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IC #14


ロロから連絡をもらったリリィは目立たない普段着に着替え、アッシュフォード学園の近くにある公園に来ていた。
もうすっかり夜もふけているので人は見当たらない。整備の行き届いた公園には、噴水の立てる音だけが響いている。
噴水のところまで全力疾走し、近くまでくると膝に手をついて呼吸を整えた。
同時に自分の弟の姿を探すが、彼の姿はどこにもない。

「ロロ…………どこに行っちゃったのよもぅっ……。」

上体を起こして湧き出る水に目線を向ける。
月の光を浴びて、一粒一粒がきらきらと輝いていた。眩しい………。
その光を、自分は見てはいけない感覚に陥る。だって…………汚れているもの。
リリィが噴水を見つめたまま目を細めた時だった。

「ねえ…………さん。」

言葉と同時にギュッとお腹に腕がまわされた。
背中に軽い衝撃があって、それが人間の頭であるとすぐに気付く。

「ロ、ロ……………?」

そのままの状態で名前を呼ぶと、お腹にまわされた腕にもっと力が入る。
かすかに体が震えていたので、リリィは優しく彼の手に触れた。
電撃が走ったようにピクリとロロの体が反応する。

「どうしたのロロ?何か怖いことがあったの?」

彼の手を撫でながらリリィが聞く。
しかしロロは声を震わせるばかりで何もしゃべらない。
「ロロ。」ともう一度彼の名前を呼んだあと、お腹にまわされた手をゆっくりとほどき、後ろを振り向く。
ロロの肩が震えている。顔は下を向けた状態なので彼が今、どんな表情を浮かべているのか分からなかった。
リリィは大きく手を広げ、ロロを優しく抱きしめた。
背中を上下にゆっくりとさすってやり、耳元で囁く。「もう大丈夫よ。リリィ姉さんだよ。」と。
そうすれば、ロロがぴったりと体を密着させ、リリィの胸に顔をうずめ小さく泣き出した。
何回か嗚咽を繰り返しながら………。

しばらくロロは泣くと、ぐったりリリィに体を預ける。
不意に訪れた重みに一瞬リリィはたじろぐが、なんとかもちこたえ、彼をつれて近くのベンチに移動する。
ロロを隣に座らせる。頭はリリィの膝の上に置いた。
すやすやと正確に動く胸を見て、リリィは苦笑しつつも微笑む。
ロロに一体何があったのかは分からない。
だけど彼が何かによって、極限まで追い詰められていたのは分かった。

「全く、ロロもライと同じね。一人で抱えこむところは、本当の兄弟みたいにそっくり。」

優しく髪をさわる。くるんとしたクセ毛が指に絡みつく。

「ロロ、私はあなたの本当の姉ではないけれど、少しはあなたの苦しみを和らげることはできたのかしら…………。」

独り言のように呟く彼女の言葉は、噴水の音でかき消された。
リリィはロロの髪から手を離し、自分のポケットへ手をずらす。
無機物に指がふれ、リリィはそれをつまみあげる。
ボタンを押し、携帯を耳にあて相手が出るのを待った。

リリィ………?』

落ち着いた少年の声が携帯から聞こえ、彼女はそっと息を吐く。
ライの声を聞くとなぜだか安心できるのは、彼がリリィの家族のような存在だから。

「ライ、ちょっと来て欲しいの。
ロロには会えたんだけど、なんだか酷く疲れてたみたいで。この子、公園で寝ちゃったのよ。
私の力じゃロロを連れて帰れないし…………。」
『それは僕に、ロロを連れて帰って、僕の部屋に一晩泊めてあげて欲しいって頼んでるのかな?
でも大丈夫かな。任務といえど、今のロロにはちゃんと住んでる家がある………。そこの家の人が心配しないかな………。』
「それもそうだけど…………」

ため息をついてロロを見ると、膝の上で天使のような寝顔を浮かべていた。
片方の手はしっかりリリィの左手を掴んでいる。
無言の彼女にライは苦笑して答えた。

『………まぁ、朝早くにたたき起こして帰らせればいいかな。
たまにはロロにも他人から怒られるってことをしてもらわなくちゃね。
それに……………また何か抱え込んでるんだろ?僕たちの弟は…………。』

苦笑気味の声が急に優しくなる。
やはりライは鋭いとリリィは思った。まるで心を読み取るように彼は心情を言い当てる。
自分が苦しい時、いつだってそばにいてくれた。「大丈夫だよ」と、声をかけてくれた。
本当の兄弟ではないけれど、そうしていつも三人一緒で暮らしてきた。
たまには………三人一緒の夜があってもいい。

「………ごめんね、ライ。いつもあなたには迷惑をかけるわ。」
『いいんだ。僕だってリリィにもロロにも迷惑をかけてる。おあいこだよ。
それじゃあ今からそっちに向かうから。たまには僕も、三人一緒の夜がいい。
ロロをはさんで、三人一緒にベッドで寝たい。どうせロロにリリィをとられるんだろうけど。』
「もうっ!!!そんなこと言ってないで、なるべく早く来てね。」

そこでリリィは電話を切る。
空を見上げれば、大きな丸い月。満月だろうかと彼女は思う。
そういえば昔、自分が育った島で祖母から聞いたことがある。
満月の夜には妖精たちが傷ついた人間の心を癒すのだと。彼らは優しい声で歌をうたい、人間の心の傷を癒す。
もしも自分にそれができたらどんなにいいか…………。

リリィは満月に向かって小さく歌いだす。遠い昔、母が生きていた頃教わった、おまじないの歌。
ブリタニア語やアルビオン語、日本語とは違う言語が紡ぐ優しい歌。
どこの言語なのか知らないし、意味も分からない。だけど………とても心にしみる歌。

「ねえ………さん、そのうた…………」

今まで眠っていたロロが、薄目をあけてリリィを見上げていた。
彼女は優しく頭をなで、透き通る声で言う。

「これは魔法の歌なの。ロロはこれで元気になれるから、今はおやすみ。
ライが迎えに来てくれる。ライが来たら、今夜は三人一緒に寝よう?昔みたいにね………。」

こくんとロロが頷いて、静かに目を閉じた。



その晩、ロロはアッシュフォード学園にある家には帰ってこなかった。

ルルーシュは暗がりの部屋でイスに座りコツコツと指をならす。

どうしてロロは帰ってこない?

家族のいないロロに甘い言葉を囁き、自分は兄であると認めさせた。落ちた、とあの時確信した。
今どこにいるんだロロは。どうして連絡もよこさない?携帯にかけても留守電ばかり。
ルルーシュのイライラはつのる。
とにかく明日ロロを見つけ次第、どこにいたのか問い詰めるしかない。
そうルルーシュが考えていると、部屋の扉が開く音がした。

「ルルーシュ。ロロはまだ帰ってこないのか?」

黒い服に身を包んだC.C.だった。彼は視線を動かさず、口も開かなかった。
C.C.はそんなルルーシュを無視したまま窓に歩み寄る。
大きな満月を見て、ルルーシュに聞こえないくらいの声で呟いた。

「………歌を聴いた気がする。優しい歌だ。
私がまだ、マリアンヌとともに生きていた頃に聴いた歌。誰かが歌っていた………。」

C.C.は目を閉じる。
マリアンヌの横で誰かが笑っていた。髪の長い女性が。
彼女は普通の人間ではなかった。何か力を持っていた気がする。
そして彼女のお腹には、確かに命が宿っていた。その命はやがて世界を動かす予感をC.C.に与えていた。
あの命は、今この世界に芽吹いているのだろうか。




きみは せめて 優しい平和となってくれるだろう。
(セーブ)

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