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2017.08.14  国広たちはそれぞれに思う <<03:44




『山姥切国広』

ぼんやりと、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。頭が霞がかっていて、ふわふわしている感覚。
男の声のようだった。どこか懐かしく、知っている声。誰の声なのか記憶を引っ張りだそうとしている最中で、再び声が聞こえた。

「山姥切国広」

今度はしっかりと声が聞こえた。先ほどの男の声ではなく、可愛らしい女の声。
国広はそっと目を開けた。目の前にいたのは、巫女姿をした少女だった。おそらく、この少女に呼ばれたのだろう。
彼を見てふわっと笑ったこの少女に、すごく親近感を覚える。この少女が、似ていたからなのだ・・・。



* * *



夏がもうすぐ終わろうとしている。
近くの木々ではひぐらしが鳴いており、遠くの空には秋の雲が所々に浮かんでいた。
しかし、まだまだ暑さも夏の雲も残っていた。
審神者である美和が立ち止まって遠くの雲を眺めている。そんな主の姿に気づき、先を歩いていた3振の刀は歩みを止めた。

「おい。何をしているんだ、美和。」

しびれを切らした山姥切国広が、少し鋭い口調で美和へと尋ねる。
山姥切国広の他には、堀川国広、山伏国広がその場にいた。二人も、少し不思議そうな顔をして美和を見ている。
ひぐらしの鳴く声に交じって、小さく呟きが聞こえた。

「ううん。なんでもないんだけどただ、国広もこんな気持ちだったのかなって。」

うまく話が見えなくて、3振は顔を見合わせる。静かに彼女の続きの言葉を待つと、彼女は空から視線を外し、その3振の刀を見ながら少し笑って言った。

「国広も、故郷の田舎を離れて違う場所に来た時、こんな気持ちだったのかなって思ってね。」
「こんな気持ち・・・?主さんは今、どんな気持ちなんですか?」

堀川国広が尋ねた。彼の言葉に「そうねぇ・・・」と小さく呟き、やはり遠くの雲を見つめながらふと、少し悲しそうな顔をする。

「なんだか、悲しいような感じ・・・かな。空は同じなのに、生まれ育った田舎とは、訛りも雰囲気も違う。私は国広とは同郷だからさ、なんとなく気持ちが分かっちゃうような感じがして・・・」

美和の細められた目があの人そのもので、国広たちは少しだけ泣きたくなったし教えたくなった。
彼らは知っているのだ。美和は国広の生まれ変わりそのもの。
美和が故郷を思う気持ちは、前世で彼が感じた気持ちとまったく同じなのだ。

「主殿。大丈夫ですぞ。我ら兄弟はいつだって、主殿と共にあるのだからな!」
「そうですよ!僕は土方歳三の脇差だったけど、今は主さんの脇差しです!だから片時も主さんのお側を離れませんから!ねっ、兄弟!」
「・・・ああ。俺はあんたの初期刀であり、近侍だ。ずっと側にいてやる。」

3振の言葉を聞いて、くしゃっと美和は笑った。

「ありがとう!山姥切国広、堀川国広、山伏国広!」

彼女の言葉に、3振は少しだけはにかんだ。国広が、自分たちに話しかけてくれているような気がしたからだった。

(我らを生み出した国広)
(僕たちはまた、あなたに会えて)
(とても嬉しく思う。俺たちはいつでも、あんたの・・・)

誇れるような刀でありたい・・・・。




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