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IC #31


スザクやリリィ、ライが海の上にいる頃、ロロとルルーシュはアッシュフォード学園にいた。誰もいない静かな学園。そう、みんな修学旅行へと出かけたのだ。「追いかける?」という問いかけに、ルルーシュは小さく断った。その時、屋上のほうから花火が上がる。彼ら二人は驚いてその花火を見上げた。すぐにルルーシュは走り出す。
屋上へと続く階段を駆け上がり、そこに出れば三人の生徒と顔を合わせた。ミレイ、リヴァル、そしてシャーリー。てっきり修学旅行に行ったと思っていたのに…………。

「おかえり、ルルーシュ。」
「ルルーシュもやろうよ。文化祭で使ったのの余り。」

呑気に彼を迎えた三人を見て、ルルーシュは「どうして?」と尋ねた。
リヴァルがいたずらっぽくニッと笑って答える。

「俺たちだけで行ったら泣くでしょ、君。」

続けて、ミレイとシャーリーも述べる。

「旅行なんてね、どこに行くかじゃないの。誰と行くかなのよ。」
「そうそう!!!」

シャーリーは笑って手に包み込んでいるものを大事そうに見つめた。ルルーシュはそれに気付く。昔、ナナリーがよく折っていたもの。千羽折ったら願い事が叶うと聞き、一生懸命ナナリーが折っていたのを思い出す。その出来事を思い出しながら、シャーリーに願ったことを聞いた。すると彼女は、少しはにかみながら答えた。「少しだけ、叶ったよ。」と。みんなと花火がしたい。それが彼女の願いだった。
ニーナとカレン、スザクにルルーシュとそしてロロ。三人にとって、かけがえのない友達。そう、ルルーシュにとっても。そこで、ルルーシュは昔のことを思い出した。

ルルーシュとスザクとナナリー。まだ彼らがお互いに友達だったころ、話したことがある。
もしも幸せに形があったら、どんな形をしているか。それは幼い頃にスザクが言ったように、ガラスのようなものなのかもしれない。本当はそこにあるけれど、普段見えなくて。けれどもちょっと角度を変えると、光を反射して様々なものを映し出す。いつもはそれに気付かない。けれども視点を変えれば、それはいつだって見えてくる不思議なもの。それが幸せの形……………。

『ルル様の幸せはなぁーに?』

俺の幸せ?俺の幸せは、大切なみんなと一緒にいることだよ?
リリィの幸せはなんだい?

『私の幸せ………?うーん、ルル様が大切なみんなと一緒にいることが幸せなら、私の幸せは、その人たちとずっと一緒に笑っていられることかな?』

ごくありふれたことだけど、反対にとっても難しいこと。
この世界には苦しいことや悲しいこともたくさんあって、人との別れも必ずある。いつも大切なみんなと一緒にいられることなんて難しい。ずっと笑いあうことも。でも、だからこそ、もう一度そんな人たちと再会したときの喜びは大きい。

今ルルーシュの目の前に、幼い日のリリィが立っている。
彼女は優しい微笑みを浮かべていた。彼女はルルーシュに背を向けたあと、彼を振り返り、シャーリーたちを指差す。
ああそうか、と彼は思った。

リリィは…………俺を助けに来てくれたんだ。絶望の、どん底に落ちた俺を。
俺は決して、孤独ではないと言いたかったんだな。

絶望を感じ、立ち止まろうとしていた俺に、歩めといってくれている。一人じゃない、仲間がいるんだといってくれている。背中を押そうとしてくれている。幼いリリィは嬉しそうに頷いた。「もう大丈夫ね。」とだけ呟いて、そして影は消え去った。冷たい何かが頬を伝う。

「何?泣いてんの?ルルーシュ。」
「私達の友情に感激ってやつ?」
「違いますよ。」

くるりと彼らに背中を向けて、憎まれ口を言った。心の底ではたくさんのありがとうを述べながら。その傍らで、ルルーシュは思う。

(そう、俺の戦いは、もうナナリーだけじゃ…………)


***


時間です、という冷たい言葉に、スザクは一瞬言葉を飲み込んだ。でも、これがルールだから………。彼は自分に言い聞かせ、短く言葉を放った。

「攻撃開始っ!!!」

大砲の音が響き渡り、ライとリリィはついに始まったと思う。まず最初は、大砲の一斉攻撃から。そうしているうちに、黒の騎士団のタンカーが爆発する。それにあわせて、ブリタニア軍からポートマンが出撃した。

「海中に逃げたか……………。」

ライは手出しをせぬまま、状況を見守っていた。リリィも黙って、ことの成り行きを見守る。
ポートマンが出撃したあと、大量のアスロックが発射される。アスロックは水に引き込まれるように落ちて、海中で爆発した。当然黒の騎士団の潜水艇もこの爆発により、激しい揺れに巻き込まれる。その隙に、ブリタニア軍は海中に包囲網を張る。爆雷投下は続けられた。

「Q-1、聞こえるか!?」
「ゼロっ!?」

もうだめだ!!!みんながそう思ったときに、ゼロの声は聞こえた。玉城が「おせえーよ。」と文句を上げる。神楽耶がにっこりC.C.に向けて微笑み、C.C.は困った表情を浮かべ知らんふりをした。
ルルーシュは崖の上にたち、地図を広げて黒の騎士団に指示する。

「ポイント、L40に向けて急速潜航しろ。」

ルルーシュであるゼロが指示を始めた頃、スザクも動いていた。ランスロット・コンクエスターに乗り込み、戦艦から飛び立つ。黒の騎士団の船の中では、淡々とルルーシュの指示が続けられた。

「魚雷全弾を正面に向けて発射。40秒後だ。」

正面に敵なんていないのに…………。
みんなそう思ったが、神楽耶だけは違った。ゼロを信じる。そういって、みんなを説得した。藤堂も目をつぶり、しばらく考えたあと指示を出す。魚雷全弾を正面に打ち込むことを。40秒後、魚雷は全弾、正面へと打ち込まれた。これでブリタニア軍は、黒の騎士団の船の位置を特定する。スザクは攻撃を集中するよう命じた。浮上してきたら、自分が捕縛すると言いながら。
このやりとりを聞いていたリリィとライは、不審に思う。
どうして黒の騎士団は、正面に敵がいないのに、わざわざ自分達の位置を知らせるようなマネをした?相手だって馬鹿ではないはず。魚雷音で自分達の位置が分かることぐらい、知っているはずだ。
嫌な予感がした。この前の戦いだって、イレブン256人を救うためにゼロは相手が驚くような手を使ってきた。黒の騎士団のいるポイントは、L40。そこから正面には、何がある?そう考えて、リリィとライはハッとした。リリィはアカシャをブリタニア軍の戦艦へと飛ばして大声で叫ぶ。

「みなさんっ、今は引いてくださいっ!!!そっちに行っちゃダメっ!!!お願いっ、逃げて――――――――っ!!!」
「ダメだやめろっ!!!今は引けっ!!!お前達は死ぬ気か――――――っ!?」

ライも迷わず海面へと近づいて叫んだ。しかし二人の叫びも虚しく、全弾発射された魚雷が海底に突き刺さり爆発を起こした時、その現象は始まった。大量の空気や泡が海底から吹き出し、ポートマンを飲み込んでいく。海上にいた戦艦も全て泡の影響で転覆していく。スザクは言葉を失った。

「そんな…………海底から、巨大な泡を?」

彼がそう呟いた瞬間、リリィが小さく言った。

「これはメタンハドレイトの影響よ。黒の騎士団が敵もいない正面に魚雷を打ち込んだのを見て、嫌な予感がしたの。そして、ここの地形を思い出したわ。」
「そう、ここはいわば、メタンハドレイトの池のようなところなんだよ。地面に全弾の魚雷を打ち込めば、こういうふうに…………ね。」

通信を通して、リリィとライの声が聞こえてくる。だから彼女たちはとっさに「引け。」と命令したのか。
スザクは転覆したブリタニア軍の戦艦を見て瞳を揺らす。その時、ジノの鋭い声がインカムからする。


「なんだなんだ?スザク、援軍以前の問題だろ、これは。リリィにライ、お前達がついていながら、どうにかできなかったのかよ?」
「ごめん、ジノ。僕たちが気付くのが遅かった…………。」
「ごめんなさい、ジノ。もっと早く私達が気付いていれば…………」

気弱な二人の声に、ジノはハァとため息をつく。そして言葉を続けた。

「…………分かってるよ。お前達が悪いんじゃない。とにかく、生き残った部隊を集めろ。黒の騎士団を――――――」

ジノがそう言いかけたとき、ブリタニア軍の声がかぶった。「ゼロがこちらに向かってくる。」と。ジノたちはすぐに標的をとらえた。見ればゼロは、一機のナイトメアの手に乗り高速でこちらに向かってくる。

「これがっ、お前の答えなのかっ!!!」

スザクは大きく吼えて、ランスロットのヴァリスの標準をゼロに合わせた。同時に鋭く「撃つなっ!!!」という声がゼロから上がる。そのままゼロは言った。

「撃てば君命に逆らうことになるぞ?」

その場にいた全員が息を呑む。どういうこと………だ?ライはぎゅっと操縦桿を強く握る。君命に逆らうことになる?それはつまり………

「私は、ナナリー総督の申し入れを受けよう。そう、特区日本だよ。」

その言葉をゼロが口にした時、スザクの瞳は大きく見開かれた。一瞬だけ優しい瞳に変わり、でもすぐにまた、その目は冷たくなり細められた。彼は小さく呟いた。「本気か?」と。それともまた、あの悲劇を繰り返すつもりなのだろうか?
スザクと同時に、ライとリリィも言葉を失う。

「ゼロが………特区日本に?ほんとうに?しんじても、いいの?」

うわごとのようにリリィは繰り返した。
ナイトメアの手の上で、ゼロが大声で叫ぶ。

「ゼロが命ずる!!!黒の騎士団は全員、特区日本に参加せよっ!!!」

きらりと、ゼロの仮面が光った。




私は存在するゆえに、永遠である。
(ゲーテ)

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