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25=10

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では主、行ってくる。




修行に出る奴らを、初期刀として何度も見送った。
一体彼らは、どんな思いを抱え修行に出て、戻ってきたのだろう?怖くはないのか?自分の過去と向き合うこと・・・。
美和はそんな彼らを、静かに見送り静かに迎え入れた。
陸奥守、蜂須賀、加州、歌仙・・・。
馴染みの打刀たちが旅に出て、全員が戻ってきた瞬間、彼らの顔つきは違っていた。
過去を受け入れ、未来と今の主である美和を見つめていた目だった。
みんな、俺よりも一歩前に進んでいた。
初期刀だった俺よりも、一歩前に・・・。

強くなりたいと思った。

これまで写しだと卑屈で生きてきた。
山姥切の写しとして生まれてきたことに対して、罪悪感があった。
それをかき消すように、自分は国広の第1の傑作であると、言い聞かせてきた。まじないのように・・・。

これで、いいのか?

心の中に宿るもう一人の自分が、問いかける。
他の奴らは前に進む。強くなるために。美和を信じて。
兄弟である堀川国広だって。きっといずれは、山伏国広だって・・・。

自室の真ん中であぐらをかいて目を閉じていた俺は、静かに目を開けた。
誰にも劣らないくらい、神経が研ぎ澄まされている。今なら・・・。
夕闇が迫る時間帯、俺は美和の部屋へ向かった。

美和。あんたの初期刀として、一つ頼みたいことがある。」

俺を見つめた彼女のその目は、もうすでに俺の願いを見透かしているような目だった。



では主、行ってくる。



そう短く告げて、俺はこの本丸をあとにした。

カテゴリー:  山姥切国広

かざぐるま




とある本丸で、若い審神者が病気で亡くなった。
審神者は残された刀剣男士たちが、次の審神者が決まるまで今の姿が保てるようにと、庭の大木に己の力を残していた。
刀剣男士たちは、その力を少しずつ使いながら姿を保つ。
審神者がいなくなったこの本丸は、喪に入った。皆、ふとした瞬間審神者を思い出し、涙を浮かべたり、鼻をすすったり。
新しい審神者なんていらない・・・とさえ思っていた。
そんな日が1ヶ月ほど続いた頃・・・。
突然三日月宗近を筆頭とする三条派の者たちが、小さな赤子を連れて帰って来た。
赤子はどこか懐かしい匂いがした。ついこの間まで、ここにいたような人物と雰囲気がそっくりで、その人物の名前を口にしてしまいそうになる。

「この子は一体どうしたんだ?」

長曽祢虎鉄が三日月宗近に尋ねると、彼はにっこり笑って答えた。

「我らの新しい主よ」

宗近の言葉に、他の三条の面々も頷いた。
小さな赤子はケタケタと笑いながら、長曽祢に向かって手を伸ばしていた。まるで、再会を喜んでいるように・・・。
その日から、小さな赤子は前の主を失ったこの本丸を引き継ぐことになった。

赤子は刀剣男士たちに愛された。
あまり泣くこともなく、人見知りすることもなく、みんなに懐いた。特に、近侍である三日月にはひときわよく懐いた。前の主とどこか似ている・・・と、みんなそう思っていたが、口には出さなかった。
寒かった冬が過ぎ、春が来て、初夏の頃を迎えた。
宗近は赤子を抱きながら、加州が持って来たかざぐるまに息を吹きかけ回す。大きなかざぐるまが回るたび、赤子は喜んで声を上げた。そして三日月は小さく歌ってやる。

「・・・なぁ、美和よ。俺を愛してくれたこと、覚えてはおらんだろうなぁ。しかしだ。お前はまた、こうして再び生まれてきてくれた。美和が俺に会いたい一心で、再び生まれ変わってくれたと、そう思ってもよいか?」

優しく話しかけると、赤子は声を出さず、ただにこっと笑った。その表情が前の審神者そのもので、宗近はキュッと胸が苦しくなる。
ただただ前の審神者に会いたい一心で、宗近は彼女の魂を探した。再び人間に生まれ変わってくることを信じて。探して探して、やっと彼女の魂を見つけた。

「俺はずっとずっと美和そばにいてやろう。今度はこの手を離さんぞ。だから早く、大きくなっておくれ。」

いつの間にか眠ってしまった赤子を抱いたままゆっくり揺らし、宗近はまた小さく歌いだす。
緩やかな風に吹かれ、かざぐるまが回り始める。宗近と赤子の関係も、ゆっくりと回り始めていた。


カテゴリー:  三日月宗近

IC#67







式典を終えたルルーシュは焦っていた。皇帝が戻ってきたということは、人質に取られているナナリーが危ないということ。ナナリーを助けるため、ルルーシュは頭の中で様々な策を練っていた。
コーネリアを交渉の道具に使うか。もしくはロロとジェレミアを使うか・・・。どちらにせよ、皇帝には効かない。いっそのこと、ゼロがルルーシュだと明かしてしまうか?と考えたが、そうすれば黒の騎士団が先に崩壊するであろう。
様々な策を考えるが、どれもこれも使い物にはならなかった。

(くそっ。万が一ナナリーを助け出したとしても、ブリタニアにはリリィもいる!皇帝はリリィを溺愛していた。手を出すはずがない・・・とまでは言い切れない・・・っ!)

ルルーシュの思考は堂々巡りだった。だから後ろから聞こえてくるC.C.の声に無性に腹が立ち、つい大声を上げて、彼女の持っていた皿をはじき飛ばしてしまった。
皿は粉々に割れ、C.C.の指を切った。流れ出る血を見て我に返ったルルーシュは、慌てて彼女の手を掴んだ。
C.C.は少し微笑んでから言う。「中から痛いときよりも、全然平気」だと。むしろ寒い時は痛いほうが助かると言う。彼女の過去を思い出したルルーシュは体を震わせた。
C.C.はいつも一人で、いつも傷だらけであった。愛されたいと願ったC.C.。願いが叶い、そしてやがて騙されていたことに気づく。彼女はまた傷ついた・・・。

「お前は中から痛い時、どうしていたんだ?」
「友達・・・がいればよかったんですけど・・・。親とか兄弟とかと違って、友達ならあとからでも作れるし・・・。でも私にはそんな味方もいなくって・・・」
「味方・・・・?」
「あの、そう聞いたんですけど、違うんですか?」
「・・・いや、違わない。それが友達だ・・・。」

ルルーシュの中で一人の人物の顔が浮かび上がる。昔からの友達、枢木スザク・・・。
C.C.の怪我の処置をしたあと、彼はスザクへ電話をかける。相手はすぐに出た。懐かしい声は、少し厳しさを帯びていた。

「ニュース、知ってるだろ?トウキョウ疎開も危ないかな?」

不意に投げかけた質問に、スザクが冷たい声で返してくる。

「それは君が決めることだろう?ルルーシュ。君は・・・ゼロか?」

逆にスザクの質問に、ルルーシュの時間が一瞬止まる。ここで嘘をついても仕方なかった。ナナリーのため、ルルーシュは正直に答えた。

「そうだ。俺がゼロだっ!」
「・・・・・っ!ブリタニアの敵が、僕に何の用だ?」

一気にスザクの態度が激変する。それは仕方ない。ゼロはユーフェミアを殺した。たくさんの人間も殺した。でも、そうしてでも守りたいものがあったのだ。

「頼む。ナナリーを助けてくれ。皇帝は俺を押さえるために、ナナリーを人質にしている。だから俺は、隠れて動くしかなかった。それに万が一ナナリーを助けたとしても、今度はリリィが人質になるかもしれないんだ。頼むスザク。お前以外に頼める人間がいないんだ・・・」
「僕が君の頼みを引き受けると思うのか!?ルルーシュ、お前は身勝手だな・・・」
「分かっている!でももう頼めるのがお前しかいないんだっ・・・!頼むっ!ナナリーを・・・守ってください。」

ルルーシュの消えてしまいそうな声に、スザクは小さくため息をつく。電話口から「分かった」と聞こえてきた瞬間、ルルーシュは崩れ落ちてしまいそうになった。「ただし、条件がある」とスザクは言葉を続ける。

「ナナリーを守るというのなら、ナナリーがいるこのエリア11に君が一人で来るべきだ。場所は枢木神社。二人っきりで話をしよう。そして・・・リリィのことだが、やはり君はリリィを思い出したんだな。リリィのことは君が心配しなくても、僕自身の意思で彼女を守る。この身をかけて、一生!僕はリリィにそう誓ったんだ。もうリリィの隣に、君の居場所なんてない。だからエリア11に来て、リリィには会おうなんて思わないでくれ。」

きっぱりとそう告げるスザクの声を聞きながら、ルルーシュは動揺した。

(スザクの言っている意味は、どういう意味だ?全ては枢木神社で分かることなのか?)

二人の運命が再び絡み合おうとしていた。




ぼくは自分がだれかを憎んでいることを知っている。
(ローベルト・ヴァルザー)



カテゴリー:  IC

IC#66






超合集国憲章批准式典会場では、批准式のための準備が行われている。
ディートハルトが映像のチェックをし、天子は内容を読み上げる練習をする。藤堂は化粧をされ、唸っていた。
ブリタニア国でもこの式典に対し、軍が動く。武器や兵士がキュウシュウ・チュウゴク・ホクリクを中心に次々配備されていく。
批准式は各国に放送されていた。もちろん、ブリタニア本国のみならず、エリア7でも・・・。
この中継をモルガン、ユーサー、そして新しくエリア7総督に就任したリリーナも見ていた。

『最後に、合集国憲章第17章、合集国憲章に批准した国家は固有の軍事力を永久に放棄する。その上で、各合衆国の完全保証についてはどの国家にも属さない戦闘集団、黒の騎士団と契約します!』
『契約、受諾した。我ら黒の騎士団に資金や人員を提供してもらう。その代わり、我らは全ての合衆国の盾となり、外的を制する剣となろう!』

つまり黒の騎士団は、合衆国の軍隊となった・・・ということだろう。トップの皇も、おそらくは黒の騎士団と深い結びつきがあると思ってもよい。
リリーナは黙って中継を見続けた。そして、皇からある提案がなされる。
日本の領土がブリタニア軍によって不当に占拠されている。そのため黒の騎士団の派遣を要請し、日本を取り戻したいのだと・・・。これに対し賛成多数で第1號は決議され、黒の騎士団は日本を解放するための戦いを始めることとなった。

「またあの国で、戦闘が始まるのかのぅ・・・」

ユーサーが悲しそうな声を上げた。日本とブリタニア。その二つの国は、なかなか交わることができない。今まではブリタニアが力で押さえ込んでいた分、今になって反発する者も多いだろう。

「歴史は繰り返す・・・か。それに我らエリア7も、ブリタニア軍として参加せねばなるまいとはな・・・。しかし、あの子たちは大丈夫だろうか?再びまた、あの地で戦うことになるかもしれないのであろう?」

二人の言葉を聞きながら、キュッと口を結ぶリリーナ。
本国で指揮をとっているのはシュナイゼル。彼はおそらく、この戦いを力でねじ伏せるはずだ。そのために、彼はきっとエリア7の技術力を求めてくるのではないかと彼女は予想している。

「大丈夫よ。アイツとの交渉の余地は必ずあるはずだわ・・・」

彼女の小さな呟きに、ユーサーもモルガンも意図が分からず、二人で顔を見合わせるだけだった。
一方その頃エリア11でも、この中継をシュナイゼルやナイト・オブ・ラウンズ、エンジェルズ・オブ・ロードであるリリィやライも見ていた。
テレビからはゼロの高らかな声が流れてくる。

「いいでしょう。超合集国決議第1號、進軍目標は・・・・日本!!!」

ゼロの細い指がはるか遠くにある日本の方向を指さす。その瞬間、二人は目を閉じて下を向いた。
この批准式が行われると聞いたときから、だいたいの予想はついていた。
この小さな国がまた戦場に変わるのかと、リリィは胸を痛める。でももう、8年前とは違っているのだ。たとえ歴史が繰り返したとしても、同じ過ちは繰り返さない。
リリィはスッと顔を上げた。ちらりと椅子に座るシュナイゼルを盗み見たあと、彼女は心に誓った。

(戦争になったとしても、フレイヤだけは使わせないわ、お兄様。)

テレビからはそのまま、人々の割れんばかりの歓声が聞こえてくる。その中に突然、聞き慣れた渋い声が交じった。

『ゼロよ!!!』

画面が突然切り替わり、ブリタニア皇帝が映し出された。彼の自身に満ちた顔を見た瞬間、ルルーシュとライは瞳を揺らす。あの空間に置き去りにしてきた。死んだと思っていた。だが実際は生きていたのだ。

「こっ・・・皇帝陛下が・・・」
「お戻りになられたか。」

この映像を見て、第2皇子であるシュナイゼルが小さく吐き捨て、リリィは驚いて叫ぶ。二人の声が重なった。

「偽りの劇場を気取られますか、父上・・」
「おっ・・・お父様っ!!!」

涙ぐんだリリィの声が聞こえた時、ライはちくりと胸が痛む。同時にドキドキと心臓が激しく鳴り、まともに彼女の顔が見れなかった。そして、皇帝の顔さえも・・・。皇帝を置き去りにした行為。それは皇帝を敵に回してしまったという証拠である。さらに、父親が大好きな彼女を裏切ってしまった行為でもあるため、後ろめたさを感じていた。

『ゼロよ。それでワシを出し抜いたつもりか。だが、それも悪くない。EUはすでに死に絶え、つまりキサマが作ったこざかしい憲章が、世界をブリタニアとそうでないものに色分けする。単純それ故に明解。この戦いを制した側がこの世界を手に入れるということ。いいだろう、ゼロ。挑んでくるがよい。全てを得るか、全てを失うか。世界とは元来、そういうものだ。オールハイル・ブリターーーーニア!!!』
『日本、万歳っ!日本、万歳!!』

力強く叫ぶ黒の騎士団たちは、本気で日本を取り戻しにくるはずだ。
ライは雄叫びを上げる彼らの声を聞きながら、無言で部屋を出て行く。その姿にリリィは少し不安を覚えた。
彼が浮かべていた表情はどこか余裕のないような感じであったから。リリィは彼の背中を追って廊下へ出て、声をかけた。

「あ・・・・ライ?」

彼は名前を呼ばれても何も答えず、決して立ち止まらなかった。広い背中が次第に遠ざかって行く。少しだけしょげながら部屋へ戻ってくると、スザクと視線が合う。

「ライ、どうしたの?」
「・・・さあ?分からないわ。でもなんだか余裕のない表情を浮かべていた気がする。」
「・・・ふぅーん。」

スザクは彼が出て行った入り口に視線を向ける。いつも余裕のありそうな表情を見せる彼なのに、珍しいことがあるものだ・・・と思う反面、スザクの勘が何かを告げているような気がしたのだった。



全世界がひとつの舞台、そして人間はみな役者にほかならぬ。
(シェイクスピア)


カテゴリー:  IC

★更新履歴★

18.08.17
刀剣乱舞 短編1つUP!(山姥切国広)
 




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