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#44




お兄様・・・・。

(誰かが僕を呼んでいる。)

ねえ、お兄様、起きてください。

(銀の髪。なんて綺麗な髪なんだろう。君は一体、誰?)

お兄様、私を忘れたの?私はお兄様が守りたいって思ってくださった存在。

(僕に、そんな人がいるの?だって、僕が守りたいと思ったのはリリィだけ・・・)

そんなことありません。お兄様は、常に私のそばにいてくださいました。
お母様とお父様、お兄様と過ごした時間はとても幸せで・・・・。

(僕と・・・一緒に?それに、僕には父さんや母さんがいたの?)

ええ。お父様やお母様は私達を可愛がってくださいました。それなのに・・・・



ど うし てお兄 様は、私 達を、殺した の ?



「うっ・・・・!」
「ルシフェル卿っ!ルシフェル卿が目を覚ましたぞっ!」

ランスロット・クラブを覗き込んでいた救護班の男が、みんなに告げるように大きな声を上げた。ぼんやりした頭のままライが辺りを見回すと、場所はアヴァロンの格納庫だということが分かった。そばにアカシャやランスロット、トリスタン、フロートが破壊されたままのモルドレッドが置いてある。

(さっきのは・・・・夢?)

疑問に思いつつ、ハッとして瞳を押さえる。慌ててコクピットのガラスで自分の瞳を確認すると、ギアスのマークはもう出ていなかった。けれど、瞳から流れる血は止まってはいない。ライはゆっくりと座席を立ち上がろうとするが、救護班の男から止められた。

「ルシフェル卿!今は安静に――――――――」
「いや。僕は大丈夫だ。少し眩暈がしただけだったんだ。それよりも、眼帯、もらえるかな?」

にっこり笑うと、救護班の男は不安そうな顔つきで眼帯を彼に渡した。ライはそれを片目につけると、横においてあるアカシャのところまで歩いた。
アカシャのコクピットで、スザクが必死にリリィの名前を呼んでいる。ライもアカシャのコクピットまでよじ登り、スザクの後ろから中を覗いた。人の気配を感じたスザクは、勢いよく後ろを振り返った。

「ライ・・・。君・・・・」

驚いたような顔をするスザクに、ライは笑いかけた。うまく笑えているかどうか分からない。その時、アカシャのコクピットにいたリリィが、鈍い声を上げてうっすら目を開く。

リリィ!」
「スザク・・・?それに、ライも・・・・?」
「大丈夫?リリィ。」

心配そうにライも彼女の顔をじっと見つめる。「私・・・」と呟いてから、体を起こそうとする彼女を、すかさずスザクが手伝った。彼女の体を支えたまま、一緒にコクピットから格納庫の床へと下りてくる。ライもその後ろに続いた。

「シュナイゼル殿下が撤退命令を出したあと、リリィたちが戻ってこないから心配してたんだ。呼びかけても何の反応もなかったから、とりあえずアカシャとランスロット・クラブを回収した。ハッチをあけてみたら、2人とも気絶してたからびっくりして・・・」

スザクに寄りかかるリリィの体を支えながら、スザクがそう呟く。無意識にライが眼帯に手を添えた。
あの時、実際何が起こったか分からなかった。覚えてるのは目覚める前の不思議な夢だけ。銀の長い髪を持った少女が、にっこりと語りかけてくる。顔は分からない。分かったのは口元が緩められていることだけだった。自分を『お兄様』と呼ぶ少女。妹・・・なのか?
何かを思い出しかけ、でもそれはすぐに霧の中へと消えていった。思い出そうとすると頭痛がする。何も、思い出せなかった。

「スザク・・・私は大丈夫。それよりも、ライを救護室に連れて行ってあげて。」
「えっ・・・?」

スザクはリリィにそう言われ、視線をライへと移した。
片手を膝について、もう片方の手は眼帯へと伸ばされている。肩で息をしつつも、時折苦しそうな声を上げた。

「ライ・・・?」
「スザク、ライはずっと昔から記憶喪失なの。でも、何かを思い出しかけてる。」

静かにリリィはそう言って、スッっとスザクから離れた。彼女の足取りは先ほどとは違い、しっかりしている。ライの名前を呼んでから、リリィは苦しむライをしっかりと自分の腕で包みこんだ。

「ライ、もう大丈夫よ?」

リリィが優しくそう言うと、彼はリリィの耳に口を寄せてから小さく言った。

「ねぇリリィ。僕は・・・誰かを、殺したの?」

彼の囁きに、リリィは大きく目を開いた。そのままライは崩れ落ちる。ライの名前を呼ぶリリィの声と駆け寄ったスザクの声が、格納庫へとこだました。



* * *



僕は再び夢を見ていた。さっきの続き?いや、違う。今度は戦争の夢。でも、今みたいにナイトメアに乗ったりという戦争じゃなかった。みんな手に剣や弓矢、盾、槍などを持っている。そこで・・・土煙が舞う広い荒野で、僕は泣きながら大声を上げていた。行くんじゃない・・・と。しかし、僕の声は届いていないのか、武器を持った人々が一斉に駆けていく。男性も女性も、まだ小さい子供たちまでも。最後に女性と髪の綺麗な少女が僕の横を走り抜けたとき、世界が止まったように思えた。僕は力の限り叫んだ。

「行かないでくれっ!もう、十分だろっ!?お前は僕から、全てを奪ったんだ!もう、満足だろっ!」

「・・・ライ・・・!?しっかりするんだライ!」

体を揺さぶられて、ライはぱっちり目を開けた。最初に見えたのは、白い天井とスザクの顔。普段の無表情が、少しだけ心配した色を浮かべている。

「ここは・・・?」
「アヴァロンの救護室。君は格納庫で意識を失ったんだ。僕が君をここに連れてきた。」
「そう、か。リリィは?」

ライが辺りを見回すと、彼女の姿がなかった。スザクは声のトーンを下げて答える。

「さっきまで、君のそばにいたよ。君の手を握って・・・泣いてた。でもそのあと、ブリタニアに引き渡された紅蓮弐式のデヴァイサー・・・紅月カレンのとこに行ったよ。話を聞きに行くって言って。」

答えを聞いて、ライは天井を見つめた。リリィが自分の手を・・・。そう思うと、なぜか笑いが込み上げる。すぐにリリィの泣き顔が浮かんだ。彼女はいつだって心配する。
まだ戦争を知らなかった時、風邪をひいて高熱でうなされるライやロロを、泣きながらリリィは心配した。二人が治ってから、今度はリリィが高熱を出したことを思い出し、ライはクスリと笑ってしまう。じろりと、スザクの瞳が動いた。

「何がおかしいの?」
「いや。ごめん。昔リリィにたくさん心配をされたなって思って。今も彼女に心配されるなんて、僕もまだまだだな。」

笑ってスザクを見た。彼は怪訝な顔をしていたが、ライは気にしなかった。しばらくして、ため息をついたスザクが言葉を紡ぐ。

「ライ、すごくうなされてたけど、何か思い出したことがあったの?さっきリリィから、君が記憶喪失者だって聞かされて・・・」

彼の翡翠の瞳がライから外された。ライもアイスブルーの瞳をスザクから外す。

「思い・・・出したのかどうか分からない。今僕が見たのは夢だったのか、それとも僕自身の記憶だったのか、それすらはっきりしないんだ。」

自然と細くなる瞳。考えてみてもおかしい。あんな原始的な戦争、ライ自身の年齢で経験しているわけがない。ナイトメアや銃がない時代なんて・・・だいぶ昔だ。歴史として学ぶだけの範囲。そんな戦争に、参加しているはずがない。

「そう・・・なんだ。リリィがね、君が何か思い出してるかもしれないって言ってたから。それにしても、ライはリリィと付き合いが長いんだね。」

そう問われて、ライは笑って言葉を返す。何気ない質問だったが、スザクの言葉にはどこか棘が含まれているようだった。

「確かに長いね。もう10年くらいにはなるかも。僕、エリア7でリリィに・・・」

そこでライは目を大きく開いた。すぐにスザクの声がかかるが、彼の声は耳を通り抜けていく。動揺したようにアイスブルーの瞳はゆらゆらと動いた。

(エリア7で・・・リリィに・・・?)

その時の記憶は?
自分とリリィが出会ったのは・・・いつだ?
なんで、彼女と出会った?

それを考えても、思い出せなかった。すっぽりその時の記憶だけが抜けている。前後の記憶はあるのに・・・。

それは、なぜ?

ライはそう考えて、とある答えにたどり着いた。 抜け落ちた記憶。自分が持っている力と、その代償。

「そう・・・か。そういうこと、か。僕はずっと分からなかった。でも、今答えが分かったよ。ふふふ・・・あは、あはははは!」

ライは困惑するスザクを置いて、一人で納得する。
彼は眼帯をしている片目に触れてそのまま笑った。リリィと出会った時の記憶がないのは、ギアスを使ったから。彼女からルルーシュの記憶を書きかえた。リリィに与えたのは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとルルーシュ・ランペルージは別人という記憶。その代償にライのギアスは、彼からリリィとの出会いの記憶を蝕んだ。

消えた記憶。

彼にとっては、ずっと不思議だったのだ。どの記憶を失ったのか、彼自身分からなかったから。だけど、実際はこんな大事な記憶を失っていた。ライは片目を押さえた格好で、静かに呟く。

「そうか。お前は僕から、一番大切な記憶を持っていったわけか。」

そのままライは、ふさがれていないほうの瞳から、綺麗に涙を流した。溢れ出る涙を、彼は止めることができない。だってもう、あの記憶は戻っては来ないから。
彼女との、優しい記憶。
ライが最も大切にしていたはずの・・・・。


* * *


コツコツと靴音を響かせて、リリィは薄暗い廊下を歩いていた。ライをスザクに任せるという、申し訳ないことをしたが、リリィにとってもカレンに会うことは重要だった。幸いにも、食事を持っていくという口実ができたことだし・・・。そう思い、彼女は自分の手に視線を滑らせた。手には白いトレーを持っていて、パンやシチューなど軽い食料が乗っている。
廊下を通るたび、所々に立つブリタニア兵がきりっと敬礼していく。
リリィはそれを見て小さくため息をついた。

(いまだに慣れないな・・・。こういう堅苦しいの・・・。)

苦笑気味で進んで行くと、少し明るい所へと出てくる。すぐにブリタニア兵が驚きの声を上げた。

リリィ様っ!?なぜこのような場所に!?」

リリィ』という言葉を聞いて、ビクンと体を反応させカレンの瞳がすぐに持ち上がった。トレーを持ったリリィが、複雑な表情をしながら兵士と話している。

「紅月カレンさんに食事を持ってきたんです。檻をあけてくださいますか?私、カレンさんに話もあるので、中に入りたいのですが・・・。」
「そっ・・・それはいくらリリィ様の頼みでも、きくことは難しいかと。枢木卿にも誰一人入れるなと命令されておりますし・・・。」
「何かあった時の責任は、私がとります。」
「しかし、それでも・・・」

なかなか折れない兵士たちに、リリィは困った顔をする。そのあとため息をついて静かに言った。

「そうですか。やはりこう言わないと駄目なんですね。仕方ありません。紅月カレンの檻を開けなさい。これは皇族命令です。」

突然厳しい顔をして言葉を放ったリリィに、兵士たちは困惑しつつも従うしかなかった。階級を重んじる彼らにとって、皇族命令は絶対のものだから。

「い・・・イエス・ユア・ハイネスっ!」

慌てて檻を開けた兵士に、リリィは謝ったあと、にっこり笑顔で「ありがとう」と言葉を述べる。カレンはその光景を寝そべったまま見ていた。
トレーを持ったリリィが彼女に近づき、カレンのそばに腰をおろしてそれを置く。リリィは手のつけられていない別のトレーに視線を落としたあと、そっと呟いた。

「食事、とられていないんですね。」

カレンを心配しているような声だった。カレンは目をそらして何も言わない。ふとリリィは考えて、彼女の拘束服に触れた。その瞬間、カレンが鋭く叫んだ。

「触らないでよっ!」

しかしリリィはカレンに微笑みかけたあと、彼女の拘束を解く。体が自由になったカレンが、地面から体を起こす。兵士たちがそれを見て驚いた。

リリィ様っ、いけません!まだあなた様が中にいらっしゃるのに拘束を解くなんてっ!」
「でも、こうしないと食事ができないでしょう?私は大丈夫ですから・・・。」

そう告げたあと、腕をさするカレンにトレーを渡した。

「カレンさん、はい、どうぞ。温かいシチューを持ってきたんです。冷めないうちに食べてくださいね?」

最後にリリィは小首を傾げた。鋭い目つきで彼女を見ながら、カレンは差し出されたトレーを無意識に握った。本当はすごくお腹がすいていた。しかし強情を張って、少しの間拘束が解かれてもずっと何も食べなかったのだ。食事を口にしないカレンを見て、スザクは「好きにすればいい」と冷たい目を向け去っていった。
スプーンでシチューをすくってみる。美味しそうな湯気を上げた。一口すすると、シチューが体に染み渡っていく感覚を覚える。涙が出そうだった。

「おいしい・・・ですか?」

リリィがそう尋ねてきたので、カレンはぶっきらぼうに「まぁまぁ。」と答えた。本当は、すごく美味しく感じたのだけれど・・・。
そうして、彼女はリリィに見守られながら食事を終え、空になった容器とトレーを差し出す。笑ってそのトレーを受けとるリリィ。気付けばカレンは、そのまま立ち上がろうとするリリィに向かって声をかけていた。

「は・・・話があったんじゃなかったのよっ!?」

そう問われ、立ち止まる彼女。驚きに近い色を浮かべる赤い瞳が、カレンに向けられた。

「なんでそんなに驚くのよ。わっ・・・私はただ、アンタが話したそうにしてたから・・・っ」
「だってカレンさんは、私と話したくないみたいな感じの態度でしたから・・・」
「そっ・・・そんなこと、言ってないでしょ!私だって、誰かと話してたほうが気が紛れるというか・・・。でも、枢木とは絶対話したくないし。」

カレンが怒った顔をプイっと横に向けた。
リリィはふっと笑ってトレーを抱えたまま、再びカレンの向かい側に座り直した。

「で、私から何が聞きたいのよ?あ、黒の騎士団とかのことは絶対しゃべらないわよ!」

視線を合わせずにカレンが尋ねる。リリィも瞳を下に落とした。 ごくりとつばを飲んでから彼女は言う。

「カレンさんが今まで・・・8年前の戦争が終わってから日本人が、どう過ごしてきたのか。何を思ってきたのか。私はそれが聞きたい。」
「・・・は?そんなこと聞いて、どうするのよ?」

彼女はリリィに疑いの眼差しを向けたが、当の本人は膝を抱えて座っていた。早く話せというように、瞳でカレンを促したので、ため息をついてカレンは話し出した。

「私、実は日本人とブリタニア人のハーフなの。私にはお兄ちゃんがいてね・・・」

黙ったまま、リリィはそれを聞いていた。
時折、唇をかんだり、思いつめた表情をする彼女。一体何を考えているの?カレンは話しながらそう思うのだった。



ぼくは忘れられた遠い場所を 歩むべく定められている。
(ローベルト・ヴァルザー)


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