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#73



政庁内はゲフィオンディスターバーの影響を受け、第5世代以前の機体は動かせない。
第5世代以降のナイトメアがない中で、どうやってエリア7に行けばいいのだろうか・・・?
ライは考え抜いた先、「もしかしたら・・・」というただ1つの可能性にかけてみることにした。
ポケットから携帯を取り出し、とある人物に電話をかける。心臓がバクバクした。もうこの方法以外、考えられないのだ。
数コール後、相手が電話に出る。年上の女性の声がライの鼓膜を振るわす。

「ライ・・・?どうしたんだ?」
「・・・よかった!ノネットさん!少し急ぎで頼みたいことがあるんです!!ノネットさんは今、エリア11ですか?」
「あぁ、まぁ・・・そうだな。エリア11で黒の騎士団と交戦中だが、私はほとんど待機状態っていうところだな。」

その答えを聞いて、ライの表情が少しだけ明るくなる。
電話の向こうでそう話すのは、ナイト・オブ・ナインのノネット・エニアグラム。ライのよき先輩であり、よき相談相手であった。
ノネットは少し驚きつつも、「ところで、こんな時に私にどんな頼みごとだ?」と尋ねてくる。ライは一呼吸置いて話始めた。

「実は今、僕たちのナイトメアがシュナイゼル殿下の指示でエリア7に送られてしまって・・・。今僕たちはトウキョウ租界の政庁内にいるんですが、ゼロの仕掛けたゲフィオンディスターバーのせいで、第5世代以前の機体は動かないし、エリア7へ自分のナイトメアを取りに行く手段がないんです。それで・・・ノネットさんにお願いなんですが、あなたのナイトメアで、僕たちをエリア7に連れて行ってくれませんか?」

話が終わったあと、ライは小さく息をついた。電話の向こうのノネットはしばらく無言ではあったが何かを考えたのち、口を開いた。

「・・・ライ、貸し1つ・・・だからな。すぐ返せよ?」

そう答えたノネットに、ライは少し安堵する。エリア7への移動手段は確保できた。あとは無事に、エリア7へ行ってナイトメアを持って帰ってくるだけ・・・。

「トウキョウ租界の政庁だな?待ってろ。今私のナイトメア・エレインで迎えに行ってやる。そのままお前たちを、エリア7まで送ってやろう!」

ノネットは明るい声でそう言った。
彼女の専用機・エレインは第7世代のナイトメアであるため、ゲフィオンディスターバーの影響は受けない。

「ノネットさん、ありがとうございます!」

ライは彼女に礼を述べて電話を切った。そして、不安そうな顔をしていたリリィにグッと、親指を立てるのだった。

しばらくしてから、政庁の空にエレインが姿を現す。
ライとリリィの姿を見つけたノネットは、エレインを着陸させるとハッチを開けた。

「早く乗れ!急いで行くぞ!」

彼女の言葉に、2人はエレインのコクピットへと乗り込んだ。エレインのコクピットはわりと広めではあるが、何せ1人乗り用である。
3人が密着した状態になり、ノネットは思わず笑った。

「はははは!まさかこんな状態でエレインに乗る日が来るなんてな!」
「すみません、エニアグラム卿・・・」

リリィは申し訳なさそうにノネットに謝る。ノネットはニッと笑うと気にしてない様子である。それよりも彼女は、逆にリリィに気を使った。

リリィ皇女殿下。できるだけ安全に、急いで向かいますので、どうかご心配なさらずに・・・。もし何か起きた場合は、全部ライの責任ですから。」
「ノネットさん!そういう冗談はもういいですから!」

ライに文句を言われた彼女は、「ははっ」と軽く笑ったあと、ゆっくり操縦桿を押す。さっきまで笑っていたのに、急に真剣な顔をしていた。
エレインが走り出し、そのまま空へと飛ぶ。トウキョウ租界が小さくなり、雲を突き抜けると左手にアヴァロンが見えた。
エレインは向きを変え、エリア7の方向を目指す。

(シュナイゼルお兄様・・・。)

アヴァロンが見えた時、リリィはそこにいるであろう兄のことを思う。この戦争から私たちを遠ざけた理由は何?・・・そう、聞いてみたかった。
アヴァロンが遠くなる。やがて見えなくなった。
同じころ、シュナイゼルはモニターに映し出された映像を見ていた。

(あれは・・・エレイン。ノネット・エニアグラムの機体か。あの方向はエリア7・・・。なるほど。思った通り、彼らはナイトメアを取りにいったか・・・)

だんだんと姿が小さくなっていく機体。シュナイゼルはそれを見て、少しだけ微笑んだ。


*  *  *


政庁内ではロロが咲世子と共にナナリーを目指していた。ルルーシュからナナリー奪還の命を受けていた彼であったが、目的は違っていた。

(安心して兄さん。ナナリーは僕が見つけて・・・)

殺してあげるから。

ルルーシュにもらったロケットを見つめ、ロロは目を細めた。
ロロにナナリーはいらなかった。ルルーシュの本当の妹のナナリー。リリィの異母姉妹。血のつながっている家族。
ライだってナナリーと血は繋がっていないが、彼女を大事にする。みんながナナリーを大事にする。

(ナナリーなんていらない。みんなの家族は、僕だけでいいんだ!)

不意に噛んだ唇が痛かった。それと同じくらい、心も痛かった。愛に飢えている少年は、目的のものへとまた歩き出した。

その頃トウキョウ租界の空では、ルルーシュとスザクがぶつかっていた。
スザクはルルーシュに問う。自分が原因でこの戦いを始めたのだとしたら・・・そう言いかけたところに、ルルーシュの声が重なる。

「自惚れるな。お前は日本を、親を裏切ってきた男だ。だから友情すらも裏切る。ただそれだけ・・・」

ルルーシュが悲しみや憎しみに浸る間もなく、蜃気楼にぶつかってくる機体が1つ。アーニャの操るモルドレッドだった。
シールド越しに機体をグイグイ押してくるモルドレッドに焦りを覚えるルルーシュ。ゼロ距離でシュタルクハドロン砲まで打ち込まれ、蜃気楼は母艦との通信が途絶えた。

リリィとライがエリア11を発ってしばらくしてから、イケブクロとスガモのゲフィオンディスターバーが破壊され、政庁領域の防衛システムが復旧した。第5世代以前のナイトメアも戦線復帰し、戦力が逆転する。
ここまでが全て、シュナイゼルの計算通り。政庁に明かりが戻り、黒の騎士団たちは動揺した。
ゼロの姿も見えず、玉城は叫んだ。

「何だよぉ!どこにもいねーじゃねーかよ!ゼロはどこで戦ってるんだ!?俺の親友はよぉ!」

モルドレッドからの一方的な攻撃に耐えていた蜃気楼であったが、急にモルドレッドの攻撃から解放されたルルーシュ。しかし今度は、ブリタニアの吸血鬼の異名を持つナイトオブテンが率いる部隊、ヴァルキリエ隊によって捕らえられた。
動きを封じられた蜃気楼のそばで、ルキアーノ・ブラッドリーは獲物を見つけた蛇のような目をしている。

「ゼロ、ブラックリベリオンは失敗に終わる運命(さだめ)だったようだなぁ。教えよう。大事なものとは何だ?それは・・・命だ!!」

パーシヴァルの武器が高速回転し始めた。


* * *


捕らえられていたカレンは、咲世子によって救出された。
彼女に案内されてやって来たのは、赤く輝く機体の前だった。早速デヴァイサースーツに着替え機体に乗り込みキーを刺す。

「基本システムは同じか・・・?」

起動された画面には、『S.E.I.T.E.N』の文字。

「えっと・・・紅蓮・・・セイテン、ハチ・・・でいいかしら?」

咲世子が画面を見つめて言った。その赤い機体は紅蓮聖天八極式。ロイドとセシルが押収した紅蓮を趣味で改良した新しい紅蓮。
デヴァイサーは紅月カレン。彼女はゼロを助けるため、政庁の壁を破って空へと飛び出す。
ゼロを助けに行く中で、カレンは思った。

リリィも今、どこかで戦っているんだろうか・・・?)

できれば彼女とは戦いたくなかった。捕虜生活の中で、彼女の優しさに触れた今は。彼女がルルーシュの思い人だと知ってしまった今は・・・。
この空に、あの黒い機体が飛んでいないことを願わずにはいられなかった。




おずおずしたぼくの心 ほの暗いぼくの心は 悲しい道のべに 
だたひとり 泣いていた
(ポル・ヴェルレーヌ)




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