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IC #27


ナイトメアを格納庫に置き、みんなが待つ部屋へと急いだ。すれ違う人々から、好奇な眼差しと囁き声を受けるが、リリィは気にしなかった。そんなの、もう慣れっこだ。きっと、「あれがエンジェルズ・オブ・ロードの……」などと言っているのだろう。
8年前はもっと酷かった。されたくもないのに、毎日英雄扱い。日本を倒した………なんて言われて、毎日部屋に引きこもった。罪の重さに苦しみながら。あれに比べればマシだろう、エンジェルズ・オブ・ロードと指をさされるくらい………。
リリィはデヴァイサースーツのチャックを少し下げ、部屋の前に立つ。一度だけ深呼吸してから、部屋のドアを開けた。

リリィ・ルゥ・ブリタニア、ただ今もど………ふぐんっ!!!」

すぐに彼女から、蛙が潰れたような声が上がる。原因は枢木スザク。彼のせい。スザクはリリィの姿を見るなり、彼女をありったけの力で抱き締めたのだった。骨がきしみそうなほどきつく抱き締められ、リリィは目を白黒させる。

リリィ………よかった。君が無事に帰ってきて………。」

優しい声でそう囁かれ、彼女はスザクの顔を見ようとするがそれさえ叶わない。彼の胸に顔を押し付けられ、スザクの香りをたくさん吸い込んだ。とても優しい香りだった。ほっとするような。ユーフェミアも同じようにされていたのだろうかと、リリィはふと思う。
ユーフェミアはリリィよりも甘え上手で、みんなから愛されていた。いつも優しくて、分け隔てなくて………。彼女のように生きたい。そう願ったけど、己の手を見るたび、戦場を思い出して拳を握った。

そう、ユーフェミアみたいには生きれない。

だから………抱き締められてもいいのだろうか?ユーフェミアが愛したはずのこの人に………。
スザクだって、ユーフェミアを愛したはずだ。だってスザクはユーフェミアの騎士だったから。お姫様を守る麗しのナイト―――――――――。
なんて美しいのだろう。そんな美しさを汚すわけにはいかないのに………。でも、スザクはリリィを求めるように、もっともっと抱き締めた。まるで放したくないというふうに。リリィは一つの考えが頭に浮かぶ。

(スザクは………私をユフィ様の代わりにしようとしている?)

そう思うと、なんだか少し悲しかった。でも、それで彼の心が休まるのなら………リリィは何も言わず、彼の背中に手を回した。
突然の背中のぬくもりに、スザクはハッとする。これはリリィの手?
彼はすぐさまリリィの顔を覗き込む。そうすれば、彼女ははにかみながら、スザクに問う。

「スザク、少し落ち着いた?スザクって結構寂しがり屋さんなのね。大丈夫、私はここにいるよ。」

彼女がどんな思いでそう言うのか、スザクには分からなかった。

仲間として?
それとも………期待して、いいのだろうか?

ドキドキと高鳴る鼓動が彼女に聞こえてしまいそうで、スザクは慌ててリリィの束縛を解く。平常心を保ちつつ、スザクは答えた。

「う、ん。もう大丈夫。ただちょっと………心配して………。ロイドさんから通信がつながらないことを聞いたから、何かあったのかなって思ったし………。」
「あ………うん、なんでもないの。少しだけ、誰にも聞かれたくない話をしてただけだから。」

苦しそうな表情をリリィがしたので、スザクは優しくリリィの頭を撫でた。当然リリィは、「子供じゃないんだから!!!」と怒ったが、小さい声で「ありがとう」とも呟いた。そこへ、少し遠慮がちに声がかかる。

リリィ………お姉様?」

声の上がったほうを見れば、盲目の少女がふわふわのドレスに身を包んでいた。車椅子に乗ったまま、不安そうな表情を浮かべている。そう、この子の名前を知っている。忘れるはずがない。守りたい、存在だった。そしてこれからも、守る存在…………。

「………ナナリー?ナナリーよ、ね?」

名前を噛み締めるように、リリィが声を上げる。その声に、ナナリーは車椅子に座ったまま、思いっきりリリィのほうへと腕を伸ばした。

「おねえ、さまっ!!!お会いしたかった!!!ナナリーは、ずっとずっとお姉様に………!!!」
「私だって、あなたを忘れたことなんてなかった!!!ナナリー、会いたかった!!!」

伸ばされた腕に触れ、小さい少女の体をきつく抱き締める。ふわりと香った髪の香りに、ナナリーは涙を流した。

(リリィ………お姉様だわ。この香り………。)

ナナリーは目が見えない。彼女が今どんな顔をしているか分からない。だからリリィの顔に触れようと、ナナリーは手をリリィの頬へと滑らせる。そんな時だった。

「………なさい。ナナリー。」
「えっ?」

ぴたりと頬に触れようとしていたナナリーの手が止まる。
もう一度リリィは呟いた。今度は彼女にはっきり聞こえるように。

「ごめんなさい。ナナリー…………。私はあなたをこんな姿にしてしまった。それに―――――――」

ルル様を、助けられなかった。

ナナリーはぴたりと動くのをやめた。呼吸さえも止まりそう。今、自分の姉は何と言った?
私をこんな姿にした?ルルーシュを助けられなかったと言った?全く訳が分からずに、ナナリーの声は震える。

「おねえ…………さま?」
「8年前の戦争で、もう少し早くナナリーを助けられたら、あなたはこんな姿にはならなかった。歩けなくなり、目も見えなくなることもなかったのよ。ルル様を失うこともなかった。全部私のせい…………。ぜんぶ、わたしの―――――!!!」

リリィはそう言うと、ナナリーの膝へと泣き崩れた。
ナナリーにはリリィの言う意味が分からない。8年前の戦争?それはブリタニアが日本に戦争を仕掛けたこと?でもその時はアッシュフォード家の人々が、自分と兄を逃がしてくれた。目が見えなくなったのも、歩けなくなったのもその前からだった。母がなくなった時からずっと…………。だから、リリィのせいではないのに。姉は、何を言っているのだろうか?
そうナナリーが思ったとき、彼女は以前電話口でルルーシュに言われたことを思い出す。

『ナナリー、今は他人のふりをしてくれ。でも俺は、お前を愛してるナナリーっ!!!』

ルルーシュはとても必死だった。どんな時でもナナリーのそばを離れなかったルルーシュが、他人のふりをしてくれというのがその時は信じられなかった。でも……………今目の前で泣き崩れる彼女を見て、ナナリーは思う。

(だからお兄様は、他人のふりをして欲しいと、そう言ったの?リリィお姉様のために。リリィお姉様は………お兄様を失ったと思っているのね。)

本当は全てを話してしまいたい。ナナリーが視力を失ったのは、歩けなくなったのは、リリィのせいじゃない。ルルーシュはちゃんと生きている。リリィはルルーシュを失っていない。
でも今は…………兄との約束を守らなくちゃいけないから。
ナナリーは、そっとリリィの頭を撫でてあげる。一言だけ、彼女へと言葉を送って。

「お姉様のせいじゃないですわ……………。」

そう言えば、ナナリーのドレスがギュッと握られた。


***


ロロは夢を見た。幼い自分は森を歩いている。目の前に揺れるのは、赤い髪と銀の髪。ロロは走って行って、二人の間に入り込む。そうすれば笑い声とともに訪れる優しいぬくもり。両側から手が伸びてきて、右手も左手もゆっくりと手のひらで包まれる。右を見れば『ロロ。』と少年の声で優しく名前が紡がれ、左を見れば『ロロ。』と少女の声で優しく名前を呼ばれる。
幸せだった。エリア7で過ごした日々が。特殊訓練はとても辛かったけど、二人がずっと一緒にいてくれた。
大切な、大切な人。ライとリリィ。二人がそばにいてくれればロロはそれでよかった。

たとえそれが、偽りの"兄弟"でも―――――――。

ロロはハッと目を醒ます。暗闇の中で目が覚めたロロは、ベッドの上で眠るルルーシュを覗き込んだ。
ロロはC.C.から気を失ったルルーシュを預かってきた。何度も何度もうめき声を上げ、熱がひどく高かった。一体何があったのだろうと思う。ルルーシュがここまで弱ってくるなんて…………。
とにかくロロは、徹夜で看病を続けた。
家に帰ってから、ルルーシュの熱は次第に下がっていく。ロロは彼の頬に手を伸ばして触れてみた。もう、熱はないみたいだ。額に乗せていたタオルをどかそうと、彼は手を伸ばす。その時、ルルーシュがかすれる声で呟いた。

「ナ、ナリ……………。」

ぴくんと、ロロが体を反応させる。
彼が呼んだのは最愛の妹、『ナナリー』。ロロは手を引っ込めて、じっとルルーシュの顔を見つめた。
にっこり笑って、ロロは独り言のように呟く。

「そう、だよね。分かってたことだよね。たとえ兄さんに大事な弟って言われても、兄さんの一番はいつもナナリーだった。僕は兄さんに大事な弟って言われただけで、嬉しかった。こんなこと言ってくれるのは、ライ兄さんとリリィ姉さん以外にいなかったから。ナナリーが―――――――――羨ましい。兄さんと、ホントの兄妹だから。」

ぽとりと、ルルーシュの額からタオルが落ちる。それと同時に、アメジストの瞳から透明な涙が一粒落ちていく。
ああ、エリア7での幸せな日々が、ずっと続けばよかったのに。
そうすれば、こんなふうに泣くことも傷つくこともなかったのにな。




愁ひある少年の眼に羨みき 小鳥の飛ぶを飛びてうたふを
(石川啄木)

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