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松田との話


「審神者会議・・・?」

美和の言葉に、目の前の男が頷いた。彼の名前は松田透。着崩した着物の胸元からは、男らしい胸筋がちらりとのぞいていた。

「俺だって、進んで審神者会議なんて出たくもねぇーよ。けど、上からのお達しだ。全審神者は、今度本部で開かれる審神者会議に出席しろっていう・・・。」
「全審神者・・・。でもそんなことしたら、全部の時代に置かれた審神者がいなくなって、刀剣男士だけになっちゃうんじゃ。それって危ない気もするけど・・・」
「んなこた知らねーよ。上は上で、それで大丈夫って判断したんじゃねーのか・・・?」

松田が大きなため息をついた。彼の態度に、美和の後ろに控えていた加州清光が不服そうな表情を見せた。「人の本丸ででかいため息つきやがって」と顔に出ている。
隣に座っている三日月宗近が加州をちょいちょいとつついてたしなめると、彼はぷいっと横を向いた。

「そう・・・ですか。でもなぜ、上はそれをメールなりなんなりの手段で送ってこないのでしょうね。わざわざ松田さんの手を煩わせるような連絡手段・・・。」
「あぁ。こっちとしてはいい迷惑だよ。ったく・・・。しかし、メールだと敵にハッキングされる可能性もあるだろうから。上は上で、極秘に審神者会議を進めたいだろうしな。何せ歴史修正主義者と戦えるのは、刀剣男士を従える審神者だけだ。もしも審神者に何かあったら、時の政府にとっては痛手だ。」

しばらくの沈黙。その沈黙を破ったのは、先ほど不服そうな顔を見せた加州清光だった。

「で、おっさん。その審神者会議とやらに、俺たち近侍は同行させてもらえるんだろうな。」
「確かに。そこは俺も確認しておきたいところだ。うちの主に、何かあっては困る。」

加州とは全く違う穏やかな表情で、宗近も松田に問う。

「あぁ。もちろんそこは同行許可は出ている。うちからもこの鶯丸と獅子王を同行させようと思ってるからな。」

松田が少しだけうしろを振り返り、親指で二人を指差した。
名前を呼ばれた鶯丸は少しだけ口角を上げ会釈し、獅子王はにっこりと笑った。

「鶯丸に獅子王・・・。どちらも天皇に献上された刀。とっても心強いです。うちからも、この加州清光と三日月宗近を連れて行きます。」
「任せてよ!何かあったら、俺が美和を守る!」
「うむ。美和が望むのなら、俺も行くとするか。」

二人の言葉に、美和は笑って頷く。それを見ていた松田が、少しだけ苦笑いした。

「三日月宗近・・・。天下五剣のレア太刀なんか連れて行って、大丈夫なのか?おそらく今の審神者の中で三日月を顕現させてるのは、お前んとこだけだと思うが。折れたりしねーだろうな・・・。折れたらもったいねーぞ。」
「松田とやら、その心配は無用だ。もっとも美しい刀と呼ばれてはいるが、俺は・・・強いぞ。」

怪しい表情を浮かべた三日月を見て、松田はぶるっと体をふるわせた。見た目の美しい三日月宗近が、腹の中になにか一物抱えているような感じがしたからだ。

(扱いづらいと言われた加州清光に、腹ん中に何か一物抱えた三日月宗近・・・。こんな癖のある刀剣男士どもを操る美和の力量・・・。ホントにこいつは、ヤベー審神者だぜ。敵に回したくないくらいにな。)

胸の内でそう思いつつ、松田は畳から立ち上がった。続いて、後ろに控えてた鶯丸・獅子王も続く。
立ち上がった三人を見て、美和は目を大きくさせて言った。

「もう帰るんですか?せっかく美味しい茶菓子を用意していたんですから、ゆっくりお茶でも飲んで帰ったらいいのに・・・。」
「あのなぁ・・・俺は遊びに来たんじゃねぇーんだぞ。それにこれから、江戸の記憶と池田屋の記憶の時代にも行かなきゃなんねぇーんだよ。」
「江戸と池田屋っていうと・・・ああ!かなめちゃんと桂木のおじいさんのとこ!大変ですねぇ。」

のんびりと言葉を紡ぐ美和を尻目に、松田は軽く手を振って「じゃーな」と言い、大広間を出て行った。
彼が玄関へと向かう途中で、今剣の「あ。まつだのおじちゃん!」という声や、物吉貞宗の「松田さん、こんにちは!」という声が聞こえて来た。松田がこの本丸に来ることは、そう珍しくはないのだ。何しろ松田と美和は、時の政府が誕生した最初の年の最初の審神者なのだから・・・。

美和、審神者会議とやら、少々胸騒ぎがする。」

ふいに、宗近が小さく呟く。その言葉に、「・・・うん」と美和が頷いた。野生の勘というものか、それとも巫女の一族としての先読みの力なのか、どちらかは分からないにせよ、ただなんとなく嫌な予感がする。

「何も起こらなければいいけど・・・」

彼女の小さな不安の言葉は、おやつを求めてやってきた短刀たちの声にかき消されるのだった。



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