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#1 汝、再び目覚めよ


2年前。私はペルソナ使いとして、多くの仲間と戦った。
ワイルドの力。私には特殊な力としてそれが与えれられていた。
でもその力を与えられたのは、私だけではない。
リーダーである彼もそうだった。とりわけその人の力は私よりも強く、輝くような力で・・・。
戦いが終わった時、彼と私は命の答えにたどり着いた。
私が行き着いた答えは、命の始まりと生き抜くための命の強さ。
だけど彼は逆で・・・終わる命とその先に待つ新たな旅立ちという命の答えに彼は行き着いた。
その人は・・・旅立った。アイギスが見ているその場で。私は彼の最後を見れなかった。
けれども、彼はいつも私達を守ってくれている。
あの時に戻って、この目で確かめた。宇宙にたたずむその人は、本当に優しい目をしていた。
だから・・・・彼の代わりに私は一生懸命生きていくと、そう心に誓った。
絆が人を結びつけ、ペルソナがなくとも人は強く生きていくことができる。
新しい未来を、彼が残してくれた輝かしい未来を、自分の足で歩んでいくと決めた。

・・・それなのに、どうしてまた、私は呼ばれたの?

私はまた、ペルソナに目覚めた。ワイルドの力と共に。そしてこの街に呼ばれたの。

* * *

電車に乗っている途中で、おかしな夢を見た。長い鼻を持つ老人と、不思議な雰囲気を漂わせている金の髪を持った女性。
目覚めればすでに八十稲羽に着いていて・・・。「八十稲羽~、八十稲羽~。」という声を聞きながら、燕は汽車から降りた。
都会とは違い、電気で動く電車ではない、レトロな汽車。たった2両で、しかも乗客は誰一人としていなかった。それはこの八十稲羽が終点だからだろうか?とりあえず、お世話になる堂島とは16時に駅で合流となっている。
燕は自分の荷物を担いで駅の外へと出てみた。

「おーい、こっちだ。」

低めの声で一人の男性が燕を呼んでいる。声のするほうへと向かい、彼と簡単に自己紹介をする燕。
堂島遼太郎。燕の母親の弟で、刑事をしているらしい。ずっと都会のほうで暮らしていたので堂島とは会ったことがなかった。「オムツ変えたこともあるんだぞ。」などといわれても、覚えてない。
苦笑していると、彼の足元にいた少女が堂島に背を押されて顔を出した。いとこで「菜々子」というらしい。まだ小学1年生。とても小さい女の子だった。「よろしく。」と挨拶すると、真っ赤になりながら俯いてしまった。

それからは堂島の少し古びた車で家に向かう。途中でガソリンを入れ、家に着いたのはもう夕飯の時刻だった。
車からおり、家の前に立つ。今までマンション暮らしだったから、一軒屋には少し憧れていた。
両親が海外から帰ってくるまでの一年間、ここが自分の家になるのだと思っていたとき、犬の鳴く声と菜々子の嬉しそうな声が耳に入ってきた。

「ワンワンワンッ!!」
「あっ、コロちゃんっ!!」

振り返れば灰色と白の混じった犬を菜々子が笑顔で触っていた。犬も気持ちよさそうに目を細めている。とても頭のよさそうな犬だった。菜々子に撫でられたあとは、何故かこちらをじっと見つめる。様子を伺っているように思え、燕は少し焦った。
・・・・とその時。

「あら、お帰りナナちゃん。今日は遼おじちゃんとどこか行ってたの?」

鈴を転がすような声がして、隣の家から少女が出てきた。
サラサラの黒髪が風になびく。菜々子は嬉しそうにその少女に答える。

「うんっ!!!おに・・・いちゃん、を迎えに行ってたの。」

一瞬だけ菜々子はちらりと燕を見た。少女も燕を見つめる。目が合ったので燕はぺこりと一回だけ頭を下げた。相手も一回だけ、頭を下げる。そのまま言った。

「あ、ああ。遼おじちゃんの言ってた人ってあなたね?わざわざ都会からお疲れ様。私は遼おじちゃんの隣に住んでる御陵美和です。表札は"湯木"ってなってるけど、気にしないでね?親戚のおうちにご厄介になってるだけだから。ふふ、そう考えたらあなたと同じかしら。」

口元に手をやって、美和は笑った。燕も自己紹介する。

「大空燕です。えと、よろしくお願いします。」
「うん、よろしく。それで、そこにいる犬が私の飼ってる・・・ペット?うーん、ちょっと違うか。仲間、かな?虎狼丸(コロマル)っていうのよ。近所のみんなは"コロちゃん"って言って可愛がってくれるの。」
「ワンっ!!」

元気よくコロマルが鳴いた。お近づきの印に燕はコロマルの頭を撫でてやる。そうするとコロマルは、菜々子のときと同じように目を細めた。

「燕!菜々子!そろそろ晩メシにするぞ?早く家に入れ。」
「あら、遼おじちゃんが呼んでるわ。それじゃナナちゃん、またね。大空君もまた。」

軽く手を振って凪はコロマルと一緒に湯木と書かれた家に入っていく。それを見送った菜々子は、「今行くー!」とだけ返事して燕を促す。菜々子に続いて、燕も家に入った。

* * *

ガラガラと玄関のドアを閉め、美和はそのままもたれかかった。コロマルはマットで自分の足を拭き、家の中に入る。ちぎれるくらいしっぽを振って、美和を振り返った。小さく「ワフっ」と声を上げる。すると美和は笑ってコロマルを見た。

「間違いないよ、彼がワイルドの力を持ったペルソナ使い・・・。コロマルも感じたでしょ、ペルソナの共鳴を。だけどまだ、彼は覚醒していない。」
「ワウウウウ。」

美和にはコロマルが『そうだね。』と言ってるように思えた。だけど本当は何を言っているのか全く分からない。こんな時にアイギスがいてくれたら・・・と思ったが、アイギスは凪と同じで命の答えにたどり着いた存在。彼女は機械でありながら、人間の心を持っている。昔はコロマルの言葉が分かったが、今ではもう、何を言っているのか彼女でさえ分からない。彼が・・・かつてのリーダーが、仲間たちが、機械のアイギスを人間に変えた。アイギスは痛みを感じる人間になったのだ。

「・・・ふぅ、とりあえずご飯にしようかコロマル。おじさんとおばさんは今週は帰ってこないよ。仕事、忙しいんだって。」

美和は靴を脱いで家へと上がった。居間には真新しい八十神高校の制服と鞄が置かれている。制服を脱ぎっぱなしで置いていたことを思い出し、美和は苦笑した。
美和は2月の末、ここに転校してきたばかり。それまでは都会の港区にある『月光館学園』に通っていた。彼女だって、1年の終わりの時にそのまま2年生に進級するものだと思っていた。
しかし・・・。

『かつてのお客人。あなたはまた、ペルソナを使うこととなる。ワイルドの力を所持し、これからやってくるお客人の支えになることがあなたの務め。さぁ、稲羽市へ。八十稲羽へ行きなさい。新しく仲間となる方々が、あなたを待っていらっしゃる・・・。』

あの日突然、青い部屋へと美和は呼ばれた。ペルソナはもう、使うことがないと思っていた。
突然のお告げ。突然目の前に現れたベルベットルーム。そして・・・稲羽市は美和の叔父夫婦がいるところ。
疑問だった。何故、2年経ってからまたペルソナを使うこととなるのか。稲羽市で、何が起こるというのか?
2年前のような事件が起こるというのなら、とめなければならない。彼が守ってくれた未来だから・・・。失いたくない。

「ワン!!!」というコロマルの声で美和はハッと現実の世界に戻ってきた。制服を握ったまま、今までのことを振り返っていた。
ワイルドの力を所持する彼を見つけた。これから、何が起ころうというのだろうか?美和は検討がつかず、右手を見つめる。
現れたペルソナのカード。
そのカードに描かれているペルソナは、かつてリーダーと、ワイルドの力に目覚めたアイギスが使っていたオルフェウスだった・・・。


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