FC2ブログ

IC#74


何度電話をかけても、彼女たちは出ない。リリーナの焦りが次第に不安へと変わる。

(もしかしてあの子たち、生身で戦ってるんじゃないでしょうね!?)

昔からこんな風に待つのが嫌いだった。その気の短さをどうにかしなさいと、よくクラエスに笑われたことを思い出した。
こんな風な世界になるのなら、クラエスが突然いなくなると知っていたなら、歌手なんかにならなかったのに・・・。
歌手になりたかったのは、クラエスやリリィが自分の歌を褒めてくれたから。2人が幸せそうな顔をしていたから。

「お母様までいなくなった上に、リリィまでいなくなっちゃったら、私どうしたらいいのよ・・・。アルビオンを守りたくて・・・リリィを守りたくて総督になったのに・・・」

小さく呟いた時、アレンの声が響いた。

「エリア7空域に、未確認の飛行物体を確認!画面に映しますね!」

画面に映し出されたのは1機のナイトメア。

「えっ・・・?あれは・・・エレイン?」
「エレインって言ったら、ナイト・オブ・ナインのノネット・エニアグラム卿では・・・?」

ダナエとジャグリーンが画面を見つめて声を発した。
最速でエリア7の空を進むその機体からすぐに通信が入る。

「こちらブリタニア軍皇帝直属部隊・識別番号N741558、エンジェルズ・オブ・ロードのライ・ルシフェルです!至急そちらの総督、リリーナ・ルゥ・ブリタニアと話がしたい!通信をつないでもらえますか?」

昔からよく聞いた声に、俯き加減だったリリーナの顔が上がる。モニターに映し出されているのは、シルバーの髪を持つライと赤い髪の持ち主、リリィ、それからナイトメアを操縦するノネットだった。リリーナは少し目を細めると大声で叫んだ。

「こっの・・・おバカたち!!電話にはちゃんと出なさいよ!心配したんだから!来るのが遅い!」

怒った顔のリリーナを見て2人は一瞬怯んだが、すぐに顔を見合わせて少し笑った。リリーナのブルーの瞳に、うっすら涙が溜まっていたからだ。

「はははははっ!リリーナ皇女殿下は、怒ると怖いお方なんだなぁ!」

ノネットが豪快に笑った。
久しぶりの故郷の空を飛ぶ2人は、上空から見える綺麗な大地に懐かしさを感じる。ゆっくりしたいところではあるが、今回はそういう時間はない。

2人がエリア7の政庁を目指していた頃、エリア11では紅月カレンがゼロの元へと辿りついていた。
蜃気楼を捕縛していたヴァルキリエ隊を破壊し、カレンは大きく叫んだ。

「ゼロ!親衛隊隊長紅月カレン、只今をもって戦線に復帰しました!」

その言葉とともに、すぐにパーシヴァルとの戦闘が始まった。
どちらも素早い動きで相手を捕らえようとするが、ナイト・オブ・テンと零番隊隊長のエースパイロット同士は巧みに交わしていく。
カレンが攻撃を加えた時、ブラッドリーは口を開いた。

「イレブンよ。戦場での真実を知っているか?日常で人を殺せば罪になるが、戦場では殺した数だけ英雄となる。」

彼の言葉に、カレンは不意にリリィの姿が浮かんだ。

「ふーん。ブリタニアの吸血鬼さんは、英雄になりたいわけ?」
「いいや。公に人の大事なもの・・・命を奪えるとは最高じゃないか・・・!」

今度は日本の話を聞かせた時のリリィの表情が浮かんだ。
「ごめんなさい」と一言だけ言ったあの時のリリィは、悔やんだ表情を浮かべていた。彼女はきっと、たくさんの人を殺してしまったのだろう。悔やみ続けているリリィとは正反対のブラッドリーに、カレンは吐き気すら覚え、低い声で言い放つ。

「あんたさぁ、ちょっと下品だよ!!」

紅蓮とパーシヴァルの間合いが詰まる。そのことを喜んだブラッドリーであったが、カレンは巧みに紅蓮を操り彼の攻撃を防いだ。代わりに紅蓮の武器でパーシヴァルを串刺しにし彼の攻撃を封じる。

「質問。あなたの大事なものは何?自分の命だけなの?」

そう投げかけてみたが、彼は答えなかった。「脅しのつもりか、イレブンが!」という言葉を聞いた時、カレンは思ってしまった。やはり今のブリタニアはダメだ。あの子・・リリィでないと・・・。あの子ならきっと、ブリタニアの全てを変えてくれるはずだわ・・・と。カレンはまた、望んでしまった。リリィが皇帝だったらよかったのに・・・と。

「さようなら・・・」

冷たく響くカレンの言葉と同時に、ルキアーノ・ブラッドリーは逝った。
間髪入れずに、今度はランスロットが向かってくる。ジノ・ヴァインベルグも一緒だった。
戦場で会った彼に喜ぶべきか、悲しむべきかと問えば、彼は「楽しむべきってのはどうだい?」と答えカレンは複雑になる。
それでもその言葉にはジノらしさが溢れており、カレンは少しだけ口角を上げた。

「スザク!カレンとの決着は残しておいてくれよ!」

楽しそうにそう語ったジノに、カレンは笑顔を取り戻した。

「・・・だってさ!スザク!」
「・・・すまないジノ。そんな余裕が許される相手ではなさそうだ。」

スザクはランスロットの剣を抜く。この光景をリリィが見たら何ていうだろう?
あの可愛い声で、「やめてスザク!」と叫ぶだろうな。頭の片隅でそんなことを考えていた。
でも彼女はここには来ないはずだ。スザクはシュナイゼルから、2人のナイトメアはエリア7に送ってあることを聞かされた。先程からずっと、この戦場に彼らが一切現れないのは、きっとナイトメアをエリア7まで取りに行ったからなのだろう。
リリィがいない今なら、思う存分戦える。何の後ろめたさも感じずに同胞を葬ることができるはずだ。
そのまま戦いが始まった。けれども力の差がありすぎて、ランスロットは紅蓮に歯が立たなかった。ニーナの必死な叫びが聞こえる。

「打ってよスザク!フレイヤならっ!」
「・・・っ!これはあくまで脅し。使ってしまったら・・・!」

紅蓮の攻撃がランスロットに命中する。ランスロットの一部が切り落とされ、スザクは力の差を感じた。同時に身近にあった死を、今更ながらに再確認する。

「さようなら、スザク・・・」

冷たく放たれたカレンの声と同時に、全てがスローモーションに見えた。
「殺せ!スザクを!」と叫ぶルルーシュの声と、「打ってよフレイヤを!あなたも助かるのに!」と叫ぶニーナの声。

(でも・・・!それだけは!リリィが嫌ったフレイヤをここで打つなんて!たとえ、ここで死ぬとしても!・・・そうだ。これは償いなんだ。受け入れるしかない。ここで、俺は・・・)

目を閉じかけて、スザクは何かを思い出した。神根島でルルーシュによってかけられた生きるギアス。
脳内でルルーシュの「生きろ!」という力強い言葉が響き渡る。ルルーシュの言葉の後に、スザクはリリィとの誓いがよみがってくる。

(そうだ・・・。俺は生きなきゃいけない。リリィに誓ったんだ。君と一緒に生きて結婚もして、幸せな家庭を作っていきたいって・・・!)

「お・・・お・・・俺は・・・・生きるっ!!!」

彼はそう叫んで、何の躊躇いもなくフレイヤのボタンを押す。フレイヤの発射を確認したブリタニア軍は急に後退していく。その光景を見て、シュナイゼルは笑った。すべてが計算通り、ことが運んだ・・・そんな感じの笑みだった。
ブリタニア軍の異変に気付いた千葉が、黒の騎士団にも後退の指示を出す。
フレイヤが光を帯びるのを見てルルーシュは少し考えるが、この後に起こる出来事が分かって大きく吠えた。

フレイヤが・・・ピンク色の光を放ちながらいろんなものを飲み込んでいく。ナナリーもギルフォードも、朝比奈も、ローマイヤーも、そこにいた人、あったものを全部、全部。
まるで朝日が昇ったような明るさが一瞬訪れたのち、そこにあったもの全てが消え去った。
ルルーシュが一番守りたかったナナリーさえも・・・・。


*  *  *


フレイヤが使用された・・・というニュースは、すぐにエリア7にも届いた。そのニュースに政庁内のざわめきが一瞬にしてなくなり、そのまましばらく静寂が訪れた。フレイヤの危険性を一番理解しているのはおそらく、エリア7にいる科学者たちであろう。その出来事にリリーナは声を失い、リリィは大きく目を見開いていた。

「・・・フレイヤを・・・打ったのは誰なの!?」

ニュースを持ってきた張本人であるアレンに向かって、リリーナが声を絞り出して尋ねる。アレンは静かに話した。

「ランスロットのデヴァイサー、ナイト・オブ・セブンの枢木卿・・・だそうです。フレイヤはランスロットに積まれてたようです・・・。」

彼の話の途中で、ドサっと鈍い音が響く。ライやリリーナが振り返れば、顔を真っ青にしたリリィが座り込んでいた。

「・・・・スザク・・・・」

そう呟いたあと、大きく見開いた赤い瞳から一筋の涙が流れるのだった。




生きることを思え
(ゲーテ)


スポンサーサイト



コメント 0件

コメントはまだありません