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IC #64


虫の知らせ・・・という言葉がある。
これは人間の五感以外のもの・・・第六感に関係している言葉である。
もしかしたら私の妖精としての力も、この第六感と同じなのかもしれないと、リリィは考えた。

(嫌な予感がする・・・・)

妖精の力が反応したのかどうか分からない。ただ、そう感じてリリィは朝早くに目を覚ました。
同時に、ライが帰ってくるような気がして、パジャマの上にカーディガンをひっかけた格好のまま、彼女はナイトメアの格納庫へ向かった。
その途中でシルバーの髪の少年を見つける。向こうから歩いてくる少年も、リリィに気づいた。
そのまま少年は、いつもと変わらない笑みを浮かべながら軽く片手を挙げて言葉を紡いだ。

「やぁ、ただいま。」

シルバーの髪が、朝日に照らされて綺麗に光る。身長の高い彼を、リリィは見上げた。
笑みは変わらないが、いつもと顔つきが違った。
自分がエリア7に帰り、妖精の力のことや母の死の真実を知った間に、ライ自身にも変化があったのかもしれない。

まるで何かの答えを得たような感じの顔つき。
何かの決意をしたような感じの顔つき。

「ライ・・・。今までどこへ行ってたの?ナイトメアごと消えちゃって、私心配したんだから!」
「ごめん・・・。ちょっと自分探しの旅に出てさ。」

自分探しの旅。それは彼が、自分の記憶を求めたということだろうか?

「自分探しの旅?そう・・・なんだ。なんか、その成果はあったみたいね。顔つきがいつもと違うわ。」

リリィがそう言えば、ライはさらに目元を和らげた。
そのまま小さく呟く。

「うん、おかげさまで。僕は、僕としての生き方を決めてきたんだ。
リリィ、この先もずっと君と一緒にいたいと思ってる。よき仲間であり、よき兄妹でありたい。
そして・・・君の、よき剣でもありたいと思ってる。リリィ皇女殿下、あなた様に変わらない忠誠を・・・。」

ライはリリィの前で片膝をつく。目を丸くして驚いているリリィを見ながら、ライは思った。

(僕と僕の中の彼が望んだ世界は、今のような世界じゃない。
僕たちが望んだ世界を作り上げられるのは、今の皇帝陛下じゃない。
気高く、僕たちの精神を受け継いだ僕の子孫・・・・。リリィならきっと・・・・。
そのために僕は、リリィを守るよ。この命に代えてでも・・・・!)

ぎゅっと拳を握った瞬間、彼の中でドクンと鼓動がする。
彼が・・・U.U.が、大きくうなずいたのかもしれないと思った。


* * *


ライが戻ってきてから数時間後のエリア11。
とある会議室で、集まったブリタニア関係者たちは息を飲んでいた。

「ブリタニア皇帝陛下が行方不明!?」

ギルバートとセシルの声が上がったのを合図に、ナナリーが震えるような声でことの詳細を伝える。

「はい。先ほど、シュナイゼル宰相閣下よりご連絡をいただきました。
当面はここにいる方々だけの話とさせて下さい。帝国本土でも、ごく一部の方々しか知らされていないようですから・・・。」
「何があったというんですか?」
「今は調査中ということで・・・・」

ギルバートやナナリーの声が飛び交う中、最愛の妹の横でリリィは呆然としていた。

(お父様が・・・行方不明・・・・?)

まるで夢を見ているようだった。
幼い頃、父とかくれんぼをして遊んだときの記憶がよみがえる。
子供の頃の自分は、姿の見えない父を泣きそうになりながら探した。震える声で「お父様」と叫び、庭園を駆け回った。
不安に押しつぶされそうになり、涙が出そうになった瞬間、ふわりと力強い腕に抱き上げられる。
優しい顔で「ここにいるよ」と言う父に、ぎゅっと抱きついた幼い頃。
母が亡くなってから、あんなふうに穏やかな表情をしなくなった父。

(お母様に続いて、お父様までいなくなったら・・・・。)

不安で震える手に、そっと手が添えられる。隣に座っていたライの手だった。

「ごめんね、リリィ・・・・」

彼はか細い声でそう言った。

(なぜ、ライが謝るの?)

謝罪の言葉が彼から紡がれた理由は分からなかったけれども、少しだけ不安が薄れる。
少しほっとしているリリィを見ながら、ライはもう一度、心の中で謝った。

(ごめんね、リリィ。きっと皇帝陛下は、あの時向こうの世界へ置き去りに・・・・)

ライがリリィの手を握る中、混乱は続いている。

「お待ちください。中華連邦への攻撃準備は・・・・。」
「皇帝陛下が中華連邦へ宣戦布告をされなければ、こちらからは手が出せません。」
「治安の問題もあります。こんなことがナンバーズに知れたらことですから、方針を決めていただかないと。総督はナナリー様です。」
「それは・・・・・」

いくつも積み上がる問題に、ナナリーが困った声を上げ、隣にいるspan class="1">リリィのほうを向く。
同じ皇族。でも、彼女は実戦を経験しているし、自分よりも世界の動きを良く知っている。
そして、皇帝陛下直属の部隊・・・エンジェルズ・オブ・ロードの一人。

「お姉様・・・・・」

ナナリーの不安そうな声を聞き、リリィはハッとした。
皇帝陛下を失って、不安なのは自分だけじゃないと気づいた。
この国のトップが突然いなくなって、不安なのはみんな同じなのだ。
本国にいる兄のシュナイゼルをはじめ、オデュッセウスもギネヴィアたち皇族も、きっと・・・。
それに気づいたリリィは、ナナリーに代わって凛とした声を張り上げる。

「ここで今、責任の押し付け合いをしても意味がありません。
お父様が・・・皇帝陛下が不在な以上、この件に関しては私たちだけで決めていくしかありません。」

彼女の言葉を聞きながら、スザクは皇女の顔つきとなったリリィを見つめる。
こんなとき、彼女がとても遠く感じる。
不安でいっぱいな彼女を、今すぐにでも隣で支えたいと思っていても、身分も違えば立場も違う。
なにもできない自分をはがゆく思った。

(実の父親が行方不明だなんて、リリィはどんなに不安だろう・・・。
でも・・・・皇帝陛下がいないということは、ナナリーの命は助かったということ。喜んでいいんだろうか・・・・?)

リリィとナナリーの顔を見比べて、スザクは複雑な心境になった。
これから一体、この世界はどうなっていくのだろうか・・・・?
指導者を失った日本のように、ブリタニアも崩れていくのだろうか?
ゼロという、異端によって・・・・。


* * *


ブリタニア皇帝が行方不明になったことにより、ルルーシュはブリタニアの動きが止まったのを喜んでいた。
そして、ナナリーの無事にもひとまず安堵する。しかし、C.C.のことについては安堵できなかった。
完全にギアスにかかる前の少女に戻ってしまっている。「ひどいことしないで」と、怯えながら言う少女。
あの勝気な魔女はどこへ行ったというのか・・・。

同時刻、黒の騎士団内でも、不穏な空気が広がっていた。
ナイトメアについた血のあとを見て、怪訝な顔をする朝比奈。
ゼロからの任務について木下に問いただしても、現れたロロによって真実は隠される。

「黒の騎士団における個人の価値は、どれだけゼロの信頼を得ているかによって決まります。」
「僕の価値観と違うね・・・・」

2人の視線が静かにぶつかる。でももう、進むしかないのだ。
いくら黒の騎士団の中で不穏が起こっていようとも、時間がない。
皇帝がいない間に・・・ブリタニアが動く前に作り上げなければならないのだ。超合衆国を。
そうしなければ、今のブリタニアに匹敵する力は得られない。
幸いにも、ブリタニアから殖民エリアとなった亡命政権からも参加表明が数多く届いている。
つまり、解放戦争という名の大義名分を得たこととなった。

「正義の戦争か・・・・・。」

そう呟いた藤堂の脳裏に、かつての幼い少年少女がよみがえる。

『ルル様とナナリーを殺した日本人なんか、死ねばいいのよ!私の正義で、あなたたちを裁く!』

幼い彼女のセリフを、藤堂は叱咤した。だからといって、罪のない人を殺すな・・・と。
それは正義ではない。ただの自己満足だ・・・・と。

(今の私は、あの時の彼女と同じことをしているのかもしれない。あの時偉そうに語っておきながら・・・。)

「来るべき日本奪還作戦においてわれわれが勝利をおさめれば、いまだ様子見をしている勢力もこちらへ寝返ってくる!
しかしそのためにはブリタニアが動く前に超合衆国を作り上げなければならない。
時間が勝敗を決める。各国を代表する諸君らにもいろいろ言い分はあるだろうが、協力をお願いしたい。全ては世界の趨勢(すうせい)に決着をつけるために!」

ゼロの演説に、大きな歓声と拍手が沸き起こる。
それにびっくりしたC.C.はテレビのリモコンをいじってしまい、チャンネルが切り替わる。
画面に男性キャスターとミレイが映っていた。
お天気お姉さん以外にも、お昼のワイドショーのキャスターを務めることとなったミレイ。
彼女の口から、最初のトピックスが告げられる。

『なんと、大人気の歌姫が突然の活動休止宣言!?一体どーいうことなんでしょうねー?これから一緒に、詳しく見ていきましょー!!』

C.C.がその番組を驚きながら見ていると、ルルーシュがピザを持って戻ってくる。
魔女であったかつての彼女は、ルルーシュから『ピザ女』と呼ばれるほどピザが好きだった。
魔女でないC.C.は、おそるおそるピザを食べる。彼女の表情が変わった。
ピザが気に入ったようだ。記憶はないが、体は覚えているというのだろうか・・・?
ルルーシュはピザをほおばるC.C.を見ながら、テレビに視線を移す。
ミレイがへんな格好をして、活動休止を発表した歌姫について騒いでいた。

「会長、キャラの作り方を間違えてますよ・・・・。」

ピッとテレビを消す。C.C.が再び、ビクンと驚いた。
そう。今の彼女はテレビを知らない。テレビのない時代で生きていたC.C.。
それを考えると、彼女がどれだけ長い時間を生きていたのか思い知らされる。
果てることない、時の流れ。死なない積み重ねを、人生とは言わない。それはただの経験だ・・・と、C.C.は言った。
そう言った彼女自身の記憶は、今どこに・・・・?
魔女よ。そして共犯者よ。早く戻ってきてほしい。
静かに目を閉じて、ルルーシュは願った。


* * *


「よかったのか、リリーナ。歌うことはお前の全てじゃなかったのか?」
「突然活動を休止してしまっては、お前のファンは悲しむんじゃないのかのぅ・・・・」

老人2人の言葉を聞きながらも、一人の女性が騎士服に袖を通す。
紺色のマントをつけ、ゆるいウェーブのかかったシルバーの髪を外へ出す。
大きくくりっとしたブルーの瞳。赤い口紅をさし、つやのあるぷっくりとした唇。
その唇が、真剣な声で言葉を紡ぐ。

「おばあ様、おじい様、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!
お父様がいなくなったのよ。それに、おばあ様だっていつまでも若くはないの。
世界の動きが激しい中、そんな歳でエリア7の総督なんかされたら、こっちがヒヤヒヤしちゃう!戦争にだってなりかねないし・・・・。
それに、リリィも皇女として頑張ってるんだから、私も頑張らないといけないかなーっと思ってね。」

女性はパチっとウィンクする。それを見て、エリア7の総督をつとめていたモルガンは大きくため息をついた。
歌姫として世界中を飛び回っていた孫娘が、急に故郷へ戻ってきて、モルガンの代わりに総督をやると言い出したのは、リリィがエリア11へ戻ってからすぐのことだった。

彼女の名前は、リリーナ・ルゥ・ブリタニア。
クラエスとブリタニア皇帝の娘であり、リリィの実の姉である。
リリーナは『クイーン・リリーナ』名義で歌手をしていた。

クイーン・リリーナは世界中に数多くのファンを持ち、過去最多のライブ動員数を記録している。
もちろん、彼女がブリタニア皇族であることは知られていない。

「しかし、クイーン・リリーナがブリタニア皇族であることが分かってしまっては、さすがにまずいのでは・・・」
「その時はその時。とにかく今は大事な時なんだから、少しでもリリィを手伝ってあげないと!よし!じゃあおばあ様、今から総督の引継ぎ作業を頼めるかしら?」

てきぱきと作業を始めようとするリリーナの前で、モルガンは苦笑した。
こういうサバサバした性格は、クラエスに似たのだなぁ・・・と感心さえしてしまうほどだ。
モルガンはリリーナを連れて執務室に入っていく。
彼女から仕事の引継ぎをしてもらいながら、リリーナはかすかに感じていることがあった。

(お父様が不在中、実質的に実権を握るのは、おそらくシュナイゼル。気に入らないわね・・・・。いっとくけど、私がいる限り、このエリア7はあいつの好きにはさせないんだから!)

リリーナ・ルゥ・ブリタニア。
クラエス王妃の長女にして、世界の歌姫。
また、コーネリアと肩を並べるくらいの才能の持ち主である。
聡明な彼女は、兄のシュナイゼル・エル・ブリタニアが大嫌いであった・・・。


私が生まれたのは早すぎたのか 遅すぎたのか?
この世にあって 私は何をしているのだろう?
(ポル・ヴェルレーヌ)


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