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あの人に勝つ方法


俺はいつも、美和にとって最高の彼氏でありたかった。
かっこよくて優しくて、気配りができる人。芽衣が頼れるような完璧な彼氏。けど、それは俺の理想。
ほんとの俺はかっこよくもないし、頼りにもできないだろう。
いつまでも過去に縛られて、未来へ一歩も踏み出せない・・・。
そんな自分に苛立つように、俺は引き金を引いた。
黄金の化け物が、ターゲットをしとめる。彼女の前で、赤い血が飛び散った。
芽衣を最初に預かってきたのは、当時の総隊長・・・桜澤時生。
彼は美和を愛していたし、美和にとって最高の彼氏だった。けれど彼は死んだ。
そう、俺が・・・殺した。

相手が倒れたのを確認して、ゆっくりとデザートイーグルを下ろす。
白い制服を朱に染めた彼女が歩いてきた。

「・・・お疲れ様、笑ちゃん。なんだか・・・いらついてるみたい。」
「こいつが手間かけさせるからだ。桜澤時生なら、処刑するのにこんなに時間はかからない。」

彼の名前を出すと、美和は何か理解したような顔をして、俺の指に自分の指を絡めた。

「桜澤さんは桜澤さん。笑ちゃんは笑ちゃん・・・でしょ?」

手袋ごしに伝わってくる美和の温もり。
数年前、この温もりを俺は自分のものにした。桜澤時生の死と同時に。
彼は死ぬ前、笑ってそれを許してくれたけど・・・。

「だけど俺は・・・あの人と比べると全然だめだ。」

総隊長としての力量も、お前の彼氏としても。いつも考えてしまうんだよ。
お前の相手は、本当に俺でよかったのかったって・・・。
すこしだけ、拳を握る。俯いた瞬間、美和がこちらに歩いてくる音がした。

「ねぇ笑ちゃん、そんなふうに言うんなら・・・私とデートしてくれない?」

美和の言葉に俺は顔を上げた。彼女は微笑んでいた。
驚いた顔を見せると、美和は笑って言った。

「笑ちゃんが桜澤さんに勝てないっていうのなら、勝てることをすればいいじゃない。桜澤さんにできない、笑ちゃんだけの愛し方を私にちょうだい?」

それが唯一、あの人に勝てる方法だから。

彼女はそう言って、俺の大好きな笑顔を見せてくれる。

「そうだな・・・。」

俺はめいいっぱい美和を抱きしめて思う。
あんたができなかった愛し方で、俺はあんたを超えてみせるよ・・・と。



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