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所詮そなたには、分からぬだろうが

近侍である三日月宗近は、美和の付き添いで現代の京の町へやってきていた。
この場所には彼女が贔屓にしている店があり、他にもいろいろな店が軒を連ねる商店街であった。
「少し時間がかかるから、適当に暇を潰してきてもいいよ」という彼女の言葉に従い、宗近は商店街をぶらぶらする。
ここには何度も来ているため、宗近はこの周辺の道を覚えてしまっている。
それもあって、美和は宗近に「適当に暇を潰してきていいよ」なんて言うのだ。

(さて、今日はどこに行こうか。今剣が好きそうな、金平糖でも探しにいくか。ついでに美和の分も買ってやろう・・・)

今剣と彼女の喜ぶ顔を思い浮かべ、宗近はフッと笑う。
道行く女性たちが、宗近のことをチラチラ見ては顔を赤らめながら去って行く。
今の彼は、Vネックのシャツにジーパン、伊達眼鏡をかけている。いつも頭にある髪飾りは外され、どこからどう見ても現代の青年であった。
それでも女性たちが声をかけてこないのは彼の、人ではない気配をかすかに感じているからなのかもしれない・・・。

(確かこのあたりに、京の飴を扱っている店があったな・・・)

目的地へと向けて、宗近は歩を進めた。
歩を進めながら、自分の生まれた時代の京とは全く違うな・・・と毎回感じてしまう。
昔の京も、こんなふうに店を連ならせていたが、こんなに大きくはなかった。

(しかしあの時の俺は、人ではなく刀であったがな・・・)

こんなふうに人の形を成し、主君のために金平糖を買う姿など、あの時は想像できなかったであろうな・・・と一人笑う。
その時、ふと何かの気配を感じて歩みを止める。
すぐそばに、小さな社があった。なんとなく、足を踏み入れてみる。
小さな社のそばに、地蔵が一体微笑んでいた。赤いよだれかけをかけてもらい、おまんじゅうのお供え物がある。
地蔵をじっと見つめていると、人の気配がする。宗近が振り返ると、一人の老人が立っていた。

「こんな小さな社に、何か用かな?」

にこにこ笑う老人の雰囲気に、宗近はすぐ気づく。

「・・・そなた、人ではないな・・・」
「そういうお前さんこそ。お前さん、刀の付喪神であるか・・・。」

老人は、宗近のそばをじっと見て言葉を発する。
本体である”三日月宗近”は今持参していないが、この老人には、宗近のそばに浮かぶ本体の影が見えているのであろう。
宗近はふっ・・・と笑って彼に話しかけた。

「まさかこんなところで、人ではないものに会うとはな。そなたな・・・なるほど、この地蔵が人の姿を借りてるのだな・・・。」
「いかにも。お前さんは、誰かに顕現させられたのだな。付喪神は妖怪にはなれても、人の姿をなすことはできぬからな。」

ましてや、そのように美しい姿・・・と老人はまじまじと宗近を見た。
宗近は少し誇らしげに笑う。このように美しく顕現できたのは、美和の力の大きさも関係している。
彼女は本当に優秀だ。能力も、仕事ぶりも。そして彼女自身も美して優しく、刀剣男士たちの心を掴んで放さない。
もちろん、宗近の心も・・・。

「人間の少女が俺に任務を与えるため、俺を顕現させたのだ。」
「しかしお主、付喪神といえどもお主は神だ。なぜ神が人間に従うのだ?勝手に顕現させられて、勝手に任務も与えられ・・・。怒らぬのか?」
「怒るなど・・・。むしろ俺は、その少女と一緒に居たいと思うておる。確かに俺は、品格は下のほうではあるが付喪神という神である。しかし、俺は彼女と一緒にいたいのだ。」

宗近の話を聞いて、老人は少しあきれかえった顔をした。

「もしやそなた・・・その少女を好いておるのだな。」
「ははは。そうかもしれん・・・な。」

否定はせずに笑う宗近。さっ・・・と老人の顔から少し笑みがなくなる。
少し怖い顔をして、彼は小さく言った。

「人の子と、人ではないものの恋とは、儚すぎるものぞ。」

そのまま老人が宗近の横を通り抜けて行く。彼の姿は、設置されている地蔵と重なる。そのままスッ・・・と姿が消えてしまった。本来の姿に戻ったのだ。
目の前の地蔵は、ただ優しく微笑んでいるだけ。先ほどのあの老人の怖い顔が想像できないくらいに。
宗近はその地蔵の前で小さく呟いた。

「それはこの俺が、十分分かっていることではある。神は所詮、人の子とは一緒に生きれぬ。ましてや俺は、付喪神。今はただ、”三日月宗近”という名で縛られているだけだ。”三日月宗近”自体がなくなれば俺は・・・・。」

グッと拳を握る。
この体も所詮は美和の力を利用して作った作り物。しかし、美和を想うこの心だけは作り物ではない。

「神が人を愛してしまうのは、儚いだけかもしれない。それでも俺は、美和のことを慕っておる。その気持ちだけは、どうしても捨てたくはないのだ・・・」

彼は空を仰ぎ見る。真っ赤な夕焼け。
さわさわと風の流れる音に混じって、美和の、宗近を呼ぶ声が聞こえるような気がした。
宗近はそのまま、燃えるような夕焼けを見て思った。




所詮そなたには、分からぬだろうが




・・・と。風にのって、美和の声がはっきり聞こえてくる。
宗近は小さく微笑みながら、彼女の声がするほうへと歩き始めるのだった。


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