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IC#76



ライはロロが指定した場所に来ていた。今の状況でランスロット・クラブに乗っての移動は厳しすぎる。ブリタニアのエンジェルズ・オブ・ロードが敵方の黒の騎士団のゼロの元を訪ねるのだ。きっとバレたら反逆罪だけでは済まされない。
ライは慎重に慎重を重ね、茂みに身をかがめながら迎えを待っていた。不意に空から現れたのは、一機のナイトメア。その機体はサザーランドジーク・・・。コクピットから降りてきた人物を見て、ライは茂みから姿を現した。

「貴公がロロの言っていた・・・。実際にお目にかかるのは初めてで。私はジェレミア・ゴッドバルド。エンジェルズ・オブ・ロードにして、日本を潰した熾天使、ライ・ルシフェル卿・・・。」

片方の目が機械に覆われている彼は、うやうやしく一礼した。彼の顔と髪の色を見て、ライはとある事件を思い出した。

「あなたはもしかして、オレンジ事件の・・・ジェレミア・ゴッドバルド卿では・・・?確か、先の戦いの際に行方知れずと・・・。まさか黒の騎士団についていたなんて・・・。黒の騎士団には、ロロを含めて少なからずブリタニア軍側の人間が何人かいるということだな。」

ライの驚いた目が細められる。姿は少し変わったが、彼はまぎれもなくブリタニア軍にいたジェレミアだった。一体ルルーシュは、何人のブリタニア軍を自分の懐に取り込んでいるのだろうか?
ジェレミアはオレンジという言葉に少し眉をひそめた。その言葉は彼にとって不名誉なものであったが、彼はもう何も気にしてないようだった。ライの顔を真っ直ぐ見て、ジェレミアは言った。

「私はマリアンヌ様の子供であるルルーシュ様に忠誠を誓ったのです。あなたがクラエス様の忘れ形見であるリリィ皇女殿下に、忠誠を誓ったように・・・。」
「確かに僕はリリィに忠誠を誓った。だけどリリィがブリタニア側である限り、僕もブリタニア側だ。今回はロロとリリィのために来たんだ。2人にとって、ルルーシュは大事だろう?」

ライの言葉にジェレミアは、「ロロやリリィ様にとっても大事だが、私たち黒の騎士団にとっても・・・」と付け加え、仕草でサザーランドジークのコクピットに乗るよう促した。
狭いコクピット内で、ライは景色を見ながらジェレミアに尋ねる。

「ロロから電話をもらった時、ルルーシュの叫び声が聞こえた。必死にナナリーの名前を呼んでいたような気がする・・・。ロロも凄く焦っていた様子だったけど・・・ゴッドバルド卿、一体何があったんだ?」
「枢木スザクが撃ったフレイヤに、ルルーシュ様の妹であるナナリー様が巻き込まれました。これから私は、貴公をロロのところへ送り届けたあと、ルルーシュ様の代わりにナナリー様を捜索に行くのです。あなたにはルルーシュ様のそばにいていただきたい。」
「・・・な、ナナリーが・・・巻き込まれた・・・!?」

ひやっとした汗が背中を流れた。彼女の笑顔が一瞬思い浮かび、目の前が真っ暗になって立ちくらみがする。頭を抱えてライは言葉を絞り出した。

「なぜ僕が、ルルーシュのそばにいたほうがいいと・・・?」
「ロロから聞きました。あなたはギアスを持っており、ゼロとルルーシュ様の正体を知っている。ルルーシュ様には、弱さを見せることのできる相手が必要です。貴公が適任かと・・・。本当はリリィ皇女殿下のほうがいいのでしょうが、ゼロの正体を知られるわけにはまいりません。」

ジェレミアはライを見らずにそう言った。そのまましばらく、何も会話のない時間と外の景色だけが流れていく。
次にジェレミアが口を開いたのは、ちょうど目的地に着く頃だった。

「ルシフェル卿、私はルルーシュ様にご自分の意思を貫いてもらいたい。あなたにルルーシュ様を任せたい。同じギアスを持つ者同士・・・」
「傷を舐め合えというのか?」
「いいえ。ギアスという能力は、王を孤独にすると聞きました。ルルーシュ様は今、孤独の中にいます。ぜひともあなたが、彼を支えて欲しいのです。例えそれが、ブリタニアに属するあなたであっても・・・。ルルーシュ様を・・・立ち直らせて欲しいのです。」

ナイトメアが空を飛ぶ斑鳩に着陸する。ハッチが開き、ジェレミアの目が「行け」と言っていた。

「ゴッドバルド卿。僕の言葉で、ルルーシュが立ち直ると思いますか?」

サザーランドジークから降り、不意にライは尋ねた。

「それはおそらく、あなた様の言葉次第です。」
「それならば、協力するのに条件がひとつ。・・・ナナリーを全力で探して欲しい。頼みます、ゴッドバルド卿。」

ライの言葉にジェレミアが少し笑った。「もちろんです」と返答し、ハッチが閉まる。サザーランドジークはすぐに空高く飛び去った。そのままライは人目をかいくぐり、目的の部屋へと走っていく。この前来たばかりで、部屋の場所はまだしっかり覚えていた。

(ブリタニア軍属の僕が、またこの場所に来るなんて・・・。)

またリリィを裏切ってしまったな・・・ライはそう思った。
部屋の近くまで来ると、ライは扉の前に立ち深く深呼吸する。それと同時に、ルルーシュの鋭い声が飛んだ。

「どうしてお前が持っているんだ!?これはナナリーにあげるつもりだったんだよ!お前なんかが、ナナリーの代わりになるものか!この偽物が!!」

ルルーシュは力一杯ロロの携帯を床に叩きつけ、その大きい音にC.C.がそばで怯えた。叩きつけた衝撃で、携帯につけられた白いロケットが開き、ゆったりとしたオルゴールが流れる。ルルーシュは低い声で言葉を続けた。

「まだ気づかないのか?俺はお前が嫌いなんだよ。大っ嫌いなんだよ!何度も殺そうとして、ただ殺し損ねただけだ!」

ルルーシュの言葉に、同じアメジスト色をしたロロの瞳が揺らぐ。

「にい、さん・・・?」
「出ていけ!今すぐ出ていけっ!!!」

尋常じゃないルルーシュの叫びに、ライは急いで扉を開けた。バンっという音で、我を忘れたルルーシュと瞳を揺らすロロ、ルルーシュの怒鳴り声に震えるC.C.が一斉にライの方を向いた。ひどく傷つき、泣きそうな顔のロロがライの視界に入る。

「・・・ライ兄さんっ!」

小さく叫んだ彼の言葉が合図になった。反射的にライは大股でルルーシュのほうへと歩き、間髪入れずに彼の頬を引っ叩いた。パシン!・・・という、乾いた音が部屋の中に大きく響く。

「お前は僕の大事な弟を、今までずっと殺すつもりでいたのか?利用するだけ利用して、殺そうとしていたのか?・・・最低な奴だな・・・。」

ルルーシュのアメジスト色の瞳は動揺したように激しく揺れ動き、静かな怒りを携えたライの両眼には、燃えるようなギアスのマークが現れているのだった。


* * *


「結局、分かっていなかったんです。どんな被害が起きるかなんて・・・。フレイヤの開発に反対してた、リリィ様の言う通りだった・・・。」
「ニーナ君、君は決めなければならない。科学を捨てて心を守るか、心を壊して科学に準ずるか・・・」
「・・・そんなこと・・・。ロイド先生も選んだんですか?」
「僕は元から壊れてるからね。それくらいの自覚はあるんだ。」

薄暗い格納庫で、彼は少しだけ笑い、ニーナを見て答える。
フレイヤという恐ろしい武器の真の力を見てしまって、ニーナは体を震わせながら呟いた。

「あたしが作ったフレイヤが、あたしが殺したんだ・・・。みんな、みんな・・・!」

ニーナが泣き崩れる。リリィたちがせっかく復興させていた租界、ゲットー、エリア11を・・・自分が壊してしまった。フレイヤの脅威を訴え続け、開発に反対していたリリィやエリア7の意見も聞かずに、自分の研究に没頭してしまった。そして、彼女の最愛の人物に罪を背負わせてしまった。同じイレブンである、枢木スザクに。

「ごめんなさい・・・!リリィ様・・・!」

彼女は顔を覆って赤い髪の皇女に許しを乞うのだった。




祈れない。 祈りたいと願う心は意志に劣らず強くとも
意思よりさらに強い罪が意志をくじく。
(シェイクスピア/ハムレット)




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