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IC #24


「黒の騎士団がっ!?」
「やっぱり狙いは新総督か………」

ナイトメアを動かしながらリリィとライの二人は唇を噛む。
ナイト・オブ・ラウンズとエンジェルズ・オブ・ロードにロイドから通達が入った。今しがたゼロと黒の騎士団が現れ、ナナリーの乗った浮遊航空艦が攻撃を受けていると………。敵は陸の兵器をつり上げて、浮遊航空艦に降り立ったらしい。
本艦にも護衛艦にも敵が取り付いていて、このままでは危ない状況だと話すロイド。しかし口調はいつもどおりお気楽な口調だった。
ライが素早くキーボードを打ち、すさまじいスピードで指が動いていく。ランスロット・クラブの中はキーボードを打つ音しかしていない。ライ同様、リリィもすさまじいスピードでキーボードを打っていた。画面に膨大な表や図、数字が流れていく。彼らはそれを瞬時に読み取っているのだ。

「また、戦争………か。」

ふと手を止めて、ライは小さく呟く。意識したわけじゃなかった。ただ、自然に出た言葉だった。
そう、また戦争をするのだ。この前は陸上で。そして今回は、青く澄んだ空で。今だってこの澄んだ空のはるか向こうが血で赤く染まっているのだ。

「また人が死んでるのよね………。」

不意にインカムから聞こえた言葉にライはどきりとする。リリィの声だった。悲しそうに呟かれる言葉。悲しそうに吐き出される吐息。それを聞いているだけで胸がキュッと締まった。ライだけじゃない。ジノもアーニャもスザクも。

「戦争が好きな人なんていない。あなたは戦争で何がしたいの?ゼロ。この戦いは、あなたにとって何か重要な意味を持っているの?」

彼女の紡ぐ言葉は一人ごとなのか、それともゼロに対しての問いかけなのか。
とにかく言葉を挟むことができなくて、リリィ以外のみんなは黙るしかなかった。リリィの言葉は続く。

「あなたが戦争を望むのなら、私はそれを止める。あなたが人を殺すのなら、私はあなたを止める。」

そのまま先ほど打っていたキーボードのエンターキーを押す。
リリィの乗るアカシャが、今までよりも大きく翼をはためかせた。グンと前に出る。他のナイトメアよりも速く飛ぶことのできるアカシャとランスロット・クラブ。ジノは少し前に出た二人のナイトメアを見たあと、リリィとライに告げる。

リリィ、ライ、お前たちは先に行けよ。新総督が危険な状態なんだ。」
「いいのか………?ジノ。」

画面に映ったジノを見て、ライが答える。ジノは親指を突き立ててウィンクした。

「ああ。速く行ける奴が速く行ったほうがいい。それに…………もう、ナナリー新総督を失いたくはないだろ?お前たちは、失う痛みを知っているだろ?」

こくりと小さくリリィが頷いた。助け出されたナナリー。失ってしまったルルーシュ。
失う痛みはもうたくさん。何のために戦うのかと聞かれたら、リリィは即答することができる。

大切な人を、失わないために。あの時みたいに、無力じゃない。自分はもう、守る力を持っている。

ギュッと操縦桿を握り、彼女は前だけを見る。今まで固かった表情が柔らかくなり、唇が少しの言葉だけを紡いだ。

「ありがとう、ジノ。私は先に行くよ………。」

その一言だけを残し、アカシャはトリスタンの前から姿を消した。
ライも画面の中のジノに笑いかけ、先ほどのジノと同じように親指を立てて唇を緩める。言葉はなかった。だけどジノは彼のその仕草から、ライの言いたいことを読み取る。

「がんばれ。」

ジノはトリスタンの中で二人に向かって小さく呟く。そのときにはもう、ランスロット・クラブの姿はなかった。


***


なぜか外が騒がしい気がすると、ナナリーは庭園でそう感じていた。自分は歩けないし目も見えない。今だって、外で何が起きているのか分からない。どうしてこんな自分がエリア11の新総督を任されたのか不思議だった。
しかも、電話でのルルーシュとの会話と、ナイト・オブ・ラウンズにまで上りつめたスザクとの会話。矛盾だらけだった。他人のふりをしなければならないと述べた兄。どうして………?そして、そう言ったルルーシュを気にも留めなかったスザク。あの時、何が起こっていたのだろう………?スザクは嘘をついている?それともルルーシュが?
分からなくなり、ナナリーはふぅっと息をつく。同時に小鳥のさえずりが聞こえた。美しく鳴く鳥の声を聞き、ナナリーは自然と表情をゆるめる。

「この小鳥の鳴き声………リリィお姉様と一緒に聞いた………。」

ナナリーは懐かしさに記憶をゆだねた。
まだ自分が幼かった時。母と兄が一緒にいてくれた時。ブリタニア帝国の宮殿の庭で、リリィと共に聞いたさえずり。
「あの鳥は、なんていう鳥?」と尋ねたら、リリィは微笑みながら答えてくれた。
「ナナリーに幸せを運んできてくれる、青い鳥。」………そう言って、彼女は優しく頭をなでてくれた。

「幸せの、青い鳥。リリィお姉様、私はお姉様に会いたい。お姉様は今、どこにいらっしゃるのですか?」

皇族とは離れて暮らしていたため、リリィの所在は分からなかった。
ブリタニア帝国に帰ってきて、周りの人間に初めて尋ねたことは、もちろんリリィのことだった。「リリィお姉様は今どこに?」と問えば、彼女は今、『エンジェルズ・オブ・ロード』の一員だという。エンジェルズ・オブ・ロードはエリア11で活動していると聞いた。
だから、エリア11の新総督に選任されたときは心臓が止まるほどに嬉しかった。エリア11に行けばリリィに会えると、ナナリーは思っていた。

「お姉様、お姉様はお兄様と一緒にいるのですか?お兄様が他人のふりをしなければならない理由は、お姉様と一緒にいるからなのですか?ナナリーは、お姉様に会いに行きます。昔のようにまた、一緒に暮らしましょう………。」

ナナリーはそう呟き、胸の前で手を組む。祈るように。
そんな彼女の元にゼロであるルルーシュが、エンジェルズ・オブ・ロードの一員であるリリィが向かっているとは知らずに。


***


その時、浮遊航空艦の指揮官は焦りを覚えていた。
カルフォルニア基地を飛び立つ前、警戒を強めろと言葉をつげるギルフォードのことを思い出し、今更ながらに自分の返した言葉を悔いた。こんなことなら、ギルフォードも連れて来るべきだったと強く思う。トウキョウ租界から援軍が来るとしても、約1時間はかかるのだから………。
どうやっても、1時間はもたないことぐらい、自分にも分かっている。このままナナリーをゼロに渡してしまったら……。指揮官は抑えきれない苛立ちに、頬を痙攣させた。そんな時、オペレータの驚く声が聞こえる。

「これは…………指揮官っ、トウキョウ租界方面から凄いスピードで飛んでくる機体がありますっ!!!」
「何だとっ!?」

声をあげ、指揮官はモニターで確認する。映し出されたのは白い翼を持った2機のナイトメア。
太陽の光を受け、ブリタニア軍の模様が入った部分が輝いている。その横に、とぐろを巻く蛇のマーク。ハッとする指揮官は、言葉を詰まらせつつ叫んだ。

「エンジェルズ………オブ……ロード………だと?あの皇帝直属部隊が………?」
「指揮官っ、さらに別方向より味方のナイトメアの応援!!!」

オペレータの叫びに目を向けると、そこには自分の望んだ人物の機体があった。
ギルバート・G・P・ギルフォード。彼のナイトメア。その3つの機体を見て、浮遊航空艦の上で戦っていたカレンが瞳を揺らす。そのまま小さく呟いた。

「ナイトメア……?そんなっ、あの機体は――――――!!!」
「さあ、幕を下ろそう…………。」
「決着を付けに来たよ?黒の騎士団、それに………ゼロ。」
「ナナリーはあなたたちには渡せません。」

ギルフォードの機体が急降下し紅蓮弐式を襲う。かわしたと思ったら、今度はランスロット・クラブが剣を抜き、カレンのそばにいたナイトメアの両足を切り落としていた。
ギリリと唇をかみしめるカレンに、今度はリリィの操る機体、アカシャが襲い掛かる。アカシャは薙刀を振り下ろし、紅蓮弐式はそれを後方へと避ける。
リリィはさらに、カレンの行動を予測し薙刀を紅蓮弐式が避けた方向へと素早くふっていた。
ガコンと音を立てて紅蓮弐式が吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直す。カレンはアカシャのデヴァイサーであるリリィに無線をつなげて声を荒げる。

「またあなたなのっ!?邪魔をしないでっ!!!しつこい奴は嫌いよっ!!!」
「……………。」

リリィは何も答えなかった。ただ紅蓮弐式に攻撃を加えるだけ。何も答えないアカシャのデヴァイサーとアカシャの攻撃にイライラし、カレンは叫ぶ。「何か言ったらどうなの!?」と一言。そうすれば、澄んだ声が静かに聞こえる。

「私からまた、ナナリーを奪わないで………。」
「えっ?また………って何のことよっ?」

紅蓮弐式がアカシャの攻撃を避ける。
後方へと飛び、着地した時に目の前にいた味方のナイトメアがハーケンによりはじかれた。疑問に思いハーケンの飛んできたほうを見れば、1つの機体が飛んできていた。

「さあ、おしおきタイムだ。」

その機体はトリスタン。ジノ・ヴァインベルグの愛機である。ナイトメアとはかけ離れた姿に朝比奈が余裕そうに声を上げてにやりと笑う。

「おかしな戦闘機だねぇ~。」

だが朝比奈のそんな余裕もやがて焦りに変わった。
トリスタンは可変型のナイトメアである。戦闘機モードのフォートモードとナイトメアモードの2種類を持ち合わせる。ジノは朝比奈の前でトリスタンをナイトメアモードに変え、一気に攻撃した。突然の攻撃と焦りに正しい判断ができず、朝比奈のナイトメア・月下は損傷を受け、離脱に追い込まれた。

「ジノっ!!!」
「わりぃなリリィ。面白そうだったからさ、混ぜてもらうことにしたよ。」

モニターにジノの姿が映し出される。彼はリリィにウィンクを送った。

「もうっ!!!ジノったらまたそんなことを………」
「遅いぞ、ジノ。」

敵ナイトメアを破壊しつつ、ライがジノに向けて呟く。「あのなぁ!!!」とジノが ライに向かって声を上げた時、彼は異変に気付いた。護衛艦が一機、主艦へと迫っている。このままでは衝突してしまう状況だった。
「はぁっ!?」と訳が分からなそうにジノが声をあげ、リリィもライも一緒に言葉を失った。
このままでは!!!と三人が思ったとき、一筋の強い光が主艦に近づく護衛艦を貫いていた。次に起こったのは、すさまじい閃光と爆発音。ジノはすぐさま理解して、後方を向いてぴしゃりと言う。

「はぁ。あいかわらずだなぁ、モルドレッドのやることは………。アーニャ!!!もうそれは使うなよ?総督殺しはまずいだろ?」
「守ったのに…………。」

アーニャは少し悲しそうに、モルドレッドの火力ハドロン砲をしまった。その横をスザクの乗った飛行機が飛んでいく。インカムを押さえ、彼はロイドに連絡を取った。

「ロイドさん、ランスロットは!?」
「準備できてるよぅ。早くおいで~♪」

スザクの言葉にロイドは嬉しそうに答える。ロイドとしてはとても好都合な状況だった。
自分の作ったランスロットのデータも取れ、それからトリスタン、モルドレッド、はたまた第8世代のナイトメアであるアカシャとランスロット・クラブのデータも合わせて取れるのだから……。彼としてはこの戦いと黒の騎士団に感謝したいものだった。
そして、リリィとライにとってもこの戦いは意味のあるものへと変わっていた。二人は先ほどから黒の騎士団と戦っていて、とあることに気付いたのだ。それは――――――。

藤堂鏡四郎がこの中にいる。

ということ………。おそらく、他とは違うナイトメア、それが藤堂の操る機体だろうと二人は気付いていた。かつて厳島での戦いで二人が唯一敗れた人物。動きも攻撃の仕方も変わらない、藤堂のもの。二人は彼に尋ねたいことがあった。だからライとリリィは――――――――。

「藤堂様…………ですよね?」

藤堂の機体の前に、アカシャとランスロット・クラブが立ちふさがる。
邪魔が入らないよう他の無線を切り、プライベート通信に変えて、リリィは彼に尋ねた。



苦さの味を知らぬ者は甘さも分からない。
(ドイツの格言)


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