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IC #30


「ここに戻らないなら、それでもかまわないさ。」

C.C.はゼロの仮面をボールのように上に投げる。まるで一人で遊んでいるかのようだった。
彼女は誰かとしゃべっているように話すが、そこにはC.C.以外誰もいない。

「私にとっては、アイツが生きていることが重要だ。…………まさか。ゼロをやめるだけなら簡単だ。そんなロマンティックな話じゃないさ。しかし、このままでは黒の騎士団はおしまいだな。――――――ああ、ナナリーのためのゼロ。ルルーシュはそう言っていたよ、マリアンヌ。」

C.C.は、高く仮面を投げた。


***


ルルーシュはずっとこの場所で考えていた。新宿再開発地区。この場所は、ルルーシュがゼロとして始まった場所。彼の原点だった。
ルルーシュはおもむろに袖をまくる。昨晩ブリタニア人からうばったリフレインが握られている。彼は願った。昔に、帰りたいと。幸せだったあの頃。優しい母がルルーシュの名前を呼ぶ。可愛くて仕方がない妹がルルーシュの名前を呼ぶ。そして、初めて恋した相手がルルーシュの名前を、甘く呼ぶ。「ルル様。」と。最後に首をかしげる仕草が、愛らしくてたまらなかった。

そう、これで、過去へと帰れる…………。

彼がリフレインを己の腕に打とうとしたとき、そばで人の声がした。
母ではない、妹ではない、初恋の相手ではない人が、ルルーシュの名前を呼んだ。

「ルルーシュ…………。やっぱりここに来たのね。ここは、あなたが、ゼロが始まった場所だもんね。ルルーシュ、私あなたに………」

そうカレンが言いかけ、ルルーシュの手に握られたものに気付く。ルルーシュは笑っていった。

「リフレイン…………。カレンも知ってるだろ?懐かしい、昔に帰れる。」

その瞬間、カレンの怒りは急激に絶頂へと達する。彼女はルルーシュの手からリフレインをむしりとり、怒鳴り散らした。
「ふざけないで!!!」と。カレンは知っているのだ。ルルーシュはこんなに弱くない。いつも上から目線で、無茶苦茶な計画を立てる。だけどそれは緻密(ちみつ)に計算された計画であって、いつでも奇跡を起こしてきた。
失敗にもくじけないルルーシュ。そう、くじけないルルーシュであってほしい。それはカレンの理想でもあり、願望でもあった。

「一度失敗したからって何よ!?また作戦考えて、取り返せばいいじゃない!!!また命令しなさいよ!!!ナイトメアに乗る?それともおとり捜査?何だってきいてやるわよっ!!!」

だから負けるな、ルルーシュ!!!

カレンは心の中で叫ぶ。だけどルルーシュは、本当に弱っていた。立ち直れないほどに…………。ぽつりとルルーシュがカレンに向かって呟く。

「だったら―――――――俺をなぐさめろ。」

ルルーシュが立ち、ゆっくりとカレンに近づいていく。
カレンは後ずさった。違う、こんなのルルーシュじゃない。ゼロじゃない。でも、ひどく弱っている彼を見捨てることができない。突き放してしまうことができない。
ゆっくりと、ルルーシュの唇が近づく。もう少しで触れてしまいそうだった。

(こんなの…………だめっ!!!)

そうカレンが思ったとき、ルルーシュがぴたりと静止した。
アメジストの瞳を揺らしながら、かすれた声で名前を呟く。はっきりとは聞こえなかったが、カレンはかすかにその名前を聞き取った。

リリィ―――――――?」

そう呼ぶルルーシュの目には、赤い瞳を潤ませ、瞳と同じ色の髪をなびかせたリリィの姿が映っていた。
リフレインを使用したわけじゃない。けれども、リリィが見える。これは幻覚なのだろうか?それとも、現実………?
彼女が唇を動かして言葉を紡ぐ。

『しっかり、ルル様。』

最後には、昔のように小首をかしげて彼に笑いかけた。ルルーシュの瞳孔はきゅっと収縮する。

リリィが、俺に会いに来てくれたのか?)

そう思ったとき、パシンと頬を叩く音と、そのあとにじんわりと痛みが訪れた。気付くとルルーシュは、カレンに頬を叩かれていた。そこで現実へとルルーシュが戻る。カレンは苦しそうに叫んだ。

「しっかりしろルルーシュ!!!今のあんたはゼロなのよ!?私達に夢を見せた責任があるでしょ!!!だったら………最後の最後まで騙してよ。今度こそ完璧にゼロを、演じ切ってみせなさいよっ!!!」

それだけ言うと、カレンは涙を浮かべたまま走り去る。残されたルルーシュは、彼女の腕を掴もうと手を差し出したが、腕をつかめなかった。宙にさまよった手をゆっくりと引っ込める。

これで、本当によいのだろうか……………?

カレンに叩かれて、少し目が覚めた気がする。
ルルーシュはカレンを追おうと瞳を彼女が走った方向へと向けた。でも、それが出来なかった。目の前に、ロロが立っていたから。ロロは何か言いたそうな目つきで彼を見ていた。
ルルーシュは静かに言った。ロロが自分の監視役だということを忘れていたと。すると、ロロはこう答えた。

「いいじゃない。忘れてしまえば。辛くて、重いだけだよ。ゼロも、黒の騎士団も、ナナリーも。ナナリーのためにもなる。ゼロが消えれば、エリア11は平和になるよ。兄さんも、ただの学生に戻って、幸せに暮らせばいい。」

淡々とロロは述べた。
「しかし…………」ルルーシュがそう言うと、ロロはすぐに言った。「何がいけないの?」と。

幸せになることは、いけないこと?

ロロはルルーシュへと近づいていく。ロロの望んだ幸せは、リリィやライと一緒に暮らすことだった。ルルーシュさえ全てを忘れてくれれば、もうルルーシュを監視する必要もない。彼らの元へ、帰れるのだ。そして、ロロにはナナリーに勝ったという嬉しさが残る。ルルーシュがナナリーを忘れれば、彼の兄弟はただ一人。自分だけ。ロロはたくさんの家族を独り占めできる。姉であるリリィ、兄であるライとルルーシュ。だから…………幸せになることは、いけないこと?

「幸せを望むことは、悪いことじゃないでしょ?誰も傷つけない…………。今だったら、全てをなかったことにできる。」

だから、全て忘れようよ、兄さん。

まるで悪魔のような囁きだった。
ルルーシュはぎゅっと目をつぶる。そう、幸せを望むことは悪いことじゃない。でも―――――俺はまた、ナナリーを、リリィを…………忘れてしまうのか?
リリィ……………っ。


不意に、誰かに名前を呼ばれたような気がしてリリィは後ろを振り返った。
誰もいない。後ろはただの壁。でも、確かに呼ばれた。はっきりと、『リリィ』って。
後ろを振り返ったまま、呆然とする彼女に、横にいたスザクが声をかけた。

リリィ?どうしたの?」
「え…………ううん。なんでもないの。ただちょっと、誰かに名前を呼ばれた気がしたから……。」

リリィはスザクの顔を見た。
彼女はもうデヴァイサースーツに着替えているが、スザクは騎士服のまま耳にインカムをつけている。
黒の騎士団を見つけたと、スザクは言った。所属と進路が異なっている船。それが黒の騎士団が乗っている船である。
スザクは一呼吸すると、進路の異なる船に警告した。10分待つ。それまでに武装を解除して、甲板へ並べと。スザクの言い方は厳しかったが、彼の優しさがにじみ出ていた。彼だって、無意味な戦いはしたくない。リリィはじっとその状況を見て、瞳を細める。

投降、するだろうか。黒の騎士団が…………。

ライはもう、ランスロット・クラブで外へと出ている。彼は言った。嫌な予感がするんだ、と。今のリリィもなんとなく、嫌な予感がしていた。

「スザク、私アカシャで外に出ているわ。何となく、嫌な予感がするの。」

そう告げると、腕を組んだスザクの瞳がリリィを映した。すぐに冷たい瞳から優しい瞳へと変わった。スザクは頬を緩めてから呟く。

「分かった。リリィ、気をつけてね?」

彼女は頷く。そのまま司令室をあとにして、アカシャが収納してある場所へと向かった。アカシャに乗り込みながらリリィは考える。自分を呼んだのは、誰だったのか。もしかしてロロ?いや、もっと違う誰か。

(でも、とにかく今は……………)

彼女はアカシャの画面に映った進み続ける船を、静かに見つめる。彼らをなんとかしなければならない。
進み続ける船は、武装なんて解除する気配を見せない。リリィは思った。これが彼らの"答え"なのだと。
きっとまた、戦いが始まる――――――――。




もはや愛しもせねば、迷いもせぬものは、埋葬してもらうがよい。
(ゲーテ)

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