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恋と知るのは先の話

夜中。静まりかえった本丸の一室で、石切丸は一心に加持祈祷していた。なんかだ胸騒ぎがして、目がさめてしまったせいである。神棚の前にくれば落ち着くのではないかと考えた彼は、1時間前からこうしてずっと加持祈祷をしているのだ。
今日は月も雲に隠れてしまっている。月の明かりがないだけで、ずいぶんとあたりが暗く感じた。

(主はもう、寝てしまっただろうか?)

ふと、この本丸の主である美和のことを思い出す。石切丸が顕現されてから、はや数週間・・・。この本丸で石切丸は、比較的新しい刀剣男士だった。初期刀と呼ばれる一番古い刀剣男士は山姥切国広で、彼はことあるごとに美和へちょっかいを出すし、二番目に古い刀剣男士は同じ三条派の三日月宗近だった。彼も美和へいつもべったりくっついている。彼らを少し羨ましいと思うのの、石切丸は「何を考えているんだ。相手は主だぞ?」といつも邪念を振り払っている。今だって、加持祈祷中であるにも関わらず、浮かんでくることといえば美和に関する事ばかり。

(最近主は忙しそうだが、ちゃんと睡眠は取っているのだろうか?)

祝詞を唱える口と、美和のことばかりを考えてしまう頭。どうにもちぐはぐで・・・。いつしか祝詞を唱える声は紡がれなくなる。代わりに口の端からはため息と小さな笑い声が漏れる。

「・・・ははっ。どうにもダメだな。最近は主のことばかりを考えてしまう。一体私は、どうしたのだというのだ。」

よく分からない感情に心が支配され、加持祈祷どころではなくなっていく自分が少し怖かった。でも、このよく分からない感情はもどかしさもあり、そしてどこかが暖かかった。
石切丸は立ち上がり、襖を少し開ける。ひやっとした空気が自分の熱くなった体を冷やしていく。空を見上げれば雲に隠れていたはずの月が出ていた。今日は満月だった。

「主にも見せたいくらいだね。まだ彼女は起きているだろうか?」

月の光に照らされながら石切丸は小さく呟く。彼の心に生まれた感情が『恋』だと知ることになるのは、ずいぶん先の話であった。


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