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2015.10.16  IC #05 <<15:24



バベルタワーが崩壊して、待機するブリタニア軍には甚大な被害が及んだ。
一体何人の人が死んだだろう。負傷しただろう。
この作戦の指揮をとっていたカラレス総督も、バベルタワーの下敷きになってしまった。
ブリタニア本陣では指揮系統を失ってしまったため、そこにいるものが慌てていた。
その時、中華連邦の総領事館にいたはずのギルフォードが姿を現す。

「うろたえるな!!!私が指揮をとる。
これはあくまで一時的な措置だ。我が姫様の名にかけて誓おう。協力してくれるか?」

彼がそう問うと、軍人たちは多少ざわめいたものの、ギルフォードを指揮官とすることを認めた。
「ありがとう。」とギルフォードは礼を述べ、インカムで連絡をとる。
そこにいるであろう彼らに。

「エンジェルズ・オブ・ロード。
こちらはブリタニア本陣、ギルバート・G・P・ギルフォードです。」
「…………ギルバート?コーネリアお姉様の騎士様?」

聞こえてきたのは戦場には似合わないくらいの可憐な声。その声にギルバートは目を細めた。
彼女と最後に会ったのはいつだっただろうか?
コーネリアの背中にひっついて離れなかった皇女。彼女は初めてギルバートを見たとき、すごく怯えていた。
それから数年。
リリィ皇女殿下は、こんなにまで立派に成長した。

「ええ。お久しぶりです、リリィ皇女殿下。」

リリィ………皇女殿下だって!?」

ギルバートの声に周りがどよめいた。
彼らは戦場にそんな身分の高いものがいるとは知らなかったのだ。
ギルバートは周りの雑踏を気にせず本題に入る。

「姫様、今回我が軍の被害は甚大です。
カラレス総督が亡くなった今、緊急措置として私が指揮をとることにしました。
私はこれからそちらへ出向き、救助の指揮をとります。」
「ギルバート様………カラレス総督が亡くなる瞬間を私とライは見ました。
助け……られなかった。あなたが代わりに指揮をとってくれるというのなら安心です。
エンジェルズ・オブ・ロードもこれから人命救助にあたります。
ギルバート様、あなたに軍の指揮を押し付けること、どうかお許しください。
本来は皇帝直属の部隊である私達の仕事………。」
「いえ、それは間違っています。
エンジェルズ・オブ・ロードはエンジェルズ・オブ・ロードだからこそ、自由意志が持てる。
ブリタニア皇帝が命令されること以外は姫様の自由に動けるのです。
あなた方はそのリスクを、『責任』という形で背負っている。
リリィ様、あなたはあなたらしい行動をとってください。
そうしたほうが、きっとコーネリア様も喜ばれるはずです…………。」

ギルバートの言葉を聞いて、リリィは思いっきり騎士服のスカートの裾を握った。
今回はデヴァイサースーツに着替えてる暇などなかったから、
いつもの騎士服のままナイトメアに乗っているのだ。
リリィは唇をかみ締めたあと、ギルバートに向かって笑う。

「ありがとう、ギルバート様。」
「いいえ。私は思ったことを言ったまでです。」

彼もつられて柔らかい笑みを見せる。そのまま通信を切った。

「では私は現場へ向かい救出の指揮をとる。アルフレッドは警察、バートはここで…………」

そうギルバートが言いかけたときだった。
アルフレッドが小さく声を上げる。
気付いたギルバートは疑問そうな顔をして振り返った。そこで彼も絶句する。
目の前にあるモニターには、いてはならない人物が映っていたから。

「私は…………ゼロ!!!」

その独特な声に、本国で黒の騎士団騒動を見ていたスザクも反応する。

(ありえない!!!だって彼はもうゼロではない。
ルルーシュの記憶は確かに消したはずだっ!!!僕はこの目で見ていたんだから。)

持っていた紙コップがベシャリと音を立てて潰れた。

「日本人よ。私は帰ってきたのだっ!!!
聞け、ブリタニアよ。私は悲しい。世界は何も変わっていない。
強きものが弱きものを虐(しいた)げ続ける限り、私は抗い続ける。
まずはおろかなるカラレス総督に、私はたった今、天誅をくだした。」

ゼロの拳が強く握られる。
ブラウン管を通してその光景を見ていたジノが面白そうな声で呟く。

「おやおや。いきなりやってくれるな、イレブンの王様は。な、スザク。」

ジノが彼の顔を見ると、スザクはいつもより恐ろしい顔をしていた。彼はニヤリと笑う。
面白そうなおもちゃが目の前にあり、ふわりとソファから腰を上げた。
そのまま怖い顔をしたスザクに絡みつく。

「なぁ。死んだんだろ?ゼロは。」
「ああ。」

スザクは画面を見つめたまま短く返事をする。
確かにゼロは死んだ。だけどルルーシュはまだ生きている。
ならば考えるのは簡単だ。
ルルーシュの………記憶が戻った。

「んじゃあ、ニセモノか?どちらにしても中華連邦の総領事館に突入すれば………」
「重大なルール違反だ。国際問題になるぞ?」

スザクの答えにニヤリとジノが笑う。
そのあとに彼は言った。「相手は皇族殺しだ。EUとの戦いも大事だけどさ。」と。
この言葉に含まれる意味を瞬時にスザクは理解する。
だけどそれは譲れない。
だってゼロを殺すのは………自分だから。

何も言わずに無言のままテレビ画面に視線を戻したスザクを見て、
ジノが思い出したように「あ。」と声をあげ、小さく呟く。

「そういえば、リリィとライって今エリア11にいるんだよな。
もしかしたら借り出されてるかもなぁ。救出活動に。
っていうか、あの二人なら誰が何と言おうと現場で救出活動してそうだ。
それとも案外、黒の騎士団を追い詰めてるとかね。」

その瞬間、ビクリとスザクが反応する。
おや?とジノが不思議そうな顔をすると、じろりとスザクの翡翠色の瞳が横に動いた。
その意味が分かって、彼は再び面白そうに笑う。

「スザク、もしかしたらリリィがゼロを倒しちゃうかもな。あいつ強いし。」

わざと茶化すように言うと、スザクの瞳がさらに鋭くなった。
彼が何かにイラついているように思え、ジノはパッと組んだ肩を放す。
スザクはジノ以外には聞こえないような声の低さで言った。

「それは許さない。ゼロを殺すのは僕だ。」

そのままスタスタとスザクは部屋から出て行ってしまった。
「なんだよ……冗談なのに。」とジノはふくれっつらで呟く。

スザクはバタンとドアを閉め、一気に走った。庭園へと。
リリィと話をした場所へと。
あそこは綺麗だ。たくさんの色で溢れている。
リリィが教えてくれた色が、たくさんたくさん………。

ピンク色は花の色。

緑は草の色。

青は空の色で、白は雲の色。

そしてオレンジ色は――――――太陽の色。彼女の色。彼女の命の色。僕の安らぎの色。

スザクは大地を踏みしめ、空を見つめる。

リリィがゼロを倒すなんてあり得ない。
だってゼロはルルーシュで、ルルーシュはリリィの……初恋の人。
もういなくなったと思い込んでる人物。
そんな人物が生きていたら、誰だって殺さない。
彼女は、ルルーシュのもとへ、行くだろうか………?
いやだ。離れていかないで、リリィ

『スザク。泣きたくなったら、また私を頼ってくれていいから。』

スザクがリリィを好きだと思った日、彼女は優しくスザクにそう言ってくれた。
彼女が本国からエリア11へと旅立つ日、涙を流すスザクを彼女は支えてくれた。

リリィ、僕ね、今すごく泣きたいんだ。今すごく君に会いたい。
僕はこんなにも君を求めている。だから………ルルーシュと、ゼロと会わないで。
黒の騎士団なんかと戦わないで。関わらないで。代わりに僕が全部敵を倒すから。」

スザクの小さな悲鳴は、青い空へと吸い込まれる。

この声が、エリア11にいる君に届くだろうか………?


***


「私は戦う。間違った力を行使する全ての者たちと。
ゆえに、私はここに合衆国日本の建国を再び宣言する!!!
この瞬間より、この部屋が合衆国日本の最初の領土となる。
人種も宗教も問わない。国民である資格はただ一つ。正義を行うことだ!!!」

演説するルルーシュの声が高らかに響いた。
テレビでこんな演説が流れているとも知らず、リリィとライは救出活動を行う。
怪我をした人がたくさんいた。
アカシャとランスロット・クラブの力を利用して、瓦礫に埋まった人々を救出する。
死んでしまった人もたくさん見た。そのたびにリリィは心を痛める。

「次に生まれ変わる時は、あなたにたくさんの幸せが訪れますように。」

そう願って、リリィは死んでしまった人の瞼を己の手でおろす。
冷たかった。彼女の熱を奪ってしまいそうなほどひどく。

リリィ!!!手伝ってくれ!!!ここに人が埋まってるんだ!!!まだ生きている!!!」

「本当っ!?今行くわっ!!!」

膝の土を払って、リリィはライのもとへと急ぐ。
初恋の人・ルルーシュが、ゼロとして合衆国日本を建国したことも知らずに。
懸命になって人の命を救う。
瓦礫の中からはブリタニア軍の兵士や、巻き込まれてしまったイレブンが這い出てくる。
怪我をしているが無事だった。

「よかった…………。」

ほっとするリリィだが、このあと更にひどい結末が待っていた。

人間とは自分の命が危険にさらされた時、常に自分を第一に考える。
弱者は排除される運命にある。
その流れは、絶対に変わらない。だから、イレブンである日本人も……………。



主よ、永久の憩いを彼らに与えたまえ。主よ、憐れみを与えたまえ。


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