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2015.11.18  月に乞うは秘めたる想い <<02:58



空気の冷たい夜だった。思うように眠れず、布団の中で寝返りを幾度となくうっていた。

「眠れませんか、三日月殿。」

ふいにかけられた言葉。隣で眠っていた小狐丸が、じっと俺を見つめている。起こしてしまったのだろうか?

「すまぬ。起こしてしまったか?」
「そうですね。少し目が覚めてしまっただけですよ。三日月殿、眠れないのでしたら、少し散歩をしてみてはどうですか?今日の月は三日月だと、先ほどぬし様がおっしゃっておられました。」
「なるほど、道理で・・・。そうだな、少し散歩をしてくるとしよう。」
「寒いですし、風邪をひかぬよう・・・」

小狐丸はそれだけ言うと、再び布団の中へ潜った。
それを見届けてから俺は暖かい布団を抜け出し、静かに障子を開けて庭へと出た。
空気は冷たいが、降り注ぐ月の光は暖かい。
打のけが三日月のように見えることからつけられた三日月宗近という名前。もとは名もなき付喪神だった俺は、その名前に縛られている。
しかしそれは、俺にとって不都合なものではなかった。愛しい娘が、優しくその名前を呼ぶ。それだけで興奮を覚えてしまうのだ。

「どうすれば俺の想いは、美和に届くのであろうか・・・」

自身の主である美和を、愛してしまった付喪神・・・。それが俺である。他の付喪神たちから見れば、たいそう滑稽であろうな・・・。少しだけ、くすりと笑う。人間を愛してしまった俺はいつしか、どうやって彼女に自分の想いを伝えようかと、眠れないほど悩むようになってしまった。今宵のように・・・。

「同じ三日月という名前のよしみで、空に浮かぶ三日月が、俺の想いを美和に伝えてくれればどんなに楽なものか。三日月よ、俺の想いをあやつに伝えてはくれぬだろうか?・・・まぁ、空に浮かぶ月に乞うたところで、月は何もしてはくれぬか。」

俺は小さく笑った。
こんなに月の綺麗な日には、舞を舞いたくなってしまうのは平安生まれの性分だからだろうな。
懐から狩衣と同じ色の扇子を取り出し、静かに舞う。
頭の中では、いつどうやって美和に想いを伝えようかと考えながら・・・。考えても、いい考えは思い浮かばないのだがな。




月に乞うは秘めたる想い




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