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桂樹

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聚楽第

Posted by 桂樹 on   0 


聚楽第への通路が封鎖されて1ヶ月がたっていた。
監査官として第2部隊に同行していた山姥切長義も、新しい刀として馴染み始めた頃だった。
三日月宗近は秋の日差しの中、縁側に座り茶をすする。真っ赤に色づいた庭の紅葉の葉が、音もなくハラハラと散る。
ただ、その場は静寂だった。ふと、昔聞いた百人一首の一つを思い出す。

(そういえば、あったな。紅葉の歌。確か・・・)

頭に浮かんだその歌を、小さく呟く。そうでもしてないと、あの時のことを考えてしまいそうで仕方なかった。
あのこととは、聚楽第での出来事。できれば今は、考えたくもないことであった。
しかし・・・・。

「三日月宗近。こんな所でまた茶を飲んでいるのか?今日は内番も休みか?」

声をかけたのは、聚楽第を共にした、山姥切長義であった。できれば今は、会いたくなかったのだが・・・。

「山姥切の。お主はこれから内番へ向かうのか?」
「そうだ。全く・・・。この山姥切の本歌が、どうして畑仕事なんか・・・。しかも今日は偽物君とだよ。」

不服そうに顔をしかめた長義が、小さくため息をついた。
会話は一旦そこで途切れたが、しばらく時を置いたのち、再び長義が口を開く。
彼の言葉は唐突だった。

「・・・・・三日月宗近。お前はもしかして、あの聚楽第のことを考えているのではないな?」
「・・・・。」

宗近は何も言葉が返せなかった。知らぬふりをして茶を飲んでみたものの、長義は宗近が聚楽第のことを考えていたのだと分かり、先ほどとは違うため息をついた。呆れたため息だった。

「三日月宗近。いいか、あれは違う次元の世界の話だ。あそこは歴史改変されてしまった、こことは違う平行世界の話だ。あの世界の本丸は、確かにこの本丸とそっくりだった。敵も、あの時と同じ第2部隊の刀剣男士だった。だた、それだけの話だ。この世界とは違う世界の話。一体今更何を考える必要があるんだ?」

長義は持っていたスコップを地面に刺した。スコっという、土とスコップが擦れた音がする。
長い時間をかけて、宗近はただ一言、「そうだな・・・」とだけ言った。
彼の言葉を聞いた長義は、どこかまだ不満そうであったが、そのままスコップを地面から抜いて立ち去った。
宗近はただ、静かに茶を飲みながら彼の後ろ姿を見送る。再び静寂が訪れた。

「今更何を考える必要がある?・・・か。」

宗近は持っていた湯飲みに視線を落とした。自分の顔が茶に映る。
あの聚楽第は、確かにこの本丸と同じだった。同じ土地。同じ本丸。同じ仲間。そしてきっと・・・同じ審神者。
あの世界では審神者に出会わなかった。長義はあの時、この世界の審神者は死んだと言った。それはおそらく違うと、宗近は今でもそう思っている。
聚楽第で敵として現れた三日月宗近を切った時に、それがはっきり分かった。
あそこの世界の審神者は、あの三日月宗近が隠してしまったのだ。それはあれが、自分の主である審神者を好いていたから。
そして自分も・・・・。

「もし、あの世界がこの世界の鏡のようなものなら、俺ももしかしたら美和を・・・」

あの時、聚楽第で死んでいった三日月宗近の顔を思い浮かべて、宗近はゾワっと寒気がした。
あってはならないことだ。審神者を隠すなど・・・。しかしもし、この世界が聚楽第のようになってしまったら、俺は自分の衝動を抑えられるのだろうか・・・。
不安な気持ちに押しつぶされそうになりながら、宗近は縁側から立ち上がった。
その場を後にする彼を、たまたまそこに戻ってきた長義は目撃する。そのまま瞳を少し細くしながら呟いた。

「・・・聚楽第でアレを斬った時に、アレの霊気に当てられてなければいいんだがな・・・・・。」

長義は三日月宗近自身が、この本丸の三日月宗近のまま過ごせるよう、願うばかりだった。



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