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25=10

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IC #25


月下の前に立ちはだかったその機体を見て、藤堂は一瞬ハッとした。目の前にランスロットがいる………。だけど何かが違った。
白地にブルーのラインが入った機体を操るのは、スザクではない気がする。それに加え、『藤堂様』と己の名前を紡ぐ声を、どこかで聞いたことがあった。どこで聞いたのだろう?藤堂はじっと考えた。答えはすぐに出る。
脳裏に浮かんだのは、空も海も赤く染まった中、自分の罪に気づき二人で泣き続ける少年と少女の姿。その二人の名前は………。
藤堂はすぐさま仲間の回線を遮断して答えた。

リリィ………ルゥ・ブリタニア。それにライ・ルシフェルなの、か?」
「そうですよ、藤堂さん。お久しぶりですね……。」

ライがすぐに答えた。固い表情のまま。
ライにとって、藤堂は師匠のような存在であった。己の過ちに気づかせてくれた彼のようになりたかった。日本が負けた時、一番に望んだのは藤堂の釈放であった。しかしそれは無理すぎる話で………。
ライとリリィが褒美に欲しかったのは、地位でも名誉でもない。
藤堂の命だった。彼の命よりも重いものはない。もちろん、ブリタニアからの回答は『NO』だったが………。

「8年前、ブリタニアにいいように使われた君たちが、まだブリタニア軍に所属しているなんてな。」

藤堂は二人のナイトメアを見て言う。
きらきらと輝くナイトメアに刻まれたブリタニアの印。彼らはまだ、ブリタニアから離れられないのだろうか。

「おかしいでしょう?でも、これは自分たちで決めたことなんです。あなたに負けてから、私たちは変わりました。人の痛みを知るようになった。全て、あなたが教えて下さったことです。それなのに………」

彼女の言葉を聞き、藤堂は唇を噛んだ。それ以上言わないでくれと心が叫んだ。けれどもそれは、リリィには届かなかった。
リリィは瞳に涙をたくさん溜めて問う。

「どうしてあなたが黒の騎士団にいるんですか!?」

彼女の瞳から、ぼとぼとと涙がこぼれ落ちる。ライも顔をしかめ、月下から視線を外した。
藤堂の答えなんて聞きたくない。けれども………考えないで動くような人ではないから。彼に憧れたから、答えを知っておきたい………。二人はじっと藤堂の言葉を待った。しばらくして、彼は掠れる声で言った。

「先程の君の言葉を、そのまま返そう。」
「えっ………?」

藤堂は真っ直ぐナイトメア・アカシャを見る。

「これは私が決めたことだ。私だって、8年という月日の中でいろいろ変わったさ。
8年前の厳島で、私は君たちを破り、その地に足をつけた。厳島の奇跡と………同胞はそう呼んでいる。私は同胞に甘い夢を見せたのだ。もしかしたら、自分たちも戦えば、ブリタニアに勝てるのではないかという………。行動には常に責任を伴う。だから私は………甘い夢を見せたあの時の行動に責任を………日本独立という形で責任を取らなければいけないのだっ!!!」

藤堂の放った言葉の矢は、二人の胸を貫いた。

責任。

そう、責任なのだ。
ライは苦しそうに胸を押さえる。先日、リリィの大切な記憶を奪った。その代償に、ライは自分の記憶を失った。思い出せないのだ。

どうやって自分は、リリィと出会ったのだろう?

代償として支払った記憶は、責任という言葉に結び付くのだろうか?リリィにギアスを使ったという、行動に対しての責任。代償。罰――――――。

「藤堂様………。それなら私も、自分の行動に責任を取ります。あなたに負けたから、あなたを生かしてしまったから、日本人に甘い夢を見せてしまった。今度は私があなたに勝ちます。勝って………その甘い夢を、希望を絶望に――――――変えます。私はあなたを………殺す。」

最後はほとんど聞き取れない声だった。辛そうにリリィは月下を見た。
あなたは今、どんな顔をしているでしょうかとリリィは考える。しばらく沈黙が続いたが、無線から一つの言葉が響く。

「それなら私も、君たちを殺そう。君たちを生かしておいたのが間違い………だったのかもしれん。」

藤堂はそう伝え、すぐさまナイトメアを動かした。ナイトメアの剣がアカシャに降り下ろされそうになり、リリィはとっさにその剣を受け止めた。ガコンという音と共に、ギリギリとつばぜり合いが響き渡る。
しばらくアカシャ、ランスロット・クラブとの死闘が続き、月下を操る藤堂は舌打ちをした。ナイトメアの扱いには慣れているほうだが、さすがに1対2では不利だ。しかもあの時と違って、リリィもライも驚くほど腕をあげている。
目の前にランスロット・クラブが迫り剣を振るう。その攻撃を何とかかわす藤堂。ぐるりとあたりを見回し、しまったと感じた。どこにもアカシャの姿がない。不意をつかれた!!!そう思った瞬間、すさまじい音と、激しい衝撃が走る。アカシャの攻撃が月下にヒットしたのだ。

「くそっ!!!」

藤堂は体勢を立て直し、素早くレバーを引く。月下の剣は浮遊艦の一部に突き刺さり、宙ずりのような形となった。
月下は空を飛べない。ここで下に落とされてしまっては、海めがけてまっさかさまだ。早く上へあがらなければと思った藤堂の瞳に、敵が映る。この浮遊艦の指揮官のような人物がこちらを狙っていた。
ニヤニヤと笑う顔は、「お前を捕らえた」という顔をしており、見ているだけで吐き気がしそう。その指揮官はすぐに月下を攻撃してくる。藤堂は絶妙なタイミングで相手の攻撃をかわした。同時に、藤堂の機体の近くにあるエンジンが破壊される。

「愚か者!!!自らのエンジンをっ!!!」

彼はそう叫んで、指揮官めがけて銃を撃った。指揮官の青ざめる顔が目に焼きつく。しかしその光景は、8年前のあの時ほどではない。少年と少女が真っ赤な海に、焼けた大地に呆然と立ち尽くす姿以上に目に焼きつくものなどないのだ。
浮遊艦のエンジンが破壊されたために、艦は大きく揺らめく。そんな中で、ナナリーは庭園で黒の騎士団のトップ・ゼロと対峙していた。

先ほど、ゼロに向かって震える声で「間違っている」と叫んだナナリー。
全身が恐怖で凍りつきそう。けれども、ここで引き下がるわけにはいかない。自分だってエリア11の新総督を任された身。まだまだ力不足ではあるが、役に立ちたい。ナナリーの敬愛する姉・リリィだってきっと、こんなふうに恐怖を感じたことはたくさんあったはずだ。でも姉はそれを全て乗り越えた。乗り越えたために、エンジェルズ・オブ・ロードという地位を獲得したはずなのだ。

(今、私の前にゼロがいる………。お兄様、リリィお姉様、勇気をください。ナナリーを、お守りください。)

ナナリーがそう願っている時、ゼロが静かに言葉を発した。

「間違っているのはブリタニアだ。皇帝は強さこそ価値だと考えている。君もそれに賛同するのか?ナナリー総督、君は利用されているだけなんだよ。」
「目も足も不自由な私なら、みんなの同情を引けると?………違います。」

可憐な声でそう答えるナナリーに、ルルーシュは疑問の声を上げる。
目は開かれていないが、しっかりとした眼差しにルルーシュはたじろいだ。ナナリーは、何を言おうとしているのだろうか?それが分からない。彼女はまっすくゼロを、ルルーシュを見てきっぱりと言った。

「私は、自ら望んだのです。」

彼女の答えにルルーシュはさらに動揺する。

(何っ………!?自ら望んだだとっ!?)

そう思いながら、瞳を揺らがせるルルーシュに対し、ナナリーは落ち着いていた。
きっぱりと答えてしまえば、先ほどの恐怖などどこへいったのか分からないぐらいだった。もう体は震えていない。恐怖は感じない。彼女の頭に浮かぶのは、リリィの笑顔。
私の愛するお姉様。あなたのことを思えば、何倍もの勇気が出せる。

(私はエリア11の新総督に選任された。目も足も不自由な私なのに………。でも、それを引き受けたのはこの私自身。私は自ら望んで新総督になった。誰にも強要されてない。これは私自身の判断です、ゼロ。私は利用されているわけではありません。私には私の考えがある。私はあなたと………分かり合いたいのです。みんなの幸せな世界を作りたい。その幸せな世界で、お兄様やお姉様と、もう一度一緒に暮らしたいっ!!!)

すがるような思いでナナリーはゼロへと手を伸ばす。必死に訴えかけるように言った。

「世界は、もっと平和に………優しく変えていけると思うんです。だから、私はユフィ姉様の意志をつぎ、もう一度行政特区・日本を………」
「復活させると!?」
「ゼロ、あなたもそこに、参加してもらえませんか?」

ナナリーが手を伸ばすその姿が、ユフィの姿と被る。ルルーシュはぶるっと震え、後ずさった。
フラッシュバックのように、ユフィが死んだ光景が蘇る。彼女を撃った手が震える。撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけ。その覚悟があったから、ルルーシュは彼女を撃った。そんな彼に、ナナリーはとどめの一言を与えた。

「やり直せるはずです、人はっ!!!」

リリィなら、きっとそう言う。彼女は優しい人間だから。ナナリーはそう思った。
過ちを犯した人をも許して、受け入れられる強さが彼女にはある。そんなリリィのように、私もなりたい。どんな人をも受け入れられる人間になりたい。
彼女は悲痛な思いで、もっともっとゼロに手を伸ばした。ゼロがこの手をとってくれると信じて………。


***


はぁはぁと、ナイトメアの中で荒い呼吸をあげるリリィ。ライも拳を握り締め、ぷるぷると腕を震わせていた。
あの時が、チャンスだった。藤堂を撃つ。でも――――――できなかった。尊敬という情が邪魔をして。失いたくないという思いが邪魔をして。
宙にぶらさがる藤堂のナイトメアを、あの時だったら撃てたはずだ。それできっと終わっていた。あとは、どうして彼を撃ったのかという激しい後悔と、人を殺したルール破りの自分が残るはずだった。でもその後悔は訪れなかったし、ルールも破らなかった。
リリィは自分の両手を見て、小さく呟く。

「私………8年前のときみたいに、人間じゃなかったらよかったのに。日本人を憎む獣だったら、きっと藤堂様を殺せた。でも………やっぱりできないよっ!!!自分の決めたルールを破ることなんて………できるわけないじゃないっ!!!」

ナイトメアの中で泣き崩れるリリィ。そんな彼女の声を聞いて、ライもたまらなくなり叫ぶ。
浮遊艦は高度を落とし、確実に海へと向かっていた………。その時、アヴァロン内では新総督救出のため、ランスロット・コンクエスターを発艦させる準備が行われていた。スザクはランスロットに乗ったまま考える。彼はナナリーを奪いに来た。でも機情から報告はない。

敵はゼロか、ルルーシュか。

そんなことを考えつつ、準備を進めていく。もうすぐ発艦だ。スザクは瞳を細めた。ナナリーを絶対助ける。自分にとって、ナナリーは守りたい存在だから。それから………彼女に――――リリィにもう辛い思いをさせたくはないから。リリィは大切な人を失う痛みを知っている。

「あ、そういえば…………スザク君、総督を救出したあと、アカシャとランスロット・クラブも探してくれない?どっちも急に連絡取れなくなっちゃってね、こっちとしては困ってるわけ。だってせっかくの貴重なナイトメアを沈めるわけにはいかないからさぁ~。ということで、よろしくぅ~。」

場の雰囲気に似合わないお気楽口調で、思い出したようにロイドが告げる。彼の言葉を聞いて、スザクはさっと表情をこわばらせた。

リリィやライと連絡がとれない………?それはどういうこと?
リリィに………何かがあった?

「ロイドさん………リリィたちと連絡とれなくなったって……それはいつの話ですか!?」
「んー?少し前かなぁ~。急にぷっつり無線が途絶えちゃってねー。呼びかけても返事なーし。何かあったのかなぁ~って思っちゃってね。ま、あの二人のことだから、やられたとかいう心配はしなくていいと思ってるけど?」

スザクの反応を面白がるようにロイドは答える。
しばらく無言が続き、スザクは低い声でロイドに呟いた。

「ナナリー総督を救出したのち、リリィ皇女殿下、及びライ・ルシフェルも探し出します!!!ランスロット・コンクエスター、発艦っ!!!」

その言葉を残して、スザクはアヴァロンを飛び立った。
コクピット内で彼は鼓動を早める。彼女に、リリィに何かあったらどうしよう………。思考は悪いほうへと傾いてく。こんなにも彼女を大切に想っている。彼女なしでは生きていけない。リリィはスザクの太陽なのだから…………。
もっと早く!!!もっと早く飛べ、ランスロット!!!スザクは願う。



「…………ロイドさん、どうしてあんなこと言ったんですか?あの二人なら心配ないと、判断されたのはあなたですよ?それなのに、スザク君の不安をあおるようにして………」

スザクには届かぬよう、インカムのマイク部分を押さえてセシルは自分の上司を睨む。
お気楽なロイドはその視線をものともしなかった。笑顔でさらりと受け流し、窓の外にうつる青空へと目を向けた。その時の表情は、お気楽ロイドではなかった。何かを真剣に考える、一人の人間としての表情。

(あの時、スザク君の雰囲気が氷のように冷たくなった。彼がリリィ君を大切に想う気持ちは分かっている。だけど――――――彼の想いは、彼女にとってとても重いもの。その想いが、いつか暴走してしまわなければいいんだけれど………。)

ランスロットは、ナナリーの乗った浮遊艦へと到着しかけていた。




人間は気高くあれ、進んで人を助け、やさしくあれ。
(ゲーテ)

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