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6年目の今日。


美和、少し話があるんだが、入っていいだろうか?」

ある夜のことだった。俺は少し、ためらいがちにも主である美和の部屋の前で声をかける。
柔らかい声色でかけられた「どうぞ」という言葉を聞き、一息吸って障子を開けた。
美和は四角い箱(ぱそこんと言うらしい)を前に、何か書類を作っていた。
難しい案件なのか、いつもニコニコしているはずの彼女の眉間にシワが寄っていた。
美和は画面を見つめたまま言った。「どうしたの?」と。
この時まで俺は、言うか言わないかを迷っていた。だが、明日でこの本丸ができて5年。俺が美和と出会って、もう5年なのだ。恥をしのんで、兄弟たちにまで相談した案件だ。軽く拳を握って、俺は口を開いた。

美和、明日でこの本丸ができて5年になる。俺と美和が会ったのも、明日で5年・・・。」

美和のキーボードを打つ手が止まる。彼女は思い出したように目を見開いたあと、懐かしさにそのまま目を細めた。
「もう、そんなに経つんだね。国広とも長い付き合いになったね」と言いながら、おそらく俺と出会った頃を思い出している様子だった。
あの頃は本当に俺は卑屈で、どうして俺を初期刀に選んだのか、他の刀が選ばれればよかったのにと、そんなことばっかり考えていた。
でも今は、美和が俺を選んでくれてよかったと思える。
彼女の真剣な眼差しも、時々顔をくしゃっとさせて笑うところも、悔しくて俺の前だけで泣くところも、ずっとそばで見てきた。
だから美和には伝えたい。

美和、俺を初期刀に選んでくれて、ありがとう・・・。」

照れ臭くて、耳まで真っ赤になる。今はもう、顔を隠せる布はない。でも、布なんかなくたって、俺はもう大丈夫だ。
俺の言葉に美和は顔をくしゃっとさせて笑った。「こっちこそ、いつもそばにいてくれてありがとう」と、美和は言った。
この笑顔が、俺は好きだ。彼女の笑顔を見た途端、俺の緊張が解ける。このまま・・・このまま言ってしまおう。兄弟たちとも約束した。約束は守らねば。それは彼女の教えでもある、

「あ、美和。それ、と・・・俺は・・・ずっと美和が好きだった。どうしようもないくらいに・・・。付喪神になんて好かれても困るかもしれないが、俺は・・・!」

本気だ・・・!と続けようとした瞬間、彼女がパソコンから離れ、俺の胸に飛び込んでくる。
その言葉、ずっと待ってたんだよ・・・と呟いて、彼女は俺の胸に顔をうずめた。
ふわりと香る、美和の香り。これが夢じゃないんだと感じられるのは、彼女のぬくもりと、優しい抱擁があったから。
そのまま時計は、午前0時を指し始める。
6年目の今日、俺たちは新しい関係を始めることになった。


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