FC2ブログ

#71


クラエスのキオクの間から戻ってきたリリィは、2人のもとにゆっくり歩み寄る。突然現れたリリィを前に、スザクもルルーシュも驚いていた。ルルーシュは瞳を揺らしながら、小さく彼女の名前を呟く。彼にとっては、すごく会いたかった人物だ。彼女は先程の会話を聞いて、ルルーシュがゼロであるということを知ってしまった。
リリィはしばらくルルーシュを見ていたが、ふと涙を浮かべしゃがみこむ。彼女はルルーシュの頬に触れたあと、ギュッと抱きついた。

「ルル様、生きててよかった・・・!私、あなたを迎えに日本まで行ったのよ。ブリタニアでずっと待ってるって言ってくれたのに、あなたは日本へ行ってしまった。たくさん辛い思いをしたけど、もう一度あなたに会えた。ルル様、おかえりなさい!そして、朱禁城の時のこと、ありがとう!ゼロ・・・。」

ルルーシュの目が大きく開く。
同時にスザクがリリィに尋ねた。

リリィ、ルルーシュが生きていること、思い出したの?あの記憶は、ライが消したはずなのに・・・。」
「・・・やっぱり私の記憶を消したの、ライだったのね。私の中のギアスが消えて、あの時のことを思い出したの。あの・・・ごめんね。2人の会話、立ち聞きしちゃった。2人とも、友達なのに敵同士で辛かったよね。」

リリィはルルーシュの体を放した。スザクとリリィの会話を聞き、ルルーシュは彼女がギアスについて知っていることに気づいた。それは多分、いつも彼女のそばにいるライがギアスを持っているからだろう。ルルーシュはそこまで推測していたが、念のため尋ねてみる。

リリィはギアスのことを知っているのか?」
「うん・・・。」

リリィは何か言いたそうではあったが、返事はそれだけだった。ルルーシュはとっさに思う。

(返事の仕方を聞く限り、ライと俺が接触していたことまでは知らないのだろうな。ライもうまく隠したものだな・・・しかし・・・)

ルルーシュが地面に視線を落とす。
リリィには知られたくないことばかりだった。ゼロであることも、ギアスを持っていることも。スザクを裏切ったことも。
ルルーシュとリリィ。黒の騎士団のトップと、ブリタニア皇族。どうやっても敵同士だ。でも、いずれはリリィに知られてしまうことだっただろう。今でよかったのかもしれない。もう彼女に、嘘をつかなくてよくなった・・・。

「ルル様がギアスを持ってることは知らなかった。ゼロだったこともびっくりしたけど・・・でもね、スザク。お願いがあるの。」

そこで彼女は立ち上がり、まっすぐスザクを見て言った。

「ルル様を許さなくてもいい。ルル様がやったことは、許されないことばかり。でも・・・ルル様はちゃんと、それは分かってると思う。こうなってしまったのは、私にも原因があると思う。あの時日本を潰さなければと、今でも後悔するわ。」

リリィの言葉を黙って聞いていたスザクだったが、彼女の言葉を受けてルルーシュに向き直る。冷たい目は相変わらずだったが、声色は少し柔らかかった。スザクは言った。

「ルルーシュ。君の嘘を償う方法はひとつ。その嘘を本当にしてしまえばいい。君は正義の味方だと嘘をついた。だったら、本当に正義の味方になってみろ。ついた嘘には、最後まで・・・。」
「しかし、どうすれば・・・」

ルルーシュが力なく呟く。今度は、ニコッと笑ったリリィが言った。

「ルル様、この戦争を終わらせましょう?ルル様にしか・・・ゼロにしかできないことよ。」

リリィがしゃかんで、ルルーシュに手を差し出す。スザクもまた、リリィの横で片膝をつき、ルルーシュに手を差し出して言う。

「世界が平和に、みんなが幸せになるやり方で。そうすればナナリーを・・・」
「助けて、くれるのか?」
「ナナリーのために、そして・・・リリィの願いのためにも、もう一度君と・・・」
「・・・!!!すまない。お前たちとなら、どんなことでも・・・」

ルルーシュがスザクとリリィの双方に手を伸ばしかけた時、1つの銃弾が彼らの間に割って入る。
3人が周りを見回すと、すでに数機のナイトメアに取り囲まれていた。

「ご無事ですか?枢木卿。リリィ皇女殿下も。」

呆然とするスザクとリリィの前に、ブリタニアの兵士が彼らを守るよう立ち塞がり、ルルーシュに銃が向けられる。まもなく彼は、兵士によって捕縛された。状況がいまいち飲み込めてないスザクの後ろから、シュナイゼルの部下であるカノンが現れた。

「立派な功績を上げられたわね、枢木卿。リリィ様も。あなたのお兄様もお喜びになることでしょう。これで戦争は終わったわ。」
「待って・・・!カノン、どうしてあなたがここに!?」

シュナイゼルの側近、カノン・マルディーニはリリィの質問には答えず、テキパキ指示していく。彼が質問に答えたのは、
ルルーシュが連行されてからだった。スザクとリリィはカノンから全てを聞く。
シュナイゼルは、スザクとゼロがただならぬ関係だと気付いた上でスザクにカノンを付けていた。スザクの先を辿ればゼロがいる・・・そう言って。

その頃ルルーシュは、自分の兄であるシュナイゼルと対峙していた。シュナイゼルは皇族殺しが実の弟だったことに驚いている様子だったが、その口調は全く驚いてないように聞こえた。彼は言う。

「ルルーシュ、皇帝陛下には私から取りなそう。もちろん、お咎めなしとはいかないが、命だけは救ってやれるかもしれない。せっかくルルーシュに会えたリリィのことを思うと、ぜひともそうしてあげたい。それにルルーシュ、私は今でも君の兄のつもりだよ?悪いようにはしない。私を信じてくれないか?」

(リリィの名前をちらつかせば、俺を攻略できると思っているのか?兄上は・・・。それに・・・)

「信じる・・・?残念ながら信じることはやめたのです。友情は裏切られたから・・・」

ルルーシュは襟に指をかけた。それがあらかじめ仕込んでおいた、唯一の脱出手段だとは誰が気づいただろうか。
あらかじめギアスをかけられていたギルフォードのギアスがすぐさま発動する。彼はルルーシュをコーネリアだと思い込み、同じ仲間のナイトメアを破壊し、ルルーシュを乗せて飛び去っていく。
一瞬の出来事にリリィはついていけず、スザクの咆哮を聞きながら、ずっとルルーシュのことを見ていた。ルルーシュはとても悲しい目をしていた・・・。分かり合えると思っていたはずなのに、運命はそれを許してはくれないのか・・・。

政庁に戻ってからスザクは、シュナイゼルの元に連れてこられた。リリィは別室へと連れて行かれてしまったため、その部屋にはスザク・シュナイゼル・カノンの3人しかいなかった。
スザクはシュナイゼルに問われた。君は誰だ?と。
日本人?
名誉ブリタニア人?
ナイトオブセブン?
枢木ゲンブ首相の息子?
ルルーシュの友達?
ユーフェミアの騎士?
それとも・・・リリィの恋人?
いくつもの顔があり、その全てに当てはまった。

「君が話してくれなければ、私たちはアンフェアな戦いに身を投じなければならない。君は、どこまで悲しみの連鎖を続けるつもりなんだい?リリィだって、戦いのない平和な世界を望んでいる。そういう世界は、もうすぐそこに・・・。リリィの願いを、叶えてやってくれないかい?君だって早く、戦いのない世界でリリィと共に暮らしたいだろう?」

シュナイゼルのその言葉に、スザクが瞳を揺らした。もっと早くシュナイゼルに話していれば、リリィがルルーシュに会うこともなく、彼のことを思い出すこともなかったのだろうか・・・?


* * *


ルルーシュが起動したゲフィオンディスターバーの影響で、トウキョウ租界が止まった。それを期に、ルルーシュの作戦が開始される。ずっと息を潜めていたイカルガは浮上し、黒の騎士団本体はゼロが待つトウキョウ租界へ向かった。
シュナイゼルもゼロがいる場所へと出撃する。彼はクロヴィスが暗殺された時から、何かがおかしいと感じていた。スザクの話を元に考えれば、全てにおいて納得もいくし、理解もした。ジュナイゼルは人知れず微笑んだ。

(今、すべてのカードは我が手の内に・・・。)

彼が出撃した頃、電気の消えた一室で、リリィはトウキョウ租界の異変に気づく。慌ただしい部屋の外。「黒の騎士団が・・・」と聞こえてくる声に、ゼロが・・・ルルーシュが来たんだと理解した。彼女は部屋に置いてあった懐中電灯を持って、ナイトメア格納庫に走る。そこで彼女は絶句した。

(私のナイトメアが・・・アカシャがない・・・!?)

立ち尽くすその先に、いつもならあるはずのランスロットクラブとアカシャがなかった。
どうしていいか分からないでいると、背後でふと聞き覚えのある声がした。

リリィ・・・!探してたんだよ!僕たちのナイトメアが・・・シュナイゼル殿下に、持っていかれたんだ。」
「ライ!!お兄様が持って行ったって・・・一体どこに!?どうして!?」

リリィはライに詰め寄る。ライも悔しそうな表情を滲ませて答えた。

「エリア7に・・・送られた。まるでこの戦いに僕たちが参加するなと言われてるようだ。シュナイゼル殿下は一体何をお考えなんだ・・・。今黒の騎士団が続々とこちらに向かっているというのに!藤堂さんたちは、絶対に僕たちが止めたいのに!くそっ!」

ライのイラついたような言葉に、リリィは小さく呟いた。

「・・・私が、ゼロの正体を知ってしまったからだわ。シュナイゼルお兄様はきっと・・・ルル様を殺すおつもりなんだわ!!」
「なん、だって・・・?」

ライの瞳が、動揺の色に染まる。
一方その頃、スザクはアヴァロン内で1人迷っていた。目の前にはフレイヤが積まれたランスロット。

(乗るしかないのか・・・?フレイヤが積まれたランスロットに。フレイヤを、ルルーシュに・・・。)

ブリタニアがフレイヤなんて開発しなければ・・・かつてそう言ったリリィの顔がちらついた。


わが神、わが神、なんぞ我を捨てたもうや。
いかなければ遠く離れて我を救わず、わが欺きの声を聞きたまわざるか。
(詩篇22の1)

                           

スポンサーサイト



コメント 0件

コメントはまだありません