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俺は死ねない



痛む腕を押さえながら本部へと戻る。
三上さんたちには無理をするなと言われた。けど、俺には戻らなくちゃいけない場所があるんだ。
両親を失い、そして再び、親しい人を失った彼女。彼を失ったその日から、あいつは暗闇で怯えるようになった。
戻らなきゃ・・・。美和が待つあの家へ・・・。

* * *

「・・・おい、美和。また電気つけたまま寝てんのか?」

ノックをしても返事がなかったため、俺はそのまま美和の部屋のドアを開けた。
綺麗に整理された部屋。たくさんのぬいぐるみが乗ったベッドで、小柄な少女は丸くなって眠っていた。
ベッドの上には仕事の書類が広げられている。
美和のそばに腰を下ろす。俺の重みで少しベッドが沈んだ。

「電気くらい、消せよな・・・って言っても無理か。お前は暗闇が嫌いだもんな。」

そっと彼女の頭に触れる。
あの人が死に、俺も生死をさまよっていた時、美和はこの家で暗闇に包まれていた。5年前の話。両親を失ったばっかりだった彼女は、また一人になる恐怖を味わっていたのだ。
夜が明けこの家に帰ってきた時、美和は瞳に涙を溜めて俺に飛びついてきた。
何度も何度も、「お父さんとお母さんのところに行ったかと思った」と呟く美和
それから彼女は、あの人が死んだことを知り、暗闇が嫌いになった。

『暗闇が、今度は笑ちゃんを連れてっちゃうんじゃないかって、すごく怖くなる。』

以前暗闇が嫌いな理由を尋ねた時、美和は曖昧に笑ってそう答えた。

「暗闇が怖いなら、俺がちゃんといてやるから。」

小さく呟いて、俺は美和の部屋の電気を消すと、彼女のベッドに横になった。細い体をしっかりと包み込む。
モゾモゾと美和が動き、俺の胸へもぐりこんでくる。ここが彼女の安心できる場所。それは5年前から変わっていない。

「これなら暗闇も怖くないだろ?」

返事はなかったが、美和の顔がすり寄ってくる。
こうするたび、俺はどんなことがあっても死ねないと感じる。美和から俺までいなくなったら・・・。そう考えただけで、俺は生きようと思うんだ。
暗闇の中、美和の温度を確かめながら、俺は目を閉じるのだった。



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