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#69



リリィはこっそり、気づかれないよう息を潜めながら2人の会話を聞く。

「よく来られたね・・・。」

鋭い眼差しでルルーシュを見ているスザクは、リリィと出会った時のような顔をしていた。誰も寄せ付けない、笑うことさえ忘れてしまったような、昔のスザク。
対するルルーシュは、リリィが学園で知るルルーシュとはかなり違っていた。運動音痴で、生徒会のみんなに対していつもため息ばかりついていた彼とは全くの別人。

「状況に応じて、31のルートを設定してある。特にブリタニアは皇族関連のルートが緩いからな。」
「違うよルルーシュ。よく僕の前に顔が出せるな。そういう意味だ。約束だから?今更君の約束が信じられるわけないだろ?」
「だったら、なぜお前も1人でここに来たんだ?お前だって・・・」
「これ以上、嘘をつきたくないから。ナナリーに嘘をついた。君と同じように。・・・最低だ。何が友達だ。ずっと僕を裏切っていたくせに!僕だけじゃない。生徒会のみんな、ナナリー、それに・・・ユフィだって!!!」

スザクはルルーシュに、ユフィの騎士だった時のバッチを突きつける。ルルーシュはうろたえた。その話を密かに聞いていたリリィは、どうにも話の内容が見えなかった。ただ分かったのは、ルルーシュがただの学生だけではないことだけ。
ルルーシュがシャーリーにギアスをかけるあの映像が、リリィの中でフラッシュバックする。

(あのこととスザクが今言っていることは、何か関係があるの?)

リリィは再び2人の会話に耳を傾けた。

「確かめたい。君がユフィにギアスをかけたのか。日本人を虐殺しろと。」
「・・・ああ。俺が命じた。」
「なぜそんなギアスを・・・。答えろ!!」
「日本人を決起させるためだ。行政特区日本が成立すれば、黒の騎士団は崩壊していた。」
「シャーリーが死んだのは?」
「俺のせいだ。」

ルルーシュの答えを聞いて、スザクは言い放つ。人間じゃない。ルルーシュにとってユフィもシャーリーも、野望のための駒にすぎない・・・と。そんな彼の言葉を受け止めたルルーシュは自分の罪を認める。だが彼は、ナナリーは関係ないと言った。
2人の会話に、リリィは大きく目を開く。
今、なんて言った?ナナリーと言った?
ルルーシュという名前の少年が、ナナリーの名前を口にする。それはつまり・・・。

「る、る、さま・・・?」

声を震わせ、小さく名前を口に出す。
違う。そんなわけはない。ルルーシュは死んだはずだ。今目の前にいるのは、同じクラスメイトの少年・・・だったはず?
違う?それがそもそもの間違い?私は何か、大事なことを忘れている?
頭の中で、ライのギアスのマークがちらついた。たまらなくなり、頭を抱えてうずくまる。何かを思い出そうとした時、スザクが叫んだ。

「お前の悪意で、世界を救ってみせろ!今すぐに!お前は奇跡を起こす男、ゼロなんだろ!?」

その言葉を聞いて、リリィの中に浮かんでいたギアスの模様がパンっと音を立てて弾けた。同時に、頭の中にかかっていたモヤのようなものが、一気に晴れわたる。そうして彼女は、1つの真実にたどり着いた。

(ルル様が、ゼロ?では朱禁城で「ありがとう」と言ってくれたのは・・・ルル様だった?それ以前に私はルル様に1度会っている。どこで?)

リリィは目を閉じて、自分の記憶を辿る。さっきと違い頭がスッキリしていて、すぐにいつのことだったか思い出せた。

(そう・・・。アッシュフォード学園の中庭で・・・!あの時私は確か・・・)

無我夢中で逃げた。ルルーシュが生きていたことを知って、ショックを受けた。ルルーシュやナナリーの仇に、罪のない日本人をたくさん殺してしまったことに気づいたから・・・。あの時リリィの心は壊れてしまった。
そのことを思い出したリリィはガタガタと震え出す。自分の体を自分で抱きしめてみるけれど、体の震えは止まらない。

(わたしは・・・もしかして・・・・わたしは・・・!!!)

「い・・・いやぁぁぁぁぁぁぁーーー!」

リリィの悲鳴に驚いて、神社のカラスたちが一斉に飛び立つ。

「え・・・・。今の声・・・リリィ・・・?」
リリィ・・・だと?」

スザクとルルーシュが彼女の悲鳴に気付いた時、キンっと突然時間が止まった。2人の驚く顔。木から飛び立ったままのカラス。風の音も他の音もしなかった。そんな無音の世界にただ1人、しゃがみこんで体を震わせるリリィに柔らかな声がかかる。

リリィ。大丈夫ですよ。さあ、顔を上げなさい。」

聞いたことのある声にリリィがゆっくりと顔を上げる。次の瞬間、今までいた現実が消え去って、現れたのはキラキラした世界。その中で彼女の母・・・クラエスが、昔のように優雅に笑っていた。眩しいくらいの世界にリリィは目を細める。

「さあ。リリィ、いらっしゃい。何も怖くないわ。大きくなったあなたを見れるのは、とっても嬉しいことね。お母様にその顔をよく見せてちょうだい。」

大きく両手を開いたクラエスに、リリィは迷わず飛び込んで行った。綺麗な世界に、ただリリィの涙がこぼれて流れていった。


* * *


シュナイゼルは席を外し、別室でとある場所に電話をかける。数コールしたあと、相手が電話に出た。
シルバーの髪に、くりっとした目。ぷっくりした唇の持ち主は、シュナイゼルの顔を見たとたん、嫌悪感を露骨に見せた。

「久しぶりだね、リリーナ。こうして直接話をするのは何十年ぶりだろうか。まずはエリア7の総督就任、おめでとう。」

そう伝えれば、リリーナは苦虫を潰したような顔をして答える。

「別にあなたとブリタニアのためじゃないわ。可愛い妹のリリィと、お母様のためよ。それに、あなたにこのエリア7を好き勝手されたくないの。私が総督になったのは、ただそれだけのことよ。」
「はははは・・・。君は私に対して手厳しいな。妹思いの兄に対して、たまには優しい言葉をかけてくれても良いんじゃないのかな?兄として、私は寂しいよ。」

シュナイゼルが首をすくめて困った顔をする。彼はいつもこんな調子だ。誰にも本心は見せない。常に本当の自分を偽り、本心を隠す。そんな彼の性格が、まっすぐに思いを伝えるタイプのリリーナは大っ嫌いだった。

「・・・ねぇ。私と世間話するためにわざわざ連絡してきたわけじゃないんでしょ?さっさと用件を言いなさいよ!」

リリーナの強い口調に、シュナイゼルはクスっと笑い、いつもと同じように冷静に言葉を紡ぐ。

「リリーナ、少し君にお願いがあるんだ。エリア7でしばらく、ナイトメアを2機ほど預かってもらえないかな?そちらには腕のいい整備士が何人もいるだろう?少し世話してもらえないかな?もちろん、断ってくれてもいいんだが・・・その代償は払ってもらうよ。」

断ることを良しとしない、厳しい言葉。遠回しに「断るな」・・・そう言っている。あぁ、やっぱりコイツ嫌いだ・・・と、リリーナはすぐにそう思う。人の良さそうな優しい笑顔の裏側で、シュナイゼルは何かを考えているのだった。




祈れない。祈りたいと願う心は意思に劣らず強くとも
意思よりさらに強い罪が意思をくじく。
(シェイクスピア)



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