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#72


シュナイゼルが「預かって欲しい」と言ったものがエリア7に届いた。大きいコンテナが2つ、輸送機から出てくる。中身はナイトメアなはずだ。シュナイゼルに整備をして欲しいと言われたが、リリーナは最初からそのつもりがなかった。

「リリーナ様、本当に整備しなくていいんですか?あとでシュナイゼル殿下から何かお咎めが来るとか・・・ないですよね?」
「あの、一応中身だけは確認したほうがいいんじゃないですか?さすがにこのまま放置っていうのはちょっと・・・」
「そうですよぅ。もしかしたらあの中に入ってるのは、エリア7で開発したナイトメアかもしれないですし!そうなると、本国の整備士に触られるのもイヤというか・・・」

彼女の両脇から3人の男女が口を挟んでくる。整備士のアレン、ジャグリーン、ダナエの3人だった。
彼らの助言にリリーナはそっぽを向くが、一応・・・ということでコンテナの開封を命じる。
開かれたコンテナの中を覗き込んで、4人は絶句した。そこにはリリィとライが乗っているナイトメアが納められていたからだ。

「これ・・・アカシャとランスロット・クラブじゃないの!ちょっと待って!なんでこんなものが送られてくるのよ!?」
「え。ほんとにエリア7で開発したナイトメアが入ってるなんて・・・。」

リリーナの絶叫のあとに表情を引きつらせたダナエが、黒縁メガネを押し上げてそう言うのであった。
この戦いの中で途方に暮れるリリィたちが想像できて、リリーナはギリっと唇を噛みしめる。心の奥底では、この戦いで可愛い妹が人を殺すマシーンに乗らなくてもいいのかと思ってしまってはいるのだが・・・。

(でも何のために、シュナイゼルはわざわざエリア7に2人のナイトメアを?本当に整備のため?)

考えこんでるリリーナの横で、少し幼い顔のアレンが2つのナイトメアを見上げながら何気なく言う。

「そういえばさ、ちょっと前に本国の研究チームがフレイヤの実験に成功したんだってね。あんなにモルガン様やリリィ様が反対したのに作っちゃうんだもん。確かにね、研究者兼技術者の僕からしたらフレイヤの研究はしてみたかったよ。でも戦争に使われるのはねぇ・・・」
「そのフレイヤの研究を押し進めたのは、リリーナ様の大っ嫌いなシュナイゼル殿下らしいね!あの人、この戦いでまさかフレイヤを使う気かしら?」
「えー?それはないんじゃない?だってトウキョウ租界でフレイヤなんて使ったら、一瞬で何もかも消えるわよ。」

アレンの言葉に、ジャグリーンとダナエが介入してくる。その瞬間、リリーナの中で何かが繋がった気がした。考え込んでいた顔をあげ、青ざめた顔で3人を見た。

「リリーナ様・・・?」
「ねぇ。みんなが戦ってる中、アカシャとランスロット・クラブがこっちに送られて来たら、リリィとライはどうすると思う?」
「え?そりゃもちろん、あの2人のことですからエリア7まで取りに来ると思いますよ。エリア11とエリア7は、そんなに離れてませんしね。」

ダナエがそう答えた瞬間、他の2人がハッとする。どうやら彼らもリリーナの考えていることが分かったようである。

「シュナイゼル・・・あいつ、フレイヤを使う気よ!あいつにとってリリィは最愛の妹で、あの子とライは皇帝直属部隊。もしものことで2人を失うわけにはいかない。だからあいつ、わざわざこっちに2人のナイトメアを寄越してきたのよ。2人をエリア11から遠ざける気なんだわ。」

でもそれはあくまで仮定の話。それにそもそも、この戦いにフレイヤが使用されるかどうかもリリーナには分からなかった。今現在ランスロットにフレイヤが積まれていることなど知りもしない彼女は、早口で3人の整備士たちに指示をした。

「アカシャとランスロット・クラブを整備してあげて。私はリリィかライに連絡を取ってみるわ。」
「イエス、ユアハイネス!」

彼女の言葉に整備士たちは散り散りとなる。どうか2人とも無事で・・・。リリーナは強くそう願うしかなかった。



* * *



一方、がらんとした格納庫の中で呆然とする2人は、外から聞こえてくる大きな音に反応しデッキへと出た。
ゼロが仕掛けたゲフィオンディスターバーのせいでライフラインも止まり、第5世代以前のナイトメアも完全に停止してしまっていた。その中でアヴァロンから飛び去っていく見覚えのある機体に、リリィは小さく呟いた。

「スザク・・・・!」

白と金色のカラーリングの機体は、スザクが乗るランスロット。先ほどまで一緒にいたせいなのか、それとも機体がエリア7へと送られてしまったせいなのか、寂しさと不安が一気に押し寄せる。このまま彼をゼロの元へ行かせてしまってはいけないように思えた。
彼の機体をじっと見つめるリリィの横で、ライもまた同じように彼の機体を見ていた。

「・・・ナイトメアがないだけで、こんなにも僕たちは非力になるなんてね。」

少し嘲笑うようにライが言う。リリィが赤い瞳を彼に滑らせると、隣に並んだ少年は彼女に向かって今度はにっこり笑いかけて言った。

リリィ、取りに行こう、ナイトメアを。エリア7まで・・・!」

ライの言葉に、彼女は大きく頷いた。
スザクを1人で戦わせるわけにはいかない。藤堂とも決着をつけなければいけない。
そして何より、ルルーシュともっと話がしたい。枢木神社で彼が伸ばしてくれた手を掴んであげられなかったことが深く胸に突き刺さっている。今度こそ、ルルーシュの手を掴んであげたい。スザクと一緒に!
リリィがキュッと口を結ぶ。その横でライは、エリア7に行く手立てを考えているのだった・・・。

ちょうどその頃、ゼロ・・・ルルーシュの元へとたどり着いたスザクが彼と対峙する。
スザクのランスロットにはフレイヤが積み込まれている。その事実を、ルルーシュは信じなかった。
「お前の言うことは信じられるか」と冷たく言い放つ。そのままルルーシュはジェレミアの名を呼んだ。
スザクの前にジェレミアが現れる。驚いたスザクだったが、彼はジェレミアに言った。

「ジェレミア卿、自分はこんな戦いを終わらせたくて!」
「ならば君に、できると言うのか。わが君の苦悩を消し去ることが!」
「みんなを巻き込む必要なんてっ!!!」

ジェレミアに切り込もうとしたランスロットに、もう1人意外な人物が切り込んでくる。スザクは再び驚きの声をあげた。

「ギルフォード卿まで!!」
「枢木!互いに主君を持つ身。悪く思うな!」

ギルフォードの言葉の直後、画面に映るニーナが叫ぶ。

「スザク!フレイヤを打って!今ならゼロを!」

彼女は必死だった。今フレイヤを打てば、彼女は自分が研究し開発したものでユーフェミアの仇であるゼロを殺せるのだから。スザクはニーナに言われて、チラッとフレイヤのボタンを見た。その瞬間、リリィの顔が浮かんだ。


「撃って撃たれて憎しみが生まれて・・・。どうしたら世界はもっと、優しく変えていけるのかしら?」


あの時肩を小さく震わせていた少女を想い、スザクはすぐにボタンから視線を外す。

「ごめん、ニーナ。これは使わない。でも、ゼロは僕がっ!!」

リリィが幼い頃に愛した男がここにいる。
彼は皇子をやめ、気づけば黒の騎士団を率いてゼロを名乗っていた。あの時彼が伸ばした手を、リリィと2人で取ろうとした。取れなかった・・・。結局は敵同士。それならいっそ、彼を・・・。
スザクは心のどこかでそう思う。

もしこの手で彼に引導を渡したなら、リリィは僕を嫌いになるかな・・・?




所詮 僕らの魂は陰謀と裏切りに生きているのだから
(リルケ)



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