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IC #13


疲れきった体を政庁まで引きずってくるリリィとライ。
これではっきり分かった。ゼロが復活したのだと。
ゼロは死んでない。また戦争が始まると、そう考えただけでリリィの胸に悲しみが広がった。

いつの時代にも戦争はあった。
悲しい歴史を繰り返し、何度も何度も後悔したのに、人間はその悲しみを、後悔を忘れてしまう。
その戦争に自分も加担しているのだと、そう思うと吐き気がする。
自分が戦争に加担しているのは、罪を忘れないためだと、そう思ってきた。
だけどそれはただ…………理由をつけているだけ。都合のいいように………。
ふらりと体がぐらついた。

リリィっ!!!」

ライの声が鋭く響く。彼女は前を歩いていたライに手を伸ばした。

届かない…………。

リリィはぎゅっと目を閉じ、来るべき衝撃を待った。
だけど訪れたのはもっと違うもの。懐かしい香りと優しい抱擁だった。

リリィ…………。」

耳元で名前を呼ばれる。涙が出るような懐かしい声で、リリィはそっと目を開いた。
ふわふわの髪の毛に、優しい笑顔がそこにあった。

「スザ、ク………?」

ためらいがちに名前を呼ぶと、彼の笑顔がますます緩む。

「どっ………どうしてスザクがっ!?だってスザクは本国で…………」
「うん、会いに来たんだ、リリィに。」

さらりと言ってのけてしまう彼に、リリィは口をパクパクさせた。
今までこんなふうに男の人に抱きしめられたり、甘い言葉を囁かれたりしたことなんてなかった。
だから彼女は恥ずかしさで目を白黒させる。

「スザク……は、放し…………」

放してと、そう言いかけた時、リリィは気付いてしまった。
スザクの肩が、少し震えていることに。うわごとを何度も何度も繰り返すスザクに。

リリィ、泣いてもいいかな。君の腕の中で。
弱さを見せることができるのは、君だけなんだ。」

痛いほどに抱きしめてくる。
何かにすがるようにスザクがリリィを求めてくる。
彼女は大きく手を広げて、自分よりも大きい体を優しく包み込んだ。存在はこんなにちっぽけなのに………。

「ありがとう………。」

彼はリリィの行動を察して肩に顔をうずめた。
息をすればリリィの香りがする。体を密着させれば、リリィの熱を感じる。
今、こうして――――――――。

その光景を見たライは、そのまま静かに立ち去る。
スザクの弱い姿を見るのは卑怯だと思ったから。だって今はまだ、スザクはライに心を開いていない。
コツコツと靴音を響かせながら歩いていくと、ふいに誰かから声をかけられた。

「久しぶりだな、ライ。」

華やかで明るい声。ライは声の主のほうに視線をうつし、眉を下げた。

「やぁ、ジノ。君も来てたんだね。」

軽く片手を上げて挨拶をする。一つ年齢の下のジノは、ライよりも少し身長が高い。
まるで彼よりも年上に見えるが、二人は同級のようにつきあってきた。
たとえライがジノよりも身分が高くたって、ライはえばったりしないし、ジノはライに対してへりくだったりしない。あくまで対等。

「皇帝の命令でさ、初のエリア11だ。まぁスザクはゼロを殺したくて仕方ないみたいだけどさ。
それよりも、いろいろ大変みたいだったな………。」
「うんまぁーね。まさかゼロが生きていたなんて思わなかった。
でも一番大変なのはギルバートさんだよ。あの人はカラレス総督の代理だからね。」

二人は政庁の一角にあるテラスに移動した。
そこから見える庭園に視線を移し、ライは小さく「綺麗だ。」と呟いた。

「そっか、カラレス総督………亡くなったもんな。」

弱弱しくジノが言った。そのまま二人の間から言葉が消える。沈黙が流れた。

「僕はリリィのことも心配だけど………。」

ふいに口を開いたのはライのほう。
彼は自分やブリタニアのことよりも一番リリィが心配だった。
ふらふらになるくらいまで戦って、さっきだって倒れそうになっていた。
そんな彼女を支えたのはスザク…………。

「お前はいつだってリリィの心配ばっかじゃんか。そろそろライもリリィ離れしろよな。」
「それは無理だよ。だって彼女は僕の光だからさ。」

はははと笑って、ライは空を見上げた。
そう、リリィはライにとっての希望の光。
あの時手を差し伸べてくれたのはリリィであり、彼はリリィのために生きてきた。
だけどもう………………その関係は変わらないといけないのかもしれないと、ライ自身は思った。

彼の―――――――――枢木スザクの存在を見て。

彼の瞳は恋をしている。リリィに対して。
リリィを独り占めしたいとスザクの目が語っていた。
きっと彼は、リリィなしでは生きていけないだろう。
彼もライと同じでリリィに救われたうちの一人。
辛いほどまでに彼の気持ちが分かる。なぜならライも………………

リリィに恋をしていたから。

でも、その気持ちはもう忘れた。ライにとってのリリィは家族で、友達で、仲間。
それにライはギアスを持っている。ギアスは人を超えた力。
そんな力を持つ自分と結ばれたとしても、きっと彼女を幸せにするなんてこと、絶対にできないと思ったから。

ライはギアスを得た時の記憶を持っていない。
だけど昔の自分はきっと、それを犠牲にしてギアスを得たのだという確信はあった。
ギアスの力を持つ者に、幸せは絶対に訪れない。
その運命に、リリィを巻き込みたくないから……………。
だから彼は、彼女を想う気持ちを、そっとしまった。
代わりに「家族」として、たくさんの愛をリリィに捧げると誓いながら…………。

「でもさ、そのうち僕もリリィ離れできるようがんばるよ。スザクの邪魔をしたくないからね。」

にこやかに言うライに、ジノは「やっぱりお前も気付いてたか」と呟いた。
そう、枢木スザクはリリィ・ルゥ・ブリタニアに恋をしている。
だけどリリィはきっと、そのことに気付いていない。
二人は顔を見合わせて苦笑する。「スザクはきっと苦労するだろうな」と。


***


リリィはベッドの上に座って資料に目を通していた。
センスの良い家具とふかふかのベッドが部屋の高級感を出していた。
広い部屋で、テラスつき。テラスに出れば綺麗な星空が見えるだろう。

ふぅっとリリィは文字から目を離して上を見上げる。
天井にブリタニアの国旗が貼ってあった。青色にオレンジ色、そして獅子が描かれている。
リリィはこれまで3種類の国旗を見てきた。
ブリタニア本国でただ一つはためくブリタニア帝国の国旗。
アルビオン―――――――エリア7ではためく2つの国旗。
まだアルビオン国と呼ばれていたときにはためいていた国旗と、ブリタニアの国旗が双子のように並んでいた。
そして3つ目は血と土に汚れた日本の国旗。白地に赤い丸が一つの簡素な…………。

横でごそりと一人の人物が動く。
ナイトオブセブンの格好のままの枢木スザクだった。
最近眠れていないのか、自分にあてがわれた部屋につくなり彼はベッドの上に崩れ落ちたのだ。
ちゃっかりリリィのマントの裾をつかんだまま…………。
彼は今もリリィのマントを掴んで眠っていた。
リリィは様子を見に来たライに資料を渡されて、そして今に至る。
彼女がベッドの上に読みかけの資料を投げると、ばさりと紙独特の音がした。
足を投げ出して上を見たまま考える。

あの時、紅い機体が邪魔をしなければゼロを捕まえられただろうか?
彼を捕まえたならば、無駄な血を流さずにすんだだろうか?
いや、きっとそれは無理な話だろうとリリィは思った。
ゼロを捕まえてもこの国は何も変わらない。イレブンはこれまでと同じように虐(しいた)げ続けられる。

じゃあどうすればいい…………?

彼女は目を閉じて考えた。
胸の奥で口にしてはならない言葉が浮かんだ。ごくりと白い喉をならす。考えてはダメ。それだけは………。
でも、一番その方法がてっとり早く適切に思えた。
そう、この国が変わるには…………神聖ブリタニア帝国など、なくなってしまえばいい。

リリィはハッと目を開く。
だめ、その考えは自分の父を裏切る行為。シャルルはリリィにとって大好きな父親。
だけど最近彼女は父が何を考えているのか分からない。侵略を押し進める父が、自分の知らない父に思えた。
どうして父はそんなにも侵略を進めるのだろう?彼は何を欲しているのか。
彼の侵略は、ギアスと何か関係があるのか…………?

「ん…………リリィ……。」

不意にスザクが眠ったままリリィにすり寄る。まるで母親に甘える子どものように。
こんなふうに、おだやかな顔をして皆が眠れるようになるために、自分は今、何をしたらいいのか…………。
リリィには戦いしか思いつかなかった。
でも命を奪う戦いじゃない。反逆という名の戦いでもない。
エンジェルズ・オブ・ロードは自分の意志で動ける。この行動はいつか、自由と平等に結びつくようにと信じて。

「スザク、私行くね。自分にできることをしに行くわ。
今必要なのは現場に行くこと。ギルバート様のお手伝いをすること。
だけど私はいつでもあなたを支えるから。だから安心して。」

スザクの髪を撫で、自分のマントを彼にかける。そのまま静かに部屋を出た。
まずはこちらに来たジノとアーニャに声をかけようと、足をラウンズの部屋へ向ける。
ちょうどそんな時だった。ポケットに入れたままの携帯がバイブする。
足を止め、上着のポケットから携帯を取り出す。画面には『Rolo』の文字。
ああそういえばとリリィは思う。先ほどの事件の前、彼からは電話がかかっていた。
ロロに電話をかけなければと思ってはいたが、こんな事件のあとなのですっかり忘れていたのだ。
携帯の通話ボタンを押して、リリィは電話をかけた主の声を呼ぶ。

「ロロ…………?」
「………………。」

返事がない。
彼女は不思議に思い、もう一度口を開こうとした時、少年とは思えないほどのか細い声でロロがリリィの名前を発した。

リリィ………姉さん………」
「ロロ?どうしたの?大丈夫………?病気でもしたの?」

彼の声を聞いてリリィの胸に不安が一気に押し寄せる。
元気のないロロ。病気ではないのは確実。
でも彼を傷つけそうで、ストレートにはたずねられなかった。
ロロは心の動きに関しては敏感だから。リリィはロロが話出すのを待つ。
今声をかければなんとなく、ロロを傷つけてしまいそうな気がした。

「姉さん………僕の……僕の家族は………僕っ!!!」

取り乱したように荒い呼吸をして電話口から聞こえる声。その声に眉をひそめるリリィ
ロロがおかしい。こんなに取り乱したロロを見たのは久しぶりだ。何があったのだろうか?
リリィはとりあえず彼を落ち着かせようと、静かに「大丈夫よ。」と繰り返す。
そうすればロロの荒い呼吸は次第に引いていき、混乱した声もやんだ。

「ロロ、何があったの?今どこ?今住んでる家にいるの?」

混乱の収まったロロにリリィが尋ねると、彼は小さい声でただ一言いう。

「姉さん………会いたい。今、姉さんに会いたいよ………!!!」

まるで安らぎを求めるように、救いの手を伸ばすようにロロが小さく叫んだ。
一体彼の身に何があったというのだろうか?
理解できないまま、リリィがロロに対して話かけようとすると、ロロは早口で「アッシュフォードの近くにある公園の噴水のところにいるから。」とだけ告げ、そのまま電話を切った。

「え…………?ロロ……?」

突然すぎた言葉に驚きつつリリィは相手の名前を呼ぶが、聞こえるのは電話が切られたあとの虚しい通話音だけ。
彼女は携帯から耳を離すと、画面を見つめたままその場に立ちすくむ。

今やるべきことは、ギルバートと一緒に現場を走り回ること?

それとも大事な弟に会いに行くこと?

選択肢は二つ。答えはもちろん前者………と言いたいところだが、リリィはあえて後者を選択した。
それはロロが大事な弟で、かけがえのない存在だから。
ロロには本当の家族がいない。だからなおさら、彼が苦しんでいる時は隣にいたかった。
それが姉としての役割だと、信じていたから。たとえ血がつながっていなくても………。

携帯を見つめていたリリィは、すぐに別の番号を押して電話をかけた。
ライに伝えなければ………。ロロのところへ行くと。ロロに会いにいくと。
数回のコール音ののち、何も知らないライが電話に出た。
最初リリィの話をきいて声をこわばらせたが、すぐに「分かった。」という返事をするライ。
彼女は「ありがとう。」と伝え、電話を切った。



リリィからの電話をもらい、ライは声を声をこわばらせた。
彼は確かに感じていたのだ。あの場で、ロロのギアスを。短い時間だったけど、確かにあれはロロのギアスだった。

「ロロ………。」

なぜ監視の仕事のはずのロロがあの場にいたのか。
なぜギアスを使ったのか。

ライはなぜか、急激に不安を感じてならなかった。




人間は多くを欲しがるが、必要とするのはごくわずかです。
(ゲーテ)


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