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2015.10.16  月の夜の、酒を呷ることいとをかし <<13:23



どうして自分は、こんな状況にいるんだろうか・・・?

右を見れば盃を傾ける宗近と目が合い、左を見れば笑顔の鶴丸と視線が合わさる。
2人の間に座らされた美奈は下戸で、全く酒が飲めないというのに、自分の持つ赤い盃には、少量酒が注がれている。

この時代の酒は、透明ではなく白い色をしているんだなぁ・・・と、それを眺める。
一見甘酒のように見えるそれだが、度数はかなりきつい。
それを涼しげな顔であおるこの二人は、人間とかけ離れている。
いや実際、2人は自分が顕現させた刀であり、人間とは違うのだが・・・・。

美奈殿、飲まないのですか?とても美味ですよ。」

「そうそう。せっかく綺麗なお月さんなんだし、美奈も月見酒しようぜ!」

「いえ、私は酒が飲めないので・・・・」

苦笑してみせ、静かに盃を置くと宗近が目を見開いた。

「そうですか。それは知らずにすみません・・・。
鶴丸殿があれよあれよという間に盃をあなたに渡したので、てっきり美奈殿もいける口かと・・・。」

「そういえば美奈は、酒がダメだったったけ?・・・あぁ、そっか思い出した。
去年の正月、光忠に酒飲まされて、一期に介抱されてたもんなぁ!あの時の一期は面白かった!」

ニヤニヤと笑う鶴丸の隣で、美奈は恥ずかしさのあまり顔を覆った。
去年の正月は散々だった。
酒に酔った勢いで、普段はしないような行動をしてしまった。
刀剣男士に甘えたり、抱きついたり・・・・。次の日は悲惨だった。
被害を受けた石切丸や一期一振が、恥ずかしさのあまり顔を合わせてくれなかったのだ。

「そんなことがあったのですか。」

「そっか。宗近は去年の正月はまだ、ここにいなかったもんな。
いいもんが見れたのに、残念だったなぁー。」

「見なくていいです。というか、知らなくていいです。その時の話なんて。」

顔を覆ったまま、ぶんぶんと頭をふる美奈
隣が鶴丸がクックッと笑っていた。
宗近は片手をあごに当てて考えこんだあと、静かに自分の盃を置く。
まだ入ったままの美奈の盃を取り、彼女の名前を呼んだ。

美奈殿。」

「はい・・・?」

静かに名前を呼ばれた美奈は、宗近のほうを向く。
彼は一口酒を口に含むと、突然彼女の顔を引き寄せ口付けし、酒を美奈の口の中へ流し込んだ。

「ふぐっ・・・・・!?」

思わず美奈は口に流し込まれた酒を飲み込む。口の端から、少し酒がこぼれた。
そのままねっとりと、宗近は彼女の舌をもてあそんだあと、唇を開放する。
横で鶴丸が驚きながら、宗近を見ていた。

「宗近、お前・・・・大胆なことをするやつだな。」

「こういう飲み方なら、美奈殿も飲んでくれるかと思ってだな。」

俺も美奈殿と口付けできて、一石二鳥だしな・・・と喜ぶ宗近。
突然の出来事についていけてなかった美奈だが、自分が何をされたのかようやく理解し、抗議の声を上げようとした。
しかし今度は、鶴丸のほうに体を引き寄せられ、またしても口付けされる。
口の中にさらさらした液体と、ねっとりとした生暖かい感触。

2人の間に挟まれたときから嫌な予感はしていたのだが、こんな運命を味わうことになろうとは・・・。

長い口付けが終わり、唇を開放される。
息が乱れているのは、美奈だけではなく鶴丸も同じ・・・。

「宗近。俺のほうが美奈との口付けが長かったぞ。酒も綺麗に飲ませたしな。
青は藍より出でて藍より青し・・・だ。」

「・・・なるほど。そうきたか。」

鶴丸を作った五条国永は、三日月宗近を作った三条宗近の弟子だという説がある。
つまり鶴丸は、三日月よりも上だと言いたいのだろうか?
美奈を挟んでぶつかる、二つの視線。
それどころではない、ぽかんとする美奈
美奈はこのあとも、2人においしくいただかれたとかそうでないとか。
真実は空に浮かぶ満月だけが知っているのだった・・・。




月の夜の、酒を呷ることいとをかし




* * *

「・・・・で、彼女に何を飲ませたって?お二人さん?」

頭痛を訴え、ふとんに横たわる美奈の前で、石切丸は腕組みをして2人に尋ねる。
宗近と鶴丸はお互いに顔を見合わせ、小さく答えた。
「酒を少々・・・」と。
ぴくんと、石切丸は眉を動かす。
うしろで彼女の介抱をしていた薬研の背筋に、ぞくりと寒気が走った。

「そうか。2人とも、私にそんなに清められたいようだね。」

静かに鞘から、本体である石切丸を抜く彼。
額には完全に青筋が立っており、彼が普段言う平静を保たねば・・・という言葉は消え去っていた。
鞘から刀を抜いた石切丸は、目をカッと開き大声で怒鳴った。

「この・・・・罰当たりめっ!!!!!」(真剣必殺)

「痛い痛い!石切丸っ、声が頭に響く・・・・!」

「あぁ、すまない美奈殿!」

美奈と石切丸のこのやりとりの間に、三日月と鶴はもう、いなくなっているのだった。

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