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春をプレゼント





ある非番の日、安定と清光は自室にいた。
これまで寒かった部屋の中には、ほんのりと春の日差しが差し込み始めており、だんだんと肌寒さがなくなっていた。
もしも猫だったなら、この日差しの下で昼寝などに興じていただろう。

「ねえ清光。今度の美和のお誕生日だけど、清光はプレゼントに何渡すの?」

自分の刀を手入れしながら安定は、念入りに自分の爪にマニキュアを塗る清光に尋ねた。

「何って・・・うーん、まだ考え中なんだよねぇ・・・。あの人、それなりにおしゃれは好きだから、お化粧品とかでもあげようかなって思ったんだけどさ、やっぱりそういうのって好みがあるじゃん?そんなこと考えてたら、何をあげたらいいのか分からなくなっちゃってさー。」

塗り上げた爪に、ふーっと息を吹きかける清光。安定も刀を手入れする手を止めて困った顔をした。

「そーなんだよね。僕も、アクセサリーとか化粧品とかかなぁ?って考えたんだけど、そういうの詳しくない上に、こんなもの欲しくなかったとか言われたらショックだなぁ・・・って。」
「そんなこと言わないでしょ。美和は・・・。美和なら、好みのものじゃなくても喜ぶだろうけど、やっぱり主が喜ぶものあげたいじゃん。でもそれが分からなかったら、どうしようもないよねぇ・・・」

はぁ・・・と大きなため息が出る。そこに、安定のため息も加わった。
美和の誕生日は、数日後に迫っていた。手作りの料理を・・・とも考えたが、その考えにたどり着いたものも少なくはない。
厨房の使用権を巡って、一騎打ちなどもなされていた。それに参加してもいいかなと考えたが、作るものがかぶりそうでやめた。
この本丸において、燭台切以外の料理スキルは低い・・・。

「もっと料理スキルが高かったらねぇ・・・」
「今更そう言っても仕方ないじゃん。それに、料理以外にも主が喜んでくれそうなものはいっぱいあるだろ?」
「例えば何?」
「それが分かったら、苦労しないっつーの!」

二人でしゃべっているうちに爪が乾いたようで、清光は頬杖をついて窓から空を見上げた。
安定は自分の刀を鞘に戻し、窓のそばまで行ってから、ガラっと窓を開ける。
外にはもう、春の景色が広がっていた。
うぐいすは桜の枝にとまり、とてもいい声で鳴いていた。先日まではお世辞にも美しいとは言えない声だったのだが・・・。

「もうすっかり、春なんだねぇ・・・」

安定がそう呟いた時、清光が「あ・・・!」と何かに気づいた声を上げた。

「なに?清光。」
「安定!俺たちでさ、美和に春をプレゼントしようよ!」
「春をプレゼントって・・・何言ってんのさ清光。」
「いいから俺について来いって!今から春を探しに行くよ!」

パタパタと駆け出しながら部屋を飛び出していった清光のあとを安定は追った。
何の事を言ってるのか分からなかったが、庭に出た清光の行動を見て、安定はそういうことか・・・と気づく。
彼もまた、清光のマネをして春を集めた。そうして数時間後・・・。

「いっぱい集まったね、春。」
「これだけあれば、美和も喜んでくれると思うよ。」

清光はパチンとウィンクをした。そして、美和の誕生日がやってきた・・・・。
他の刀剣たちが料理やプレゼントを振る舞う中、清光と安定はたくさんの春を抱えて美和の前に立つ。

美和!誕生日おめでとう!僕と清光から美和へ、春のプレゼントだよ!」

そう言って、二人は美和へ春を手渡した。
買ったものでもなく、お金はかかってないけれど、そこには色とりどりの春の花たち。

「気に入ってくれた?俺たちの愛を、すっごい込めてみました!・・・って、え!?美和、なんで泣いちゃうんだよ〜!」

美和の目に涙が浮かんだ瞬間、清光と安定はひどく狼狽え、周りの刀剣たちは「美和を泣かした!」と二人を茶化す。
美和は、そのままぎゅっと二人にしがみつき、涙を浮かべて笑うのだった。





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カテゴリー:  刀剣乱舞 その他

国広たちはそれぞれに思う




『山姥切国広』

ぼんやりと、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。頭が霞がかっていて、ふわふわしている感覚。
男の声のようだった。どこか懐かしく、知っている声。誰の声なのか記憶を引っ張りだそうとしている最中で、再び声が聞こえた。

「山姥切国広」

今度はしっかりと声が聞こえた。先ほどの男の声ではなく、可愛らしい女の声。
国広はそっと目を開けた。目の前にいたのは、巫女姿をした少女だった。おそらく、この少女に呼ばれたのだろう。
彼を見てふわっと笑ったこの少女に、すごく親近感を覚える。この少女が、似ていたからなのだ・・・。



* * *



夏がもうすぐ終わろうとしている。
近くの木々ではひぐらしが鳴いており、遠くの空には秋の雲が所々に浮かんでいた。
しかし、まだまだ暑さも夏の雲も残っていた。
審神者である美和が立ち止まって遠くの雲を眺めている。そんな主の姿に気づき、先を歩いていた3振の刀は歩みを止めた。

「おい。何をしているんだ、美和。」

しびれを切らした山姥切国広が、少し鋭い口調で美和へと尋ねる。
山姥切国広の他には、堀川国広、山伏国広がその場にいた。二人も、少し不思議そうな顔をして美和を見ている。
ひぐらしの鳴く声に交じって、小さく呟きが聞こえた。

「ううん。なんでもないんだけどただ、国広もこんな気持ちだったのかなって。」

うまく話が見えなくて、3振は顔を見合わせる。静かに彼女の続きの言葉を待つと、彼女は空から視線を外し、その3振の刀を見ながら少し笑って言った。

「国広も、故郷の田舎を離れて違う場所に来た時、こんな気持ちだったのかなって思ってね。」
「こんな気持ち・・・?主さんは今、どんな気持ちなんですか?」

堀川国広が尋ねた。彼の言葉に「そうねぇ・・・」と小さく呟き、やはり遠くの雲を見つめながらふと、少し悲しそうな顔をする。

「なんだか、悲しいような感じ・・・かな。空は同じなのに、生まれ育った田舎とは、訛りも雰囲気も違う。私は国広とは同郷だからさ、なんとなく気持ちが分かっちゃうような感じがして・・・」

美和の細められた目があの人そのもので、国広たちは少しだけ泣きたくなったし教えたくなった。
彼らは知っているのだ。美和は国広の生まれ変わりそのもの。
美和が故郷を思う気持ちは、前世で彼が感じた気持ちとまったく同じなのだ。

「主殿。大丈夫ですぞ。我ら兄弟はいつだって、主殿と共にあるのだからな!」
「そうですよ!僕は土方歳三の脇差だったけど、今は主さんの脇差しです!だから片時も主さんのお側を離れませんから!ねっ、兄弟!」
「・・・ああ。俺はあんたの初期刀であり、近侍だ。ずっと側にいてやる。」

3振の言葉を聞いて、くしゃっと美和は笑った。

「ありがとう!山姥切国広、堀川国広、山伏国広!」

彼女の言葉に、3振は少しだけはにかんだ。国広が、自分たちに話しかけてくれているような気がしたからだった。

(我らを生み出した国広)
(僕たちはまた、あなたに会えて)
(とても嬉しく思う。俺たちはいつでも、あんたの・・・)

誇れるような刀でありたい・・・・。




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写しの刀剣



この本丸には、最初から三日月宗近がいるという。
そう加州清光に聞かされたのは、本丸に顕現してから最初の夜だった。
その三日月は、常に主である美和のそばにいる。そう、彼女が小さい頃から・・・。ずっと彼は、美和を見て来た。

「その三日月宗近とやらは、強いんだろうな。三日月宗近といえば、写しの俺とは比べ物にならないくらいの刀で、確か天下五剣のうちのひとつ・・・。刀としても、歴史的価値のある刀だ・・・。」

国広の言葉に、加州が瞳を伏せた。
「写しはお前だけじゃないよ・・・」と、呟いた彼が忘れられなかった。
幾日かたって、国広は三日月と共に出陣した。この日はなぜか二人だけの出陣で、国広はなぜ三日月と組まされたのかと疑問に思った。
こんなきらびやかな刀とともに戦など、写しの俺には似合わない・・・。
卑屈になっている国広を、三日月は目を細めて見ていた。しっかりと彼を見つめる三日月の瞳には、宝石のように綺麗な三日月が浮かんでいる。
出陣が終わり、戦績を美和に報告したのち、三日月は廊下で自分から離れていこうとする山姥切国広を呼び止めた。

「山姥切国広よ。少しよいか?」
「・・・なんだ、三日月宗近。」

振り返った国広に、三日月は縁側を指差す。少し笑顔を浮かべて、彼は言った。「少しだけつきあってはくれまいか?」と。国広は少し驚く。この本丸の三日月は、美和の前以外ほとんど笑ったことがないのだと、他の刀剣男士たちから散々聞かされていたのだから。
縁側に正座をした三日月の隣で、国広はあぐらをかく。

(なぜ俺は今、こんな天下五剣とともにいるのだろうか?ほら。たたずまいからして、俺と違うではないか。写しの俺とは違う、伝説の三日月宗近・・・)

三日月の頭についた髪飾りがゆれるのを、じっと見つめる国広。しばらく二人の間に言葉はなかったが、心地よい風と甘い花の香りが漂ってきた瞬間、三日月がぽつりと口を開く。

「山姥切が考えてるほど、俺はそこまで凄い刀剣男士ではないぞ。」
「・・・・え?」

国広はその言葉に深い意味があるような気がして、そのまま彼の言葉の続きを待った。
再び風にのって、あの甘い花の香りが漂ってきた時、三日月は続きの言葉を述べた。

「俺はな、山姥切。お前と同じなのだ。」
「それは・・・どういう・・・・」
「だから、お前と同じ、写しの刀剣なのだ。三日月宗近の、な。」
「みかづきむねちかの・・・うつし・・・?」

だからあの時、加州は俺の言葉に目を伏せ言ったのか。写しはお前だけじゃない・・・と。

「本物の三日月宗近は、ずいぶん昔に折れた。美和がまだ、幼い頃に。彼女の生まれながらの強い霊力におののいた時間遡行軍が攻めてきた時に、彼女をかばってな・・・・。当時、美和は本物の三日月宗近になついていたのだ。彼を急に失った美和は、審神者としての能力を失いかけた。だから俺が作られたのだ。この甘い花の香りが漂ってくる時期のことだった・・・。俺はこの時期に生まれたのだ。」

三日月宗近の写しとして・・・・な。

そう笑った彼の横顔を見て、国広は思った。この刀も、自分と同じ、深い闇を抱えてるんだと。
その闇を抱えたまま、彼はいつも戦っている。

「でもな、俺は一度も本物の三日月宗近に劣ると思ったことはない。本物の三日月宗近は折れて美和に寂しい思いをさせてしまったが、俺はずっと、折れずに幼い頃から彼女を守っている。この先もずっと、俺は美和を守っていきたいのだ。」

三日月はそれだけ言うと、静かに立ち上がった。国広に背を向けて、その場を去って行こうとする。
もしかして彼は、写しである俺を気遣ってくれたのだろうか?
そんな考えと共に、国広は気づいてはいけないことに気づいてしまった。

「三日月宗近。その・・・礼を言う。」
「礼などいらないさ。卑屈に生きる若い刀に、じじいが少し話をしてやっただけさ。」

立ち止まらないで去っていく細い背中。少しためらったが、国広は気づいてしまったことを口にした。

「それから・・・あんたまさか、美和のこと・・・」

トントントンと三日月が立てていた足音がやむ。
刀剣男士とは、付喪神が宿った刀剣が主の霊力により人間の形を得たもの。地位的にはそこまで上ではないものの、正当な神である。その神が人を・・・・。

「ろくなことにはならないだろうな。人とは儚い生き物だ。それでも俺は・・・」

トントントン・・・と、足音が再び国広から去っていく。彼の姿が完全に暗闇へ消えた時、国広は小さく言葉を口にした。

「強いんだな、三日月宗近は・・・。自分の運命も、今後待ち構えてるであろう運命も、全て受け入れているというわけか・・・」

見上げた空には輪郭のはっきりした三日月が神々しく光りを放っている。そして、どこからか漂ってくる甘い花の香り。空気は冷たく澄んでいるが、もうすぐ春がやってくるのだろう。それが過ぎる頃には俺も、あんたに追いついていたいな・・・そう思いながら、国広はその場をあとにした。




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生きて帰ること



バチバチと降りしきる雨が、激しく顔に当たっている。お気に入りの服はぐっしょり濡れて肌にまとわりつく。空を見上げれば真っ黒な雲と、時折ぴかっとイナズマが走って行く。そして、遅れてやってくる低い音。
加州清光は仰向けの状態でそれらを見ていた。どうして自分がこんな状況下にいるのかが分からない。降りしきる雨のせいで、地面は泥だらけだ。体を地につけているためか、ドドドドドという轟が聞こえてくる。目を凝らして周りを見回せば、仲間たちが必死で戦っていた。

(俺、どうしてここにいるんだっけ・・・?)

記憶を掘り返そうと目を閉じかけた。しかしかすかに視界の端に映った影をとらえて目を見開く。ぬっと自分に大きな影が落ちた瞬間、加州ははじかれたように起き上がった。気づくとそばには大きな刀が地面に刺さっている。

(検非違使・・・・!)

体勢を立て直しながら加州は目の前の敵を睨みつける。目を爛々と光らせる検非違使の大太刀がいた。

(そうだ・・・。俺たち・・・・!)

冴え始めた頭は、どうしてこのような状況に至ったかを思い出す。池田屋の記憶の時代へ、遠征に来ていたのだ。討伐が終わり、雨も降りそうだから早めに引き上げるはずだった。仲間たちと今日の遠征の話をし、もう少し鍛錬が必要なんじゃないかという結論に至った時、彼らは現れた。検非違使が・・・。
この中で一番レベルの高い刀剣男士は、加州と大和守安定だった。あとの仲間たちは短刀だったり脇差だったり。対する相手は薙刀や大太刀、槍ばかりでとても不利な状況で・・・。

加州はそばに転がっている自分の刀を拾い上げ、敵の大太刀を見据える。そばで安定のブチギレた雄叫びが聞こえてくる。みんな必死だった。無事に本丸へ帰るために。主である美和に会うために・・・。それは加州だって同じだった。

『加州。もし何かあった場合は、戦わず逃げなさい。絶対に、生きて本丸へ戻ってくる事。全員で。絶対よ!』

いつも遠征に行く時に、美和はいつもこう言っていた。何かあった時って・・・と、笑っていたけれど今の状況を見て全然笑えやしない。加州はひと呼吸置くと、刀を鞘におさめてから青い羽織を着ているその人物へと叫んだ。

「安定っ!みんなを連れてここから撤退する!」

振り返った安定の顔が、驚きに満ちていた。「いつものお前らしくない」と言いたげな顔つき。加州は美和の言葉を思い出しながら言葉を続ける。

「生きて本丸へ戻る!全員で、絶対に!だからここは一時撤退だ!」

大太刀の攻撃をよけつつ、加州は短刀たちを連れて走った。生きて再び、美和に会うために・・・。

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歴史と未来を守ってくれた者たちよ



注)刀ミュの三条 with 加州清光+女性審神者設定です。救われない、報われない話。「描いていた未来へ」を少し意識したお話です。





桜が咲くころ、俺は顕現された。この本丸の初期刀として、新米審神者の美和の初期刀として政府から彼女の元へとやって来たんだ。「ちょっと扱いづらいけど・・・」なんて言ったら、美和は少しだけ困ったように笑っていた。その顔はとてもかわいくて、ずっと見ていたいと思ったのが俺の本音。

春が通りすぎて、少しだけ暑くなり始めた新緑の時期。いくつかの短刀たちに交じって、三条派の今剣がやってきた。いつも鬼ごっこをせがまれて、汗だくになりながら鬼ごっこをした記憶。美和も一緒に、鬼ごっこをやった。美和は短刀たちに好かれていた。俺も美和が大好きだった。可愛がってくれて、着飾ってくれて、初期刀であることが誇らしかった。

夏になってから、今度は三条派の石切丸がやってきた。美和にいつも「加持祈祷ならいつでも任せてくれ」なんて言ってて、また美和が少しだけ困ったように笑っていたのを覚えている。俺は少しだけ、石切丸が苦手だった。何を考えているのか分からなかったから・・・。

秋。紅葉の時期に、三条派のレア太刀2振が同時に顕現された。新米審神者だった美和は、半年でかなりの霊力をつけ、レア太刀2振を顕現できるまでに成長していたんだ。やってきたのは三日月宗近と小狐丸。どっちも俺の話を全く聞かなくて、小狐丸なんか俺のことを子供扱いするし・・・。正直、石切丸同様苦手だった。

紅葉が散り、初めての雪を見た時期に、三条派最後の刀剣が顕現された。岩融という薙刀・・・。今剣はよく知ってるみたいで、岩誘が顕現されるやいなや喜んで彼に飛びついていた。俺と安定みたいなものなのかな?と思っていた。美和は「ちょっと違うかな?」と言っていたけれど、彼らがどんな関係だったのか、その時は知らなかった。
そのまままた、春が巡って来て、俺は第1部隊の隊長に任命された。メンバーは三条派の連中・・・。俺の気心知れたやつなんてどこにもいなくて美和に弱音を吐いたけど、彼女はただ笑って、「みんなを導いてあげてね」なんてしか言わなかった。どうしてこのメンバーが組まれたのか、その時の俺は分からなくて、美和が俺のことを嫌いになったんだと思った。
でも・・・違った。このメンバーで阿津賀志山に出陣し、三条派の抱えてる闇、俺自身の甘さと弱さを知った。きっと美和は、それに気づいていたんだと思う。だからこのメンバーを組んだ。
他の刀剣男士たちと衝突し、お互いのことを理解し合った時、絆が生まれた。仲間としての・・・・。苦手だったはずの三条派の連中は、新撰組の仲間たちと同じくらい俺の中では大切な仲間になった。
美和はそんな俺を見て、嬉しそうにしていた。「成長したね!」なんて可愛く言うもんだから、俺の顔は少しだけにやけてしまった。もっともっと、成長した俺を見てほしいと願った。
阿津賀志山での出陣が終わり、再び新たな敵と戦い始めた2年目の秋。山々がうっすら紅葉し始める時期・・・・。

「か・・・・う・・・。・・・しゅう・・・加州っ!」

どこかで俺の名前が聞こえる。低い声だった。美和じゃない。俺を呼ぶのは誰だろう?うっすら目を開けると、飛び込んできたのは緑色の着物を着た、体格のいい男。そいつは俺の顔をちらっと見たあと、長い刀を振り回して何かを斬っていた。

「しっかりするんだ!加州清光!」

意識が戻り始めた頃、男が鋭くそう叫ぶ。それが石切丸の声だと分かったのは数秒後。そして、俺の今置かれている現状を思い出す。俺ははじかれたように彼へと叫んだ。

「石切丸っ!美和はっ!?」
「岩融さんや今剣さんたちと一緒に逃げているはずだ!」

俺は少しだけ脱力した。彼女を逃がすことにはどうやら成功したらしい。その代わり、敵の攻撃を受けて気絶するなんてぶざますぎるけど・・・・。俺が気絶してる間は、石切丸が踏ん張ってくれていたようだ。しかし今は夜・・・。夜目のきかない石切丸に、夜戦は厳し過ぎたようで、彼ももうボロボロだった。

「ごめん!俺がミスったばっかりに・・・。石切丸、ぼろっぼろじゃん!」
「そういう清光もな。しかし、いくらボロボロになろうとも、ここだけは通さない。」

石切丸が刀を構える。俺も本体を構えて、敵に睨みをきかす。そこへこんのすけが飛び込んできた。こんのすけの顔は真っ青で、キュッと心臓が締め付けられる。まさか美和が・・・・?震える唇でそう尋ねようとしたとき、こんのすけは叫んだ。

「石切丸殿!加州殿!三日月殿と小狐丸殿が・・・・破壊されました。我が本丸において残っている刀剣男士たちは、石切丸殿と加州殿、岩融殿に今剣殿の4振でございます。さらに、時の政府からの援軍はあまり期待できそうにない感じで・・・・」

静かに石切丸が目を閉じた。俺も刀を握っていた手が震える。あの三日月と小狐丸が・・・折れた?
驚きを隠せなくて、こんのすけによりもたらされた事実が俺の心を揺さぶる。

「でも、まだ主は生きている・・・・」

ボソッと呟かれた言葉に、俺は我に返った。石切丸を見ると、彼は力強く頷く。そうだ。まだ美和が生きている。

「俺たちは歴史の流れを守る任務を授けられた刀剣男士。歴史の流れを守り、未来も守る。だから・・・美和が生きてる歴史を守らなきゃいけないし、美和の未来も守らなきゃいけない。美和を守るためなら俺たちは、刃が折れても、隊長が死んでも戦わなくちゃいけないんだっ!」

この時の石切丸は、俺を否定しなかった。ただ、黙って刀を構えていた。
春の花が咲く中で、夏の雨が降りしきる中で俺たちは生まれて来た。秋の匂いを知り、冬の空を見上げることができたのは、全て美和のおかげ・・・。だから、恩返しじゃないんだけど、今はただ、彼女を守りたいんだ!

「石切丸!行くぞっ!!」
「戦はあまり、得意ではないんだけどなっ!!!」

かけ声とともに、俺たちは敵へと突っ込んだ。でももう、俺たちも限界だったみたいだ。石切丸は最後まで粘っていたけれど、その大きな背中が崩れ落ちた瞬間、俺は小さく呟いた。

「ごめんね、美和。せっかく顕現してくれたのに。俺も美和の描いていた未来へ、一緒に行きたかったよ。」

そこで、目の前が真っ暗になった。この感覚・・・久しぶりだな・・・。


***


「・・・美和?どうしたのだ?」

山の中を警戒しながら進む中、美和の異変に気づいたのは岩融だった。急に膝から崩れ落ちた美和は放心状態で、どこか一点を見つめていた。今剣が美和にかけより、彼女を覗き込んだ時、美和は小さく呟いた。

「加州、私もあなたと、私の描いていた未来へ一緒に行きたかったよ・・・。」

彼女の言葉に、今剣と岩融は全てを悟り、顔を伏せた。
数時間後、時の政府からの援軍が来る。この時生き残った審神者と刀剣男士たちはごくわずかで、折れた刀剣の数は数多にも及んだ。戦いが終わり、生き残った美和は今剣と岩融を連れて本丸へと戻った。折れたたくさんの刀剣たちの中で、石切丸と加州清光の残骸が、二つ重なっていた・・・・。彼女はその2振を、ぎゅっと抱きしめるのだった。
私の歴史と、未来を守ってくれた者たちよ・・・・。

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★更新履歴★

18.08.17
刀剣乱舞 短編1つUP!(山姥切国広)
 




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