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すがるのなら俺にしろ


美和の初期刀・加州清光が折れたという知らせは、遠征から帰ってすぐに聞かされた。
加州清光は、この本丸の中で一番強かった。そして、美和の心の支えにもなっていた。きっとたぶん、人間の言葉で恋仲と呼ばれる関係だったんだと思う。本丸の中では皆、それを微笑ましく思っていた。俺をのぞいて・・・。

「・・・で、あの人は?」
「部屋にこもったきり。全く出てこない。部屋の前にご飯を置いてても、手がつけられてなかった。少しは食べてくれないと、彼女・・・病気になっちゃわないか心配で・・・」

光忠の言葉に、小さくため息をつく。
美和が部屋に閉じこもってから、まる2日が経過していた。食事もとっていない。部屋の外から話しかけると返事はするし生きてはいるようだと、光忠は言っている。
あの人が顔を見せないだけで、この本丸の活気は失われた。大切な主が姿を見せず、大事な仲間を失ったこの本丸はどうなっていくのだろうか。このまま彼女が姿を見せなかったら・・・。

「見てくる。」
「あ!ちょっ・・・国広君!今の彼女は加州君を失ったんだし、そっとしといたほうが・・・」
「しかしあの人は審神者だ。いつまでも落ち込んでられたら、こっちが困る。」
「それは・・・・」

言葉を返せなくなった光忠を背に、俺は美和の部屋へと歩き出す。
美和の部屋は静まり返っていた。呼吸さえも聞こえないくらいに・・・。名前を呼ぶが、返事はなかった。少しだけ、焦りが生まれた。もしも彼女が・・・死んでしまっていたら?
震える手で障子を開けると、美和は部屋の隅で丸くなっていた。静かに呼吸はしてるようで、俺は安堵する。

美和。いつまでそうしてる気だ。」

そばに座るが、彼女は丸くなったまま折れた加州清光を抱きしめていた。言葉は返ってこない。

「加州清光はもういない。それにもともとあいつは、刀剣の付喪神。美和とは違う存在なんだ。それはお前も分かっているだろう?それを承知で、お前は加州と恋仲になった。折れればいなくなると知っていただろう・・・?」

彼女が小さく頷くのが分かった。
俺は不器用だ。だから美和の気持ちにはうまく寄り添えない。俺の性格上、厳しい言葉しか彼女には投げかけられなかった。
美和がか細い声で「かしゅう・・・」と言葉を紡いだ。俺は彼女が抱きしめていた加州清光を取り上げて脇に置く。パッと彼女が身を起こして俺を見た。やつれた表情で、涙のあとを残す彼女は痛々しかった。小さく唇が呟く。「加州を返して」と。それはできない。加州清光はもう、折れてしまったのだから。折れた刀は・・・使えない。
白くて細い腕が、俺の脇に置かれた加州へ伸ばされる。俺はその腕をひっぱり、彼女を俺の腕の中へおさめた。そのままできるだけ強く抱きしめる。

美和、すがるなら加州じゃなく俺にしろ。加州はもう、いないんだ。折れた刀はしゃべれないし、美和を慰めることもできない。だけど俺なら・・・お前を慰めることぐらいはできる・・・」

ゆっくりそう言葉をかけると、美和は小さく泣き出した。声を押し殺して・・・。
そんな彼女の背中を優しくなでてやる。この悲しみを超えられたらきっと、彼女はいつものように笑ってくれるだろう。
美和が笑ってくれるのなら、俺の腕の中でたくさん泣くといい。その分俺がお前を慰めてやるから・・・。そう思ってしまう俺は、かなり卑怯なヤツだなと自分で小さく笑うのだった。





すがるなら俺にしろ




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