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2017.09.16  IC#58 <<17:09






スザクはこのとき、捕虜となったカレンと向き合っていた。
全ての証拠が、ルルーシュは白だと言っている。けれども彼の心は、ゼロはルルーシュであると確信し始めていた。
ブリタニア皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
一年前、ブラックリベリオンを引き起こし、ゼロとして捕らえられた。皇帝により全ての記憶を消され、再びエリア11で生活をしている。もし彼が全ての記憶を取り戻しているとするならばおそらく、リリィとの幼い頃の記憶も・・・。
スザクは唇を噛んだ。リリィの心はきっと、自分からは離れない。そう確信していても、やはり不安だった。確かな証拠がほしい。ゼロが、ルルーシュであるという確かな・・・・。
スザクは茶色い箱を開いた。そこにおさめられたものを見て、カレンは目を大きく開く。
リフレイン・・・。懐かしい、昔に帰れる。けれども彼女は、その怖さを知っていた。カレンの母親は、リフレイン中毒者だから。
じりじり近づいてくるスザク。少しずつ後ろへ下がるカレン。彼女はその時、小さくすがるように名前を呼んだ。

「助けて・・・リリィ・・・っ。」

叫んだ名前は、カレンが心の底から信頼しているうちの一人の名前だった。
その頃リリィは、モルガンとの話を終え、一人エリア7にある墓地へと来ていた。
目の前には母の墓があった。でもそれは、飾りだけの墓。本当の墓はブリタニア本国にあり、彼女はそこで眠っている。沢山の花が一年中咲き乱れる、美しい庭園の中で。その庭園の名前は、『メメントモリ』。
リリィはその飾りだけの墓の前に座り、少し笑って話しかけた。

「お母様、私・・・おばあ様から本当のことを聞きました。お母様が死んだのは、妖精の力のせいだって。力を使い続ければ、寿命が短くなることも。それを知っていながら、お母様は力を使い続けた。それがお母様の運命の選択。ねぇ、私はどうすればいいの?おばあ様には好きにしなさいって言われたけれど、私には分からない。力を使うのが正しい選択なのか、力を使わないのが正しい選択なのか。こんなこと、お母様に聞いても困るよね・・・。」

リリィはそっと、墓に彫ってある字をなぞった。
その時、彼女に黒い影が落ちる。モルガンだとリリィは思った。でもそれは違った。彼女の近くにいたのは、優しい顔をしたユーサー・ペンドラゴン。モルガンの夫であり、リリィの祖父。

「やはりここにいたか。モルガンに力のことを聞いたんじゃろ?」
「おじい様・・・。」

リリィは立ち上がった。老いぼれてはいるものの、リリィより体格はよい。ぽんぽんと彼女の頭を撫でたユーサーも、クラエスの墓に視線を落す。

「クラエスはな、本当に心の優しい子だった。力のことを知った時、クラエスはなんて言ったと思う?彼女は拳を握ってこう言ったんじゃ。『よしっ!』っとな。あの時は私もモルガンもあっけにとられたわ。今のリリィみたいに、もっと困った顔をするかと思ったんじゃがな。でもあの子はそれから、他人のために力を使い始めた。最後のほうには私もモルガンも、クラエスの潔さに関心したほどだった。」

そこで一度、ユーサーは言葉を切る。彼が頭上に広がった大きな空を見上げたので、リリィも見上げる。青空に浮かんだ白い雲が、ゆったり風に乗り流れていく。ユーサーは雲を見ながら話を再開した。

「・・・リリィよ。お前が妖精の力を持つのには多分、理由があるのじゃ。それは世界を救うためかもしれない。もしくは友達を救うためかもしれないし、今の世界を滅ぼすためかもしれない。でもその理由を作るのは、お前の考え次第じゃ。世界を滅ぼしたくないと思うなら、使わなければよい。クラエスのように、他人を助けたいと思うのなら、力を使いなさい。しかし代償を忘れるんじゃないぞ。」

ポン・・・と、肩にユーサーの手が乗せられる。目の前のユーサーが笑った。目元が母であるクラエスとそっくりで・・・。リリィは一筋、涙を流した。まるで目の前にクラエスがいるようだった。

「分かったなら、もう行きなさい。お前を待ってる人がいる。」

ユーサーの手が離れた。リリィは涙を拭い、明るい声で言った。「はい、おじい様!」と。ちょうど、城の遣いがリリィを呼びに来る。アカシャの準備ができた……と。リリィは駆け出した。
途中で振り返り、彼女はユーサーに大きく手を振る。ユーサーはにっこり笑った。そのまま、彼女が広い大空へアカシャで飛び立つのを見届ける。黒い機体が白い雲に隠れた時、ユーサーは小さく呟く。

「大丈夫じゃよ、リリィ。お前なら、その力をうまく使うことができるはずじゃから。だってお前は私とモルガンの孫じゃからな。」

ユーサーがそう呟いてる別の場所で、モルガンも飛び立った黒い機体を見ながら、ユーサーと同じ言葉を紡いでいるのだった。



* * *



ギアス教団内では、C.C.が目に涙を浮かべながら脱出しようとしていた研究員を見ていた。

「すまない。これはお前達を放置した私の罪だ。だから、ギアスの系譜はここで終わらせる。それが、私とルルーシュの・・・」

爆発が起こり、研究員達はギアスに関するデータと共に散った。
そんなことは知らずに、V.V.は最下層にある黄昏の扉へと向かっていた。体はボロボロで、立って歩く力さえない。
V.V.の前に、威厳の座った男が姿を現す。彼はにっこり笑って、その姿に近づいていった。

「よく来てくれたね、シャルル。やっぱり最後に頼りになるのは兄弟だね。」

シャルルは口を開く。

「ルルーシュに刺客を送ったのは本当ですか?兄さん。」
「おかげで仕返しされちゃった。でも、面白いものも見れたよ。ルルーシュにくっついて現れたライ・ルシフェル。シャルルにも見せたかったな。歴史に名を残さなかった、僕たちのご先祖様・・・。それに、ルルーシュがゼロだってことも分かったよ。ナナリーも騙していたんだ、あいつは。」
「・・・兄さんはまた、嘘をついた。」

その時ルルーシュと一緒に最下層を探索していたライは、ぞくりと寒気を感じた。
自分の中で、ギアスが震える感覚。次に襲ってくる恐怖。何かが怖かった。その何かが、ライには分からない。
ランスロット・クラブが動きを止めるのを不審に思うルルーシュ。そこへ、生体反応を示す数値が画面に表示される。

「ここで生体反応・・・?」

近づいてみれば、コンクリートの割れ目から光が漏れている。ライはとっさに危険を感じて、すぐさまルルーシュへ叫んだ。

「ルルーシュっ!ダメだ!そこに近づくな!得たいの知れない何かがっ・・・!」

僕たちを襲おうとしているっ!

ライの言葉より早く、ルルーシュは神根島の時と同じ力に飲み込まれた。
V.V.が満足そうに笑みを浮かべている。ルルーシュが力に飲み込まれた直後、そのままライも同じように飲み込まれた。
二人が気付くと、そこに神殿が広がっていた。いつナイトメアから降りたのかも分からない。

「俺はいつ蜃気楼から?ライ、ここは・・・?」
「僕にも分からない。でもすごく、嫌な予感がするんだ。言いようもない恐怖が僕を襲う。この重苦しい空気。そしてこの重苦しい・・・・ギアス・・・。」

ライは足の力が抜け、どさりと片ひざをついた。それをルルーシュが助け起こす。

「大丈夫か、ライ?どうやらこれは、ホログラムとかじゃなさそうだ。」

ルルーシュがそう言った時だった。支えたライが、一瞬だけピクリと肩を震わせる。そこに現れた人物は・・・

「その通りだ!そしてナイトメアなど無粋なもの・・・アーカーシャの剣、このシステムの前にはない。わが息子、ルルーシュよ!時は来た。あがないの時がな・・・。」

ルルーシュは目の前に現れたシャルルに鋭い視線を送った。そのまま咆哮する。

「キサマ―――――――――っ!」
「ブ・・・ブリタニア、皇帝・・・。なぜあなたが・・・ギアスを?」

ライは瞳を揺らした。
彼はリリィのよき父であり、リリィの母のよき夫・・・であったはずなのに。どうして―――――――?




どんなそよ風にも身をささげ、ゆだねよ。
そよ風はおまえをいつくしみ、ゆさぶるであろう。
(リルケ)



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