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写しの刀剣


この本丸には、最初から三日月宗近がいるという。
そう加州清光に聞かされたのは、本丸に顕現してから最初の夜だった。
その三日月は、常に主である美和のそばにいる。そう、彼女が小さい頃から・・・。ずっと彼は、美和を見て来た。

「その三日月宗近とやらは、強いんだろうな。三日月宗近といえば、写しの俺とは比べ物にならないくらいの刀で、確か天下五剣のうちのひとつ・・・。刀としても、歴史的価値のある刀だ・・・。」

国広の言葉に、加州が瞳を伏せた。
「写しはお前だけじゃないよ・・・」と、呟いた彼が忘れられなかった。
幾日かたって、国広は三日月と共に出陣した。この日はなぜか二人だけの出陣で、国広はなぜ三日月と組まされたのかと疑問に思った。
こんなきらびやかな刀とともに戦など、写しの俺には似合わない・・・。
卑屈になっている国広を、三日月は目を細めて見ていた。しっかりと彼を見つめる三日月の瞳には、宝石のように綺麗な三日月が浮かんでいる。
出陣が終わり、戦績を美和に報告したのち、三日月は廊下で自分から離れていこうとする山姥切国広を呼び止めた。

「山姥切国広よ。少しよいか?」
「・・・なんだ、三日月宗近。」

振り返った国広に、三日月は縁側を指差す。少し笑顔を浮かべて、彼は言った。「少しだけつきあってはくれまいか?」と。国広は少し驚く。この本丸の三日月は、美和の前以外ほとんど笑ったことがないのだと、他の刀剣男士たちから散々聞かされていたのだから。
縁側に正座をした三日月の隣で、国広はあぐらをかく。

(なぜ俺は今、こんな天下五剣とともにいるのだろうか?ほら。たたずまいからして、俺と違うではないか。写しの俺とは違う、伝説の三日月宗近・・・)

三日月の頭についた髪飾りがゆれるのを、じっと見つめる国広。しばらく二人の間に言葉はなかったが、心地よい風と甘い花の香りが漂ってきた瞬間、三日月がぽつりと口を開く。

「山姥切が考えてるほど、俺はそこまで凄い刀剣男士ではないぞ。」
「・・・・え?」

国広はその言葉に深い意味があるような気がして、そのまま彼の言葉の続きを待った。
再び風にのって、あの甘い花の香りが漂ってきた時、三日月は続きの言葉を述べた。

「俺はな、山姥切。お前と同じなのだ。」
「それは・・・どういう・・・・」
「だから、お前と同じ、写しの刀剣なのだ。三日月宗近の、な。」
「みかづきむねちかの・・・うつし・・・?」

だからあの時、加州は俺の言葉に目を伏せ言ったのか。写しはお前だけじゃない・・・と。

「本物の三日月宗近は、ずいぶん昔に折れた。美和がまだ、幼い頃に。彼女の生まれながらの強い霊力におののいた時間遡行軍が攻めてきた時に、彼女をかばってな・・・・。当時、美和は本物の三日月宗近になついていたのだ。彼を急に失った美和は、審神者としての能力を失いかけた。だから俺が作られたのだ。この甘い花の香りが漂ってくる時期のことだった・・・。俺はこの時期に生まれたのだ。」

三日月宗近の写しとして・・・・な。

そう笑った彼の横顔を見て、国広は思った。この刀も、自分と同じ、深い闇を抱えてるんだと。
その闇を抱えたまま、彼はいつも戦っている。

「でもな、俺は一度も本物の三日月宗近に劣ると思ったことはない。本物の三日月宗近は折れて美和に寂しい思いをさせてしまったが、俺はずっと、折れずに幼い頃から彼女を守っている。この先もずっと、俺は美和を守っていきたいのだ。」

三日月はそれだけ言うと、静かに立ち上がった。国広に背を向けて、その場を去って行こうとする。
もしかして彼は、写しである俺を気遣ってくれたのだろうか?
そんな考えと共に、国広は気づいてはいけないことに気づいてしまった。

「三日月宗近。その・・・礼を言う。」
「礼などいらないさ。卑屈に生きる若い刀に、じじいが少し話をしてやっただけさ。」

立ち止まらないで去っていく細い背中。少しためらったが、国広は気づいてしまったことを口にした。

「それから・・・あんたまさか、美和のこと・・・」

トントントンと三日月が立てていた足音がやむ。
刀剣男士とは、付喪神が宿った刀剣が主の霊力により人間の形を得たもの。地位的にはそこまで上ではないものの、正当な神である。その神が人を・・・・。

「ろくなことにはならないだろうな。人とは儚い生き物だ。それでも俺は・・・」

トントントン・・・と、足音が再び国広から去っていく。彼の姿が完全に暗闇へ消えた時、国広は小さく言葉を口にした。

「強いんだな、三日月宗近は・・・。自分の運命も、今後待ち構えてるであろう運命も、全て受け入れているというわけか・・・」

見上げた空には輪郭のはっきりした三日月が神々しく光りを放っている。そして、どこからか漂ってくる甘い花の香り。空気は冷たく澄んでいるが、もうすぐ春がやってくるのだろう。それが過ぎる頃には俺も、あんたに追いついていたいな・・・そう思いながら、国広はその場をあとにした。




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