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IC #23


朝目が覚めると、隣にスザクがいて、「おはよう。」と微笑んでくれた。
私は驚いて飛び起きる。スザクは慌てて私をベッドに寝かしつけた。
「ダメだよ、君は昨日疲労で倒れちゃったんだから………」、そう言って。
アッシュフォード学園から帰った私は、どうやら部屋で倒れていたらしい。それをスザクが見つけてくれた。
でも………おかしいな。何か大切なことを忘れてしまっている気がする。
昨日誰かに会った。とてもとても大切な人。そう思うのはきっと気のせいね。

だって私の大切な人はもう、この世にはいないのだから………。



コツンコツンとキングの駒をチェスボードに打ちつけながら、ルルーシュはぼうっとC.C.の声を聞く。
並べられたチェスの駒に挟まれるように、ピンクの折り紙が置いてあった。
鶴………。以前ナナリーが好きで折っていたもの。ルルーシュはそれを見つめたままだ。

「ニイガタでの物資受け取りはうまくいったらしい。」
「そうか。」
「しかし、この総領事館に戻る方法がないが。」
「だろうな。」

冷たい返事を返すルルーシュを見て、C.C.は彼に尋ねる。

「………新しい総督がナナリー。戦えるのか?妹と。」

その言葉にぴたりとルルーシュの手が止まる。じろりとアメジストの瞳がC.C.のほうに向いた。
彼女はまっすぐルルーシュと対峙する。ルルーシュはそのまま低く呟いた。

「戦う?ナナリーと?それは何の冗談だ?」

では放っておくのか?とC.C.に尋ねられ、アメジストの瞳は細くなる。そんなの―――――――論外だ!!!
放っておけば、ナナリーはまた昔のように政治の道具にされてしまう。これ以上、妹を苦しめたくはない。
1年前の計画がうまくいっていれば、すでにナナリーのための世界ができていたはずだった。
誰も苦しまない、優しい世界。本当はできていたはずなのだ。枢木スザクさえいなければっ!!!

「歩けず、目も見えない少女。駒として使い捨てるつもりかな?」

C.C.はニヤリと笑って言った。まるでルルーシュを確かめるために。
彼はC.C.の言葉を聞いて怒りに体を震わせた。そして、誓うように叫ぶ。

「そうさせないために俺は行動を起こした!!!そのための黒の騎士団だ。ナナリーのためのゼロなんだっ!!!」

妹の姿が頭の中でちらつく。「お兄様」と言ってこちらに駆けてくる幼い日の少女。
目が見えなくなり、歩けなくなった少女。それでも懸命に笑いかける。
やわらかな、マシュマロみたいな笑顔でいつもルルーシュを癒してくれていた。ずっとずっと一緒にいた。

「それがお前の生きる理由になっていることは知っている。しかし―――――」
「俺はナナリーが幸せに生きることのできる世界を作る。そのためにもブリタニアを破壊する!!!」

カツン!!!とキングの駒が高い音を立ててチェス盤に置かれた。ブリタニアは破壊しなければならない。
ブリタニアがあるからこそ、ルルーシュとナナリーは縛り付けられる。ブリタニアという国に。
それだけじゃない。ブリタニアという国があったために、リリィと離れ離れになったのだ。

スザクの復帰祝いパーティーのとき、学園でいるはずのないリリィと出会った。
最初は驚いたけど、嬉しさのほうが勝った。もう会うことはないと思ってた初恋の人。
だけど長い時間は彼女の何かを変えていた。
目の前の相手がルルーシュだと知っただけで、彼女は震えた。ルルーシュを拒んだ。
何がそうさせるのか彼には分からなかった。何が彼女を変えたのだろうか。グッと拳を握る。
ルルーシュがゼロである限り、ブリタニアと敵対する限り、もう一度リリィと会えるチャンスは来るかもしれない。その時は彼女を捕まえてみせる。もう一度、この手でリリィを抱きしめるっ!!!


***


ナナリーがエリア11の新総督だと聞かされて、リリィは驚いた。
今のリリィの記憶には、8年前の戦争で助け出されたナナリーの記憶がある。でもそれはライが作った偽りの記憶。
彼女が新総督に赴任するということを知っていたライは、ルルーシュの記憶を消した際、ナナリーに関しての偽りの記憶も作った。ナナリーと再会したとき、リリィの心が壊れてしまわないように。
本当はナナリーもルルーシュも殺されたはずなのに、二人はちゃんと生きていた。
ロロの話では、ルルーシュもナナリーもアッシュフォード家にかくまわれたということだった。でも―――――――ここで一つの疑問が浮かび上がってくる。
それでは、あの時目の前で死んだのは一体誰だ?あれは確かにルルーシュとナナリーだった………。もしかして………別人なのか?

ライがそう考えごとをしていると、ぼそりと耳元で誰かに囁かれる。
ふわりと香った香水でそれが誰なのかわかった。ジノ・ヴァインベルグだった。
綺麗に結わえられたみつあみを揺らしてジノがライに尋ねる。

「なぁ、ライ。今度新しくエリア11に赴任するナナリーっていうのは、8年前死んだんじゃなかったのか?
お前だって見たんだろ?目の前でルルーシュとナナリーが死んだところ………。ずっと心配してたんだ。死んだはずのナナリーが生きているなんてリリィが知ったら、彼女、ショックでどうにかなるんじゃないかって。だって8年前の事件のきっかけは――――――」
「大丈夫だよ、ジノ。リリィはちゃんとナナリーのことを知ってた。ただ、生存を公表するわけにはいかなかったから、僕と二人でずっと嘘をついてたんだ。ナナリーは目の前で殺された………そう言って。ナナリーだけは助かった。けど、歩けなくなって目も見えなくなっていた………。
ねえジノ、あんまりリリィにナナリーの話はしないでほしい。あの時のことを思い出させたくないんだ。これは僕からのお願い。」

ライは小さな声でジノに言う。ジノはにかっと笑って「了解。」と答えた。その時ライは心の奥底で謝った。ギアスのことを知られるわけにはいかない。
リリィに偽りの記憶を与えたことも。そのことを知っているのは自分とスザクとロロの三人だけ。
それにしても、なぜ皇帝は死亡扱いになっていたナナリーを新総督に迎えたのだろうか?これも………ルルーシュのギアスのせいなのか?彼は確かにギアスを持っている。

再び考え事の世界へと思考が飛ぶ。その直後、スザクの鋭い声が響いた。
彼の声でライは現実に引き戻される。ふと隣に立つリリィを見ると、彼女も険しい顔をしていた。

「いない!?黒の騎士団が………?」
「ああ。我々も先ほど確認したばかりだ。情報は共有しよう。これで、わが国はブリタニアに敵意はないと分かっていただけるかな。」

困った顔をしたまま、星刻が言った。黒の騎士団がそっくり消えてしまった。しかもゼロも一緒に、ナイトメアごと。
地下の階層から立ち去ったらしく、どこに消えたかも不明。リリィが顎に手を当てて考えている。綺麗な顔立ちにしわがより、「まさか………」と小さく彼女は呟いた。ちらりとライは彼女を見る。

「どうしたの?リリィ。」
「まさかとは思うんだけどね、ライ。ゼロはナナリーのところへ向かったんじゃないのかしら?」

小さい声だったが、周りのみんなにはよく聞こえた。
スザクがリリィを振り返る。表情が厳しかった。ジノも腕組みをしたまま彼女を見ている。
アーニャは携帯ゲームに夢中になったままだった。しかし彼女もちゃんとみんなのやり取りを聞いているのだ。

「その可能性は否定しないよ。ゼロとしては早い段階で新総督を潰しときたいだろうしね。それとも………人質にするつもりかな。どっちにしろ、新総督が危険にさらされる可能性は高い。」
「やられたな。」

ライの言葉に続いてジノが言った。アーニャも携帯ゲームから視線を上げてライに尋ねる。

「お返し、する?」
「………お返しはしないよ、アーニャ。だけどナナリーを助けに行かなくちゃね。」

アーニャの頭に手を置いて、ライは優しく言った。アーニャは少しだけ顔を赤くして小さく頷いた。結論が出た今、時間を無駄にはできない。ジノがすぐに走り出し、ライもそれについていった。
アーニャも携帯ゲームをポケットにしまうと、ナイトメア格納庫へと急ぐ。リリィも3人のあとに続こうと足を向けようとした。しかし誰かに腕をつかまれたあと、グイっと強く引っ張られた。

「きゃっ!!!スザク……?」

小さな悲鳴をあげたあと、温かいぬくもりとふわりとおとずれた香り。
スザクがリリィをぎゅっと抱きしめていた。どうしてこんな状況になるのか分からず、彼女はあたふたと焦る。彼の行動の理由が分からず、「どうしたの?」と問えば、スザクは小さく言葉を発した。

「おまじない………かな。僕が無事に帰ってこれるように。ねえリリィ、僕はずっと君のそばにいるよ。約束する。だからリリィも、無事に帰ってきて。」
「えっ………う、うん。」

どうしてスザクがこう言うのか分からないけれど、リリィはスザクに抱きしめられたまま頷いた。彼の肩越しに星刻が見えてから、リリィは羞恥心を思い出し、ぐいと彼の胸を力いっぱい押し返す。
今更ながら顔を真っ赤にして、すばやくスザクに背中を向けて走りだした。

スザクとしては、リリィのことを心配しての行動だった。ライにギアスをかけられて、リリィは記憶を書き換えられた。
ナナリーだけが生きていると、彼女は思っている。だけど本当はルルーシュだって生きている。ルルーシュがゼロなら、ナナリーを奪い返しに行ったということだろうか?
それともゼロは本当に別人で、ライが言うように新総督を殺しに行ったのか、それとも人質にするつもりか………。
スザクは走り出しながら考える。いずれにしろ、ゼロが誰であろうと彼を殺すまで。その正体がルルーシュなら、スザクははっきりと言うつもりだ。

(俺はリリィを愛している。もしルルーシュもリリィのことを愛しているのなら、お前には奪わせない。)

スザクはデヴァイサースーツを着こんで移動用の飛行機に乗った。ランスロットは今、エリア11に向かう浮遊艦の中に格納されている。彼の横で、次々にナイトメアが飛び立っていく。ジノのトリスタン、アーニャのモルドレッド。
そして二つの機体とは異なった、特殊ナイトメアのランスロット・クラブとアカシャが白い翼を広げた。
アルビオン国・今のエリア7で生まれた第8世代のナイトメア。ライとリリィにしか動かせない機体。二つの機体は白い翼をはためかせ、空へと飛び上がった。ナナリー救出へと向けて。
そこにどんな運命が待ち受けるのか、彼らには知る由もない…………。



魂と記憶とを心の奥に沈めながら、私はただ忘却の岸辺にほろびゆくばかり。
(セーブ)


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