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IC #34


そして、その日は訪れた。
ナナリーが、そして、ユーフェミアが望んだ行政特区・日本が出来る日。ライとリリィは幕の後ろからじっと、会場内を見ていた。
会場に集まったのは百万人もの日本人。その人たちに向かって、あいさつをするナナリー。ジノはもしもの時のため、トリスタンに乗って空中からその様子を見ている。リリィも本当は、そうするはずだった。だけど、ナナリーに頼まれて、今この場にいる。同じステージで、私を見ていてほしい。それがナナリーの願いだった。
ナナリーの挨拶が終わり、ローマイヤがゼロと交わした条件を確認していく。ゼロはブリタニア特法12条第8項に従い、国外追放となった。

「ありがとう、ブリタニア!!!」

会場内にゼロの声が響き渡り、モニターに姿が映し出される。すぐにスザクが反応し、ゼロに向かって「姿を現せ」と叫んだ。リリィは会場内を見る。

(おかしい…………。ゼロの裏切り行為に、すぐ暴動が起こってもいいはずなのに。)

静かすぎる。

誰も何も言わず、ただゼロの言葉を聞いているだけ。何が起こるか予想ができず、これからどう動けばいいのかも分からなかった。でも、何か起きた時は絶対に犠牲を出さないようにしなければならない。そうしないと、またユーフェミアのときのようになってしまう可能性があるから。これ以上、ブリタニア人と日本人の間に溝は作りたくない。
ギュッと強く、拳を握った。
画面の中のゼロは、スザクの姿を見て彼に問う。「民族とは何か?」と。スザクは答えた。「民族とは心である。」と。その意見に、ゼロは賛成の声を上げたので、スザクは不思議に思う。
ゼロは言った。心さえあれば、住む場所がどこであろうと日本人である、そういうふうに。
彼の口がそう告げたとき、会場から、白い煙が上がった。

「何が起こった!?」

はじかれるように、幕のうちにいたライとリリィが走り出し、スザクの横へと並んだ。
ナナリーはアーニャが安全な場所へと連れて行く。会場内はすべて真っ白になり、何が起こっているのか分からない。
リリィはすぐに会場で待機しているブリタニアの兵士に連絡をとるが、白くて何も見えないという。ブリタニア軍は鎮圧態勢に入れという命令が出され、銃を日本人へと向けた。すぐさまスザクが叫ぶ。

「待てっ!!!」
「だめだっ!!!相手はまだ手を出してない!!!」

スザクと同じように、ライも叫ぶ。リリィは呆然と会場を見ていた。
何が始まろうとしている?ゼロは、何を考えている?
そう思ったとき、ゼロの姿が見えた。会場内に、ゼロがいたというのだろうか?
次の瞬間、彼女は自分の目を疑った。

「ゼロが……………」

煙が晴れ、会場内が見えたとき、その異様な光景に全ての人が言葉を失う。百万人いた日本人が、百万人のゼロに変わっていた。
ライはすぐにゼロの思惑に気付き、鋭い目つきをして笑った。

「なるほど、そういう手があったか、ゼロ。やっぱり君は、頭がいいよ。今回は君の勝ちだね。」

全ての日本人がゼロへと姿を変えたのを見て、本物のゼロであるルルーシュは叫んだ。

「全てのゼロよ!!!ナナリー新総督のご命令である!!!国外追放を受け入れ、新天地を目指すのだっ!!!」

ざわざわと会場内がざわめく。みんながみんな、自分はゼロであると叫びだす。リリィの頬を冷や汗が伝う。反乱?いいや、ゼロの言うことは理にかなっている。ゼロの正体が誰であるのか分からない以上、不特定多数の人がゼロを名乗ればそれはゼロなのだ。
ブリタニア軍だって混乱している。下手に動けばまた昔みたいに…………!!!


***


「何が起こっているのですか?」

式典会場から離れるナナリーは不安を感じていた。
ゼロが来てくれた。しかし、騒ぎが起こり、自分は安全な場所へと連れて行かれる。見えない。それをここまで呪ったことはない。ナナリーの安全を守る人物が、会場内にはローマイヤが残っているから安心だという。だけど彼女はローマイヤのことが信用できなかった。

「任せろと言うのですか?」
「大丈夫。」

ナナリーの隣を歩くアーニャが、冷静に答えた。

「スザクがいるから。それに、ライもリリィも一緒に…………」

その言葉を聞いて、ナナリーの不安は飛んでいく。スザクのほかに、ライもリリィも会場にいる。ルルーシュの友・スザク。自分の信頼する姉・リリィ。そして、なんでも愚痴を聞くと言ってくれたライ。
そうね、その三人がいれば、きっと大丈夫だわ。ナナリーの不安は、すぐになくなった。


***


カチャンと横で音がしたので、リリィは音のするほうを向く。自分の隣で、ローマイヤが銃を手にしていた。
「待って!!!」とリリィが叫ぶ。けれどもローマイヤは会場へと銃を向けた。

「だめっ!!!そんなことしたらっ!!!」

彼女はローマイヤの前に飛び出し、彼女の握る銃口を自分の心臓へと突きつける。リリィのとっさの行動にライが叫び、スザクもそちらを向いて焦った。

「何をするのですかリリィ様っ!!!」

ローマイヤは鋭い声を上げる。リリィは目の前の彼女を睨みつけ、静かに答える。

「日本人を撃つというのなら、まずは私から撃ちなさい!!!スザク、早く命令を!!!責任者はあなたよ?ゼロを撃つのか、それとも見逃すのか!!!でも、よく考えて。あなたの言葉で死ぬ人が出る。あなたの言葉で、助かる人がいる。」
「枢木スザク!!!これは反乱だろう!?早く、攻撃命令を!!!」
「どうするんだ、スザク?」

三人の声が、同時にスザクの耳に飛び込んでくる。
スザクはリリィの心臓に向けられた銃口を見た。胸に押し付けられたそれ。
リリィなら、なんていう?そんなの分かりきっている。リリィなら、見逃せというに違いない。だから彼女は、ローマイヤの前に立っているのだ。
でも………許せというのか?ゼロを、百万人ごと………!!!
決めかねているスザクを睨みつけ、ローマイヤは引き金に指をかける。それを見て、リリィは静かに目をつぶった。

リリィ様、残念です。あなたがそんなお方だったとは。死になさい。ゼロ…………。」

スザクはその光景を見て、とっさに判断する。
そう、ナナリーもユーフェミアも、許そうとしていた。だから………!!!

「やめろっ!!!」

スザクはローマイヤの銃を奪い取る。固い無機物が自分の胸から消えたことが分かり、リリィは脱力した。すぐにそれをスザクが支える。その行動に、ローマイヤは異議を唱えた。

「何をするのですっ!?」
「ゼロは国外追放!!!約束を違えれば、他の国民も我々を信じなくなりますっ!!!」

ぎゅっと、スザクはリリィの腰に回した手に力を入れた。

「国民?他のナンバーズのことか?あなたがナンバーズだからって………!!!」
「ナンバーは関係ないわっ!!!それに、国策に賛成しない人を残してどうしろというの!?それこそ暴動が起きるわ!!!それならいっそ、国外追放にしてしまったほうが、ブリタニアとしては好都合よっ!!!」

スザクと一緒に、リリィも声を張り上げてローマイヤに言う。それでも彼女は引き下がらない。

「しかしっ!!!」

リリィはローマイヤに向けていた視線を、今度はゼロへと向けた。そのとき、一瞬だけ、ゼロがひるんだように見えたのは見間違いだと思った。でもそれは本当のこと。
ルルーシュは、スザクに抱かれるようにして支えられる彼女を見て、心の中で叫んだ。

(なぜ………なぜお前がそこにいるっ、リリィっ!!!!お前は、本国にいるんじゃ………っ!!!)

しかし今は、動揺を見せるときではない。すぐにルルーシュは自分の心を押さえつけた。
ゼロの姿をとらえたリリィが、悲痛な声で叫んだ。

「ゼロっ、私達はもう、犠牲を出したくないっ!!!」
「約束しろ、ゼロ!!!彼らを救ってみせると!!!」

同時にスザクも、ゼロに対して叫ぶ。ゼロは約束すると言葉を口にし、今度はスザクに尋ね返す。
エリア11に残る日本人を、救えるのか?と。スザクは一瞬リリィを見て、そして答える。
そのために軍人になったのだと。答えを聞いて、ゼロは笑った。そのまま画面から消える。
百万人のゼロは、中華連邦が用意した船に乗り込み、新天地を目指した。ブリタニア軍は、それを黙ってみているだけ。
その日、行政特区・日本で、血が流れることはなかった…………。それが正しい判断だったのかは、誰にも分からない。


***


スザクは誰もいなくなった会場に立ち、百万人がいたはずの場所をずっと見つめていた。
スッとスザクの隣に立つ人物がいた。赤い髪に赤い瞳。リリィ・ルゥ・ブリタニア。彼と同じように、会場を見渡している。不意に、スザクが口を開いた。

「これは、僕が発砲命令を出さないと信じてこその作戦だ。ゼロは僕のことをよく知っている…………。」

スザクの言葉に、リリィが柔らかい表情をする。そして、彼の手をとって、優しく自分の手で包み言葉を返した。

「私もスザクのことをよく知ってる。スザクなら、人を殺さないって信じてた。だから私、あの時あの場所に立っていられたの。スザク、私に命をくれて、ありがとう。」

そのまま静かに、リリィはスザクの手を、自分の胸の前へと持っていく。
あの時リリィは、ローマイヤの前に立ち、銃口を自分の胸へと突きつけた。今考えればこのお姫様は、ずいぶんな無茶をしてくれたなとスザクは苦笑した。でも、あのおかげで冷静な判断ができたような気がする。
もしもあの時、ゼロを撃てと命令していたら、リリィはこうしてここにはいなかった。この会場も、血の海だっただろう。ナナリーも、ユーフェミアのように………。
そこまで考えて、スザクは思考をストップさせた。夕日に照らされるリリィを見て、そのまま抱きよせる。

リリィ、僕からもありがとう。君のおかげで、判断を誤らなかったと思ってる。」

ぽんぽんと、彼女に背中を叩かれ、幼子みたいだとスザクは思う。だけどこのぬくもりがとても気持ちいい。もう少し、こうしていたい。スザクはそう願い、リリィをもっときつく抱きしめた。腕の中のリリィが抗議の声を上げるが、そんなの気にならなかった。

一方、ルルーシュは海を見ながらスザクのことを考えていた。
最悪の敵だからこそ、ルルーシュにはよく分かる。そしてこれは、ナナリーのことを理解しているからこそできた判断。今は感謝しよう、枢木スザク。そして忘れるな、あの約束を…………。
そこまでルルーシュは考えて、すぐに仮面の中の目は閉じられた。それは同時にリリィのことを考えたから。
彼女があの場所にいたのはなぜだ?式典に参加していたのか?でも…………気になったのは、リリィの格好。ドレスではなく、スザクと同じように、騎士服を身につけていた。何か嫌な予感が彼を襲う。
ルルーシュは、そっと仮面をはずし夕日を見る。リリィの瞳と同じ、燃える色のような太陽だった。



やや遠きものに思ひし テロリストの悲しき心も 近づく日のあり
(石川啄木)

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