれば快く引き受けたものを・・・」
「すまないすまない。薬研のやつが、お前のことだから絶対断るだろうって言っててさ。」
「まさかいち兄が快く引き受けるだなんて、思ってもなかったからよ・・・」

苦笑する二人に、プイッとそっぽを向いてしまう一期。
しかし何かを思いついたような顔をし、少しだけ笑った。
その笑顔が、いつもより怖く感じる。

「そうだ。いい機会ですしこの格好で少し、美和殿をエスコートして参ります。」
「な、何を言い出すんだい?」

光忠が焦った声を上げる。さらりとその言葉を、一期はかわした。

「王子かもしれないんでしょう?」

ぞくりとするほどの笑顔。一期のこの態度を見て、鶴丸が一つ確信した。

「もしかして一期、最初からそれが目的で・・・」
「何の事でございましょうな。では鶴丸殿、この衣装、しばらく貸していただく。」

そのまま一期は、鶴丸たちの部屋を出て行った。
部屋の外から他の刀剣たちの驚きの声が上がったと思うと、今度はこの本丸の審神者・美和の悲鳴が上がる。
3人はあわてて部屋の外を出て様子を伺うと、美和は一期によってお姫様抱っこされていた。

「いいいい一期!これは一体、どういうことでしょうか!?」
「他の刀剣男子たちが、私は王子かもしれないと言うもので、せっかくならばと王子様になりきってみたのです。今から美和殿はしばらく、私の姫君になっていただきたい。」
「そ、それは遠慮させていただきたく・・・」
「残念ながら、美和殿に決定権はありませんよ。さあ、私の姫君。二人で少し散歩に出かけましょうか。」

美和の言葉をも無視して、彼女をお姫様抱っこしたまま歩みを進める一期一振。
あの服は、一期に勇気をも持たせてしまうのか・・・と鶴丸は思ったし、普段弟の面倒見ばかりでストレスがたまっているんだろうなと、薬研は思った。
このあと美和は、一期にいいようにされたとかそうでないとか・・・。




王子かもしれない




ツイッターの創作bot様のお題です。

付喪神は人を愛す

Posted by 桂樹 on   0 


刀剣男士としてこの世に顕現され、人の体を得た私。
長い間、私はこの刀剣の中で宿り、生きていた。
戦国時代に、何人もの武将の声を聞き、時代を見て、そして私自身もその戦いで焼かれた。
もう、戦うことはないと思っていた私の前に、力を持った娘が現れた。
顕現された私に、彼女はにっこりと微笑む。
その微笑みが、どの時代の女性よりもかわいくて、私の心臓はどくどくと跳ね上がる。
生身の体というものは、とても不思議なものだった。
その日から私は、彼女を見るたびに、不思議な感情で支配される。

私だけを見ていて。
私だけにふれてほしい。
私だけのものにしたい・・・・。

許されない、その感情。
あぁ、私はこの一期一振という刀に宿った付喪神でもある。
神と人とが交わることは、決して許されるべきではないこと。
それなのに・・・・。

美奈殿、あなたをお慕い申し上げています。」

彼女は綺麗に笑った。可憐な唇で、「ありがとう」と言った。
私はその先に進みたい。
人間たちが愛し合うように、私もあなたと愛し合いたい。

美奈殿の、そのお体に触れてみたいのです。」

神と人が交わる。
その代償がどんなものか、私にはまだ分からない。
それでもあなたに触れてみたいと思うのは、私が人の体を得た時から決まっていたことなのかもしれない。
この身が消えようとも、私自身が神でなくなり、この世からなくなってしまおうとも、
私はあなたに、私自身の証を刻みたいのです。

あなたが私を請う仕草。あなたが私と交わる瞬間。
私の中に、その出来事を刻みましょう。
いつか私が、神でなくなるその日まで・・・・。




付喪神は人を愛す




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