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IC♯75



トウキョウ租界が消え去って数時間後、自身のナイトメアと共にリリィとライは、ちょうど空が明るくなり始めたころ、エリア7を発った。
2人のコクピットの中には、整備士の3人が分かれて乗っている。リリーナの指示だった。
トウキョウ租界がやられた今、少しでも人手が多いほうがいいだろう。特に、ナイトメアが整備できる整備士は必要になるだろう・・・と。リリーナはシュナイゼルに肩入れするようで嫌だったが、そんなことは言ってられない。エリア7も、同じブリタニアであるのだから・・・。
エリア7までリリィたちを送り届けてくれたノネットは、フレイヤがエリア11に打ち込まれたことを知ると、早々にエリア7を発った。
彼女は「フレイヤが使われた今、しなきゃいけないことがある・・・」と、少しだけ笑顔を浮かべながら言った。
そしてライに、「また力が必要なときは声をかけてくれ」とも言ってくれたのだった。

太陽が昇り切り、朝を迎える。明るくなったエリア11の空で、生存できたデヴァイサーたちはただ呆然としていた。
誰かが呟く。「トウキョウ租界は・・・死にました」と。適切な表現だった。ニーナはフレイヤの威力を目の当たりにし、スザクはこの出来事に瞳を揺らし動揺する。

「僕が・・・やったのか・・・?」

小さく呟いた。うまく呼吸ができなかった。
同じ空、スザクの先にいるルルーシュは叫ぶ。「ナナリーを探せ!ナナリーは必ず生きている!」と。カレンやロロ、ジェレミアの名前が呼ばれるが、そこに藤堂の指示が入った。

「全軍に告ぐ!マクハリまで後退し、戦線を立て直す!全軍至急後退せよ!!」

ナイトメアの中で叫ぶルルーシュだったが、彼はナイトメアごとジェレミアに羽交い締めにされ、動けなくなる。

「兄さんさえ生きてれば・・・」
「機会はまた・・・」

そのまま黒の騎士団は後退した。敵の真っ只中に特使としてシュナイゼルが来ているとも知らずに・・・。



※ ※ ※



リリィとライは整備されたナイトメアで最速を保ってエリア11に戻ってくる。トウキョウ租界に入った瞬間、彼らは一瞬呼吸が止まった。

「・・・ッ!!なんだよ、これ・・・」
「い・・・いやっ・・・!」

ぽっかり開いた穴は地面が剥き出しになっており、そこにあったはずの街が丸ごとなくなっていた。アッシュフォード学園はギリギリ被害を免れていた。被害の大きさに、一緒にナイトメアに乗っていた整備士たちも息を飲んだ。

「だからモルガン様やリリィ様、そして僕らエリア7の科学者たちは反対したんだ・・・。フレイヤの被害がどの程度のものなのか、計算できなかったから・・・」

アレンが言った。ダナエは目を逸らし、ジャグリーンは口元を手で押さえた。
エリア7でも、速報で入ったトウキョウ租界の映像をリリーナたちが見ていた。リリーナは大きく目を開き、クレーターのような穴を見ている。

(シュナイゼルは躊躇いもなしに、あれを枢木スザクが乗るランスロットに積んだの?まだ、18歳の少年に、あの兵器を委ねたの・・・?)

彼女は考えただけで寒気がした。その背後で、ユーサーとモルガンの2人はトウキョウ租界が映る画面を睨みつけている。不意にモルガンの口が動いた。

「シュナイゼルよ、これがお前の考える戦争なのか?もしそうならば、我らエリア7も少し考えねばなるまいな・・・。」

モルガンが低い声を上げた瞬間、彼女の髪の毛がざわりと逆立つ。その様子を隣で見ていたユーサーが、その場にいたナイトメア技術者や科学者に静かに告げた。

「ブリタニア本国は、エリア7の忠告を無視してフレイヤを作り使用したようであるな。本国がその方針である以上、我々もこれより、永久凍結していたイグドラシル計画を再始動していこうと思う。皆の者、よろしく頼んだ。」

モルガンが頷く。
あぁ。ついに永久凍結していたイグドラシル計画が再始動される日が来てしまった・・・と、リリーナはそっと目を閉じた。



※ ※ ※



アヴァロン内の格納庫にナイトメアを置いたリリィは、コクピットから飛び出して行く。スザクの姿を探した。あとから降りてくるライや整備士たちに声をかけられても、リリィの耳には届いてなかった。
少し薄暗い格納庫内の一角で、下半身がなくなったランスロットの前に、デヴァイサースーツの少年が佇んでいた。茶色のふわふわの髪を見た瞬間、リリィは名前を呼んで走り出した。

「すざく・・・っ!!!!」

振り返ったその少年が、翡翠色の瞳を大きく見開き少女の姿を捉えた。リリィはスザクの胸に飛び込み、ギュッと抱きしめ何度も彼のぬくもりと香りを確かめる。目に涙を浮かべた彼女は、自分を見つめるスザクの頬に片手を添えて唇にキスを送った。

リリィ・・・?」
「スザクは多分、悪くない・・・。あなたにフレイヤを委ねたのはブリタニア。フレイヤの使用を止められなかったのは、私の責任でもある。あの時もう少し強く、シュナイゼルお兄様にフレイヤの危険性を説明できていれば、何かが変わったかもしれないのに・・・!でも・・・・・・」

スザクが無事でよかった・・・!

彼の胸に、リリィが顔を埋める。その時スザクは実感してしまった。

(あぁ、僕は生きたんだ・・・。生きてしまったんだ・・・。フレイヤを撃ち、みんなを犠牲にしてまで・・・。)

そのことを再確認したスザクは、彼の胸で涙を流す少女をギュッと抱きしめて泣き始める。
彼らの姿を少し離れて見ていたライは、スザクの中に眠るギアスを複雑に思っていた。

(あのギアスのおかげで、スザクは生きることを選び、リリィはスザクを失わずに済んだ。そしてあのギアスのせいで、トウキョウ租界と多くの人が死んだ・・・。)

ライが瞳を伏せた時、ポケットに入れてた携帯が鳴る。相手はロロからだった。彼は何か嫌な予感がしながらも、携帯を手に取る。すぐにロロの声が聞こえた。

「兄さんっ!今すぐ僕たちのとこに来て欲しい!ルルーシュが・・・っ!」

切羽詰まったロロの向こうで、ゼロの・・・ルルーシュの異常なまでの叫び声が聞こえる。一体、何が起こったというのだ・・・?
ライの眉間にシワが寄り、アイスブルーの瞳が細められた。

(スザクのことはリリィに任せよう。僕がいても邪魔だろうから・・・)

そのままライは姿が一つになった2人に背を向け、黒き魔王と自身の弟がいる場所へと向かうのだった。



おお、神よ、運命の書物を読むことさえできれば
そして「時」の変転を見ることさえできたならば!
(シェイクスピア/ヘンリー四世)

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