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2016.07.25  青野遊星が来る <<17:33



とある日、審神者・美和の部屋で若い男女の笑い声が響いていた。それはこの本丸の主・美和と、別の本丸から来た審神者・青野遊星の声だった。

「それでさ、松田さんが言うわけよ。お前、暇だろ?・・・ってね!だから俺がこの書類を届けに来たわけ。実際俺も暇じゃないんだけどなー。もうそろそろ大学の夏期試験だし、それ終わったらサークルの練習試合だろ?まぁ、審神者の仕事だってちょこちょこはやるけどさ・・・」

大きな身振り手振りを加えながら、遊星は困った顔をして話す。美和はそれを聞き、袴の袖で口を押さえる。

「そうでしたんですか。一言言ってくだされば、こちらから書類を取りに伺いましたのに・・・」
「いやいや!それは大丈夫だって!久しぶりに美和ちゃんとこにも遊びに行きたいなって思ってたから。薬研も一期も、久しぶりにそっちの三日月や清光にも会いたいかなーって思ってたし。」

遊星が後ろを振り返れば、控えていた一期が頭を下げ、薬研はにかっと笑った。美和の後ろに控えた宗近が一期に「久しいな、一期」なんて言うもんだから、宗近の横にいた加州は小さくため息をついた。他の本丸の刀と会うのは正直疲れる・・・と加州は思っていた。向こうの薬研はそれを察したようで、一瞬だけばつの悪そうな表情を見せる。

「私も久々に、遊星さんやそちらの刀剣男士の方々とお会いできて嬉しいですよ。前回松田さんが来た時、茶菓子があるからどうですかって誘ったんですが、忙しいからと断られてしまいまして・・・」
「おっさん、甘いもん苦手そうだもんなぁ・・・」

ぼそっと遊星が放った言葉に、「違いないや」と加州は少しだけ笑った。あの図体でかいおじさん審神者が、甘いものを美味しそうに食す姿なんて想像できなかった。
タイミングよく、燭台切光忠がお茶とお菓子を持って入ってくる。客人の前にそれらを置くと、一礼して部屋を出て行った。

「どうぞ召し上がれ。京都から取り寄せた水出し緑茶と、美味しいわらび餅です。」

涼しそうな色あいの緑茶とキラキラ光るわらび餅を見て、遊星は感嘆の声を上げた。一期や薬研も、まじまじと目の前に置かれたものを見ていた。

美和ちゃんはホントに美味しそうなもの選ぶよねー。」
「そうですか?そのお茶屋さんとお菓子屋さんとは代々続く間柄でして・・・。夏になるとこうしてお茶とお菓子を取り寄せるのが毎年の恒例行事なんです。」

くすくすと美和が笑ったあと、宗近が自慢げに言った。

「ほっぺたが落ちるほどうまい茶菓子だ。味わって食すがよい。」
「なんで三日月が自慢げに言うんだよ!選んだのは主だろっ!」
「ふむ・・・。そうであったな。だがうまいのは事実だ。」

加州と三日月のやり取りに遊星たち3人は笑ったあと、早速わらび餅や緑茶を食す。舌鼓をうちながらの彼らに、美和はそうだ・・・と思い出したことを尋ねた。

「それで、遊星さんは今回の審神者会議、出席されるのですか?」
「そこなんだよね!」

待ってましたと言わんばかりに、彼は口を開いた。

「実はさ、審神者会議の日はちょうど大学の夏期試験でさ!しかも絶対外せない試験なのよ!いつもなら大学側が考慮してくれるんだけど、今回だけはちょっと無理そうでね。政府に確認したら、やむを得ないってことで試験のほうを優先することになっちゃったから、今回俺はパスかな・・・」
「そこまで強制参加ではなさそうなんですね。」
「そうそう。やっぱり時の政府も、全審神者を集めるのは危険って分かってんのかな?そういうふうにどうしても外せない用事のある審神者は、欠席が許されてるみたいだよ。」

モグモグとわらび餅を食べながら、しゃべり終わると一気に緑茶を飲み干す。ごちそうさまー!・・・という遊星の元気なl声が響き渡った。一期や薬研ももう既に食べ終えており、きちっと姿勢をただしている。

「そうなんですか。では出席されるのは・・・」
「松田のおっさん、美和ちゃん、峯崎さんは絶対だし、桂木のじーさん・・・かな。かなめちゃんも少し大事な用事があるみたいで、参加しないんだってさー」
「それは残念。久しぶりにかなめちゃんに会えると思ったんですけどね・・・」

かなめというのは、江戸の記憶で審神者をやってる少女である。美和はこの少女を、自分の妹のように可愛がっていた。それは遊星も同じで、彼もこの幼い審神者が可愛くて仕方なかった。

「ま、そういうことで・・・じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。そのまま別の本丸との演練なんだ。久しぶりに演練だから、うちの刀剣男士たちも気合い入りまくりでさ。演練まで俺が鍛錬つきあうって言っちゃったから、そろそろ帰らないと。」
「そうですね。主からの鍛錬、みなが今か今かと待っておりましたよ。」

遊星の後ろに控える一期が言った。
見送りはしなくて大丈夫だよ・・・と言い残し、三人は美和の部屋をあとにする。一気に静かになった部屋で、美和は渡された封筒の封を開ける。中には審神者会議についての重要書類が入っていた。それを確認した彼女は、小さく「ふう」とため息をつく。

「どうしたのだ、主。」
「ううん、何でも。問題はサーバーだなって思ってね。もし向こうで何かあった時、本丸は刀剣男士たちが守れても、サーバーだけは守るのが難しいなぁ・・・と思って。一応、こんのすけには頼んで行くけど、こんのすけ一人では限界があるだろうし・・・。ここのサーバーにはたくさんの機密情報もあるから・・・」

人より少し小さい頭を抱える美和。その姿を見て、加州が天をあおぐ。

「なるほどねぇー。あーあ。いっそのことこんのすけみたいに俺たちがデジタル化されて、サーバーに入れたらいいのにねー。サーバーを守る刀剣男士ってやつ?そしたら主の悩みの種なんて、一気にかいけ・・・」
「あっ!!!その手があったか!」

加州の言葉を最後まで聞かず、美和はぽんっと手を叩いた。何がどうなっているのか分からない宗近と清光は、ただただ首をひねるのみ。
美和は小さく笑っていった。「松田さんと峯崎さんにお願いしてみよう」と一言だけ。宗近と加州はお互い顔を見合わせたまま、不思議そうな顔をするのだった。



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