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2017.09.16  IC#60 <<17:37






「わしはギアスの代わりに新しい力を手に入れた。ゆえにルルーシュ、教えてやってもいい。この世界の、まことの姿を。」

ブリタニア皇帝は呆然とするルルーシュの前できっぱり言った。
ギアスの代わりの新しい力・・・。ライは皇帝をにらみつける。リリィが知っているのは、ブリタニアを治める優しい父親の姿。今のブリタニア皇帝の姿を知ったら、彼女はどうするだろう?きっと・・・絶望するはずだ。だからこのことはリリィには話せない。彼女を悲しませることはできない。ブリタニア皇帝はそのことをよく分かっている。分かっているからこそ、彼はライを見ない。ただ、敵であるルルーシュだけを見ている。
皇帝がボタンを押すと、ルルーシュの姿だけが光に包まれた。

「ルルーシュっ!!!」

ライはとっさに彼へと手を伸ばす。今、彼と離れてはいけない!それを感じたのか、ルルーシュもライへと手を伸ばした。
二人の手がつながった瞬間、二人は不思議な空間へと飛ばされる。目の前には無数の仮面。

「ギアスとはなんだ!貴様は何をたくらんでいる!?」
「嘘にまみれた子供が、真実を求めるか。」

皇帝の言葉と同時に、彼の姿も消えていく。
ルルーシュに向けたはずの言葉だったのに、なぜかライの胸にその言葉が突き刺さる。
嘘にまみれているのは、ルルーシュだけじゃない。自分もだった。自分が誰なのか分からず、過去さえも思い出せない。ルシフェルという嘘の名前を名乗り、リリィやロロという嘘の兄弟がいる。

(嘘にまみれているのは、僕も同じだ・・・。)

liar。嘘つき。それが僕だ。

「・・・俺は手に入れた!軍隊を!部下を!領土を!」

ルルーシュの叫び声で、ライはハッとする。無数の仮面はルルーシュの姿へ変わっていた。彼は囲まれ、そしてなじられている。ルルーシュのにぎった拳は、怒りに震えていた。そこに対峙するように現れたブリタニア皇帝。

「嘘などつく必要はない。なぜなら、お前はわしで、わしはお前なんだ。そう。人はこの世界に一人しかいない。過去も未来も人類も歴史上たった一人。」
「たった、一人・・・?」

ルルーシュの代わりにライが眉をひそめた。彼の言葉にブリタニア皇帝であるシャルルが笑う。
ライは完全に分からなくなった。リリィの父親である、ブリタニア皇帝が。そして自分たちエンジェルズ・オブ・ロードが、今のブリタニアに仕える意味が・・・。



* * *



キスをしたあとのスザクは少しだけ震えていた。彼は壁に押し付けていたリリィの手首をそっと放す。

リリィは今でも、ルルーシュのことが好き?」

唐突な彼の質問に、リリィは瞳を伏せて首を振る。
確かにルルーシュは好き。けど、今ならば理解できる。スザクの言う、『好き』という意味。
子供の頃はルルーシュが好きで、いつかルルーシュのお嫁さんになるとばかり言っていた。けどその時の自分は、きちんと理解していなかった。『好き』という言葉には、2種類の意味があること。それを教えてくれたのは、目の前にいるスザク。

「私は今でもルルーシュが好き。でもねスザク、私の中でルルーシュは一番じゃない。ルルーシュは私に苦しい気持ちを与えない。ルルーシュが好きという気持ちは、暖かい気持ちだけを与えてくれる。だけどスザクが好きという気持ちは、暖かいだけじゃなく、時に苦しく、時に切ない。今なら理解できるよ。スザクの言う、『好き』って言葉の意味。スザクは私の中でただ一人の、大好きな人。」

リリィはうつむくスザクの頬に両手を当てて自分に顔を向けた。
スザクの瞳が少しだけ潤んでいる。彼はリリィの手に自分の手を重ねて言った。

「・・・ユフィを失って、僕は世界から色を失った。そんなときだった。僕の目の前に現れた君は、僕に色を与えてくれた。僕に教えてくれた。空は青くて、雲は白くて、太陽はオレンジ色。モノクロの世界で死ぬことだけを考えていた僕は、またこの世界で生きたいと思った。永遠の命があっても、君なしじゃ僕は死人同然だ。命が短くても、君と一緒に生きていきたい。命が尽きるまで、君と一緒に・・・。」
「私だって同じ。限りある命の中で、あなたと出会ったことが奇跡。命あるものは、必ず死を迎えるのが自然の摂理。その摂理の中で、私はずっと、スザクと一緒に・・・・。」

そのまま二人はそっと、優しくて甘い口付けをかわした。
人には必ずしも意味があって生まれてくる。誰か大切な人と出会うために。そして、この世界で何かを成し遂げるために。
だが同じ時間、違う場所でC.C.はルルーシュに言い放った。

「知っているくせに。生まれてくる意味や生きる理由など、ただの幻想だと。」

C.C.の願い。それは死ぬこと。彼女の永遠を終わらせること。
ギアスの果てに、能力者は力を授けた者の血を継ぐ。つまりそれは、C.C.を殺せる力を得るということ・・・。
彼女はこれまで、死ぬためだけに生きてきた。数多(あまた)の人間に力を与え、ギアスの果てへと辿りつける者を探し続けてきた。自分が死ぬために。

「死ぬだけの人生なんて悲しすぎる!」
「死なない積み重ねを、人生とは言わない。それはただの経験だ。お前に生きる理由があるのなら、私を殺せ。そうすれば、シャルルと同等の・・・戦う力を得る。」

ルルーシュは動かなかった。彼女を、殺せるわけがない。C.C.の唇が動いた。「さようなら、ルルーシュ。お前は優しすぎる。」と短く。そのままルルーシュは、C.C.が動かした仕掛けに包まれ、下へと落ちていった。
ルルーシュが消え、シャルルとC.C.とライだけが残ったその空間。C.C.の黄金の瞳が、今度はライを捉える。

「ライ・ルシフェル。お前は自分が誰なのか分からないと言った。だがお前は、すでにその答えを知っている。失っているんじゃない。心の奥深くに、記憶をしまっているだけだ。何十にも鍵をかけ、思い出さないようにしている。それはお前にとって、おぞましい記憶ばかりだから。その扉を開ければきっと、そこにお前の求めている答えがある。お前自身のことについても、ギアスのことについてもな。」

C.C.はそう言いながら、手元の装置を操作する。

「答えは・・・僕の中にある?」
「そうだ。もしもお前がお前自身のことを思い出す恐怖に勝てたのなら、お前は全部思い出すだろう。ギアスのことも、お前の存在も、お前の罪も。」

C.C.の言葉が遠くなっていく。空間に溶けていくような気持ちの悪い感覚。
目の前がぼやけた。ブリタニア皇帝とC.C.、二人の姿が消えていく。そして自分に訪れたのは、ただ真っ白い世界。



* * *



サイタマゲットーの再開発についての会議を終えたナナリーは、ローマイヤを呼び止めた。
イレブンに不利益なことはないのかという彼女の質問に、ローマイヤは「不利益はない」ときっぱり答えた。リリィの見守る横で、ナナリーは手を握る。もう一度同じ質問をすると、ローマイヤの手はかすかに震えた。その瞬間、ナナリーはローマイヤが嘘をついていることを悟る。

「もう一度この計画を最初から見直してください。イレブンの皆さんに不利益にならないように。」
「ナナリー総督。実務は私ども専門家にお任せください。」

ローマイヤの言葉に、リリィが彼女をにらみつけた。その言葉はまるで、ナナリーはお飾りの総督でよいのだと言っているように聞こえる。
リリィが口を開きかけた瞬間、ナナリーは顔をしかめ、きっぱりと言い放った。

「ミス・ローマイヤ。そ、総督は・・・わたくしです!」

一方、スザクはリリィと別れたその足で、アッシュフォード学園へと向かった。ルルーシュがゼロだという確証を得るために。
だがルルーシュはどこを探してもいなかった。機密情報局さえ、ルルーシュやヴィレッタ、ロロの所在を教えず異常なしの一点張り。スザクはその時点で気づいた。機密情報局自体が、ルルーシュの手の中へ落ちているということに。それが分かっただけでも十分だった。ルルーシュはやはり・・・ゼロ。
何もかもを思い出している。きっと、リリィのことも。だから彼はおそらくリリィを取り戻しにくる。
その頃、教団のアジトではロロが呆然と立っていた。
ルルーシュがいない。そしてライも・・・。ルルーシュやライ共々、蜃気楼もランスロット・クラブも消えてしまった。

(ルルーシュと、ライ兄さんが・・・いない?)

ロロは恐怖に駆られる。もしもこのまま、二人が戻らなかったら?





臆病よ、おまえもまだいるかい?嘘よ、おまえも?
(ローベルト・ヴァルザー)



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