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三日月宗近の料理


「主、今日も夕食に顔を出さなかったね。」
「どうしても今日中に完成させて提出しないといけない資料があるんだって。」
「でも、何か食べないと倒れるんじゃ・・・」

燭台切光忠と歌仙兼定の言葉を、三日月宗近はぼんやりと聞いていた。二人は食事の片付けをしながら主のことを心配する言葉ばかりを紡いでいた。

「三日月殿、そろそろ我ら三条派の風呂の時間ですぞ。」

同じ三条派の小狐丸に突然言葉をかけられ、宗近は「あ、あぁ・・・」と素っ気ない返事をしてしまった。風呂の準備をしながら宗近は思う。確かに、主はここのところいつも忙しそうにしており、あまり食事をとっている姿を見た事がない・・・と。
風呂へ行くには主の部屋の前を通る。少し様子を見てみてもいいだろう。そう考えてみたものの、実際主の部屋の前に来ると、そこへ入って行くのも気が引けた。
『仕事中につき、入室禁止!』と障子には貼られ、入って行けるような雰囲気ではなかった。

「主さまも忙しそうで・・・。主さまのお姿を見れないのは、とても寂しいことでございます。」

小声で話す小狐丸とともに主の部屋を通過し、風呂へと向かった。ゆっくり湯につかりながらも、考えることは主のことぼかりだった。まるで、自分がへし切り長谷部にでもなってしまったようだ。
風呂から上がり、宗近はそのまま床へ入った。ぽかぽかと体が暖かいうちに布団へ入ってしまったほうが、ゆっくり眠れることを知っているからだ。他の刀剣男士たちからは、「じーさんはいつも早寝早起きだな」なんていつもからかわれる。しかし、今日は違った。夕飯を食べなかった主のことが気がかりで仕方ない。そのうちに夜もふけ、本丸の中は静かになった。
電気は消され、月の光だけが本丸の中を照らす。時計は夜中の1時をさしていた。
隣で眠る石切丸が小さく寝言で祝詞を唱え、岩融がガーガーといびきをかいている。宗近はすっ・・・と起き上がり、布団から抜け出した。
目指すは本丸の台所。少し残っている冷ご飯を温め直し、冷蔵庫から卵を取り出す。だしと混ぜ、フライパンで器用にくるくると卵を巻いた。温め直したご飯をにぎり、二つのおにぎりを作る。あたたかいお茶を入れ、それをお盆に乗せてよく知る場所へと向かった。
主の部屋。真夜中だというのに、電気がついていた。主はまだ起きているらしい・・・。相変わらず、障子には「仕事中につき、入室禁止』の張り紙。

「主、入るぞ。」

相手の返事も待たず、宗近は部屋へと入って行った。机の前に座ってパソコンとにらめっこしていたこの本丸の主である少女が、驚いた表情で宗近を見ていた。

「宗近・・・。急にどうしたの?」

にっこりと微笑むが、その表情は疲れきっている様子。

「主、少しは休んだほうがよいと思うが・・・。そなたの好きな握り飯と、だし巻き卵を作ってきたぞ。今日の夕餉も食べずに仕事ばかりしおって・・・」

審神者の目の前に、宗近が作ったおにぎりとだし巻き卵が乗ったお盆が置かれる。

「これ・・・宗近が作ってくれたの!?あ、ありがとう!そういえば、晩ご飯食べるの忘れてた・・・」

少しはにかんだ少女が、ゆっくりとおにぎりを口に運ぶ。少しだけかじり、もぐもぐと口を動かしたあとふわりと笑った。

「おいしい!やっぱり宗近の作るおにぎりは絶品だね!」

彼女の言葉に、宗近が嬉しそうな表情を見せる。時折こうして、忙しそうにしている主に夜食を作って持って行くのが宗近の役目だった。きっと他の刀剣男士たちは知らないだろう。実は宗近が料理上手なことを・・・。

「こんなに美味しい料理が作れるなら、光忠や歌仙と一緒に料理当番すればいいのに・・・」
「俺が料理の腕を磨いてるのはそなたに食べさせるためであって、他の刀剣たちに食べさせるためではないぞ、美和。」

今まで少女のことを『主』と呼んでいた宗近が、急に彼女の下の名前を呼んだ。美和と呼ばれた少女も困惑することなく、いつものことのようにとらえる。
美和はせっせとおにぎりやだし巻き卵を口に運んでいく。美味しそうに食べている美和を見つめる宗近の目は、優しいまなざしをしていた。

美和。食べてばかりでなく、茶も飲まねば。」
「だって、宗近のおにぎりと卵焼き、美味しいんだもん!」

美和は全部食べ終わったあと、お茶を一気飲みし、ぷはーっと息をついた。手を合わせて丁寧に「ごちそうさま」と言ったあと、あぐらをかいている宗近の膝の上に座った。

「これはこれは・・・。どこぞの大きい猫が甘えてきおった。」
「だって・・・疲れたんだもん。これくらい許してよ。」
「誰も許さぬとは言っておらぬ。むしろ・・・これくらいで許されると思ったのか?美和。」

宗近は膝の上に座っていた美和を畳へ押し倒し、両手首を押さえ込む。怪しい表情を浮かべて上から美和を見下ろすと、彼女はその先に待つ結末を想像して、顔を赤らめた。

「宗近、仕事、まだ終わってないんだけど・・・」
「知らぬな。誘ってきたのはそなたではないか。仕事ばかりで俺に寂しい思いをさせた分、どうなるかは分かっておるな?それにそなたのことだ。急ぎの仕事は、もう全部終わってるのだろう?」

美和の性格を見抜いているような宗近の発言に、彼女は押し黙った。確かに、急ぎの仕事は終わっている。まだ終わってない仕事は、明日にでもまわして大丈夫なものばかり。

「まだ終わってないって言ったら?」
「知らぬ。俺には何も聞こえぬな。」

宗近はそれだけ言うと美和の唇を奪う。甘く、激しく。これまでの分の寂しさを埋めるように。
そうして二人は深い夜へと溺れていく。美和の飲み残したお茶が、小さく湯気を立ててゆらめいていた。





三日月宗近の料理



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